
韓国政府は8日の閣議で、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領(64)の罷免に伴う大統領選の投開票日を6月3日とすることを決定した。
尹氏は昨年12月3日に非常戒厳を宣布し、約6時間後に国会の要求に従って解除した。野党はこれを「内乱行為」に当たると非難。尹氏は同月14日、国会で弾劾訴追された。
弾劾の妥当性を審理していた韓国の憲法裁判所は今月4日、裁判官の全員一致で妥当と判断し、尹氏を罷免する決定を言い渡した。尹氏は直ちに失職し、60日以内に大統領選挙が実施されることになった。
大統領代行を務めている韓悳洙(ハン・ドクス)首相は8日、大統領選の投票日を発表。国が負った「傷を早期に癒し」、「上昇し前進」していく必要があると語った。韓氏は次期大統領が選出されるまで、大統領の職務を続ける。
尹氏による非常戒厳の宣布は、韓国を政情不安に陥れ、社会の深い分裂を浮き彫りにした。
「この4カ月間、国民に混乱と不安を引き起こし、大統領職の空席という残念な事態に直面することになったことを、心からお詫びする」と韓氏は述べた。
尹氏は非常戒厳の宣布を発表した際、北朝鮮の脅威や「反国家勢力」から韓国を守り、自由な憲法秩序を守るためだと説明した。しかし、非常戒厳を発動する本当の理由は、外部からの脅威ではなく、本人が政治的に追い詰められているからだということが、間もなくはっきりした。
尹氏は、非常戒厳の宣布が内乱罪に当たるとして、今年1月に刑事起訴された。この裁判は現在も続いている。尹氏は1月に身柄を拘束されたが、3月8日に釈放された。
与野党で相次ぎ出馬表明
一部の政治家はすでに、大統領選に出馬する意向を示している。
金文洙(キム・ムンス)雇用労働相は8日、選挙運動を開始するため辞任した。
過去3回の大統領選に出馬した、与党「国民の力」の安哲秀(アン・チョルス)議員も出馬を表明している。
しかし、現在の最有力候補は、最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表だ。先週実施されたギャラップ社の世論調査では、李氏の支持率は34%だった。
尹氏は、分断された国を残して大統領府を去ることとなった。非常戒厳は国民の大半の怒りを買い、数千人が街頭で尹氏を罷免するよう訴える事態となった。一方で、尹氏の支持者も大胆さと過激さを増した。
韓国は政治的危機から脱する一方で、新たな経済的課題にも直面している。アメリカのドナルド・トランプ大統領が、関税の大幅な引き上げを発表したためだ。
トランプ氏の相互関税では、韓国には25%の関税が課される。韓国当局は、トランプ政権との交渉を模索しているとしている。