
ジョナ・フィッシャー、BBC環境担当編集委員
昨年1年間の世界の電力のうち、4割以上が化石燃料を燃やさない方法で発電されていたとする報告書を、 世界的な気候・エネルギー分野のシンクタンク「エンバー(Ember)」が8日、公表した。
報告書によると、地球温暖化につながる二酸化炭素の排出量は昨年、過去最大だった。暑い天候が電力需要を押し上げ、化石燃料を燃やす発電所の利用が増えたとみられる。
太陽光発電は、過去3年間で発電量が倍増。最も急速に成長しているエネルギー源であり続けているという。
エンバーのマネージング・ディレクターのフィル・マクドナルド氏は、「太陽光発電が世界的なエネルギー転換の原動力になっている」と説明。
「ノイズがある中で、真のシグナルに注目することが重要だ。2024年は暑い天候によって化石燃料による発電量が増えたが、2025年も同様の増加が見られる可能性は極めて低い」としている。
欧州連合(EU)の「コペルニクス気候変動サービス」の報告書によると、今年3月は、記録が残る中で2番目に暑い3月だった。気温の高さは、記録更新レベルが続いている。
エンバーはここ数年、二酸化炭素の排出量が減少に転じると予測している。
だが、世界的な電力需要の増加により、現実はそうはなっていない。
太陽光革命
太陽光発電は、安価で設置が比較的簡単なことから、20年連続で最も急速に成長している電力源となっている。エンバーによると、ソーラーパネルによる発電量は2012年以降、3年ごとに倍増している。
太陽光発電の成長は中国が圧倒的で、世界の増加の半分以上を占めている。インドの太陽光発電量も、2023年から2024年にかけて倍増した。
太陽光発電は、急速に成長してはいるが、世界の電源構成(エネルギーミックス)に占める割合でみるとまだ比較的小さく、世界の供給量の7%弱となっている。これはインド全土に対する電力供給量と同じだ。
電源構成で風力は8%強、水力は14%となっており、クリーンエネルギー源としては水力が最大となっている。水力と原子力(9%)による発電は、風力や太陽光による発電より、成長がずっと遅い。
1940年代に戻る
エンバーの報告書によると、クリーンエネルギーが世界の発電量の4割を超えたのは1940年代以来。当時は需要がずっと小さく、水力発電の割合が高かった。
全体的には、世界の電力需要の増加ペースが、再生可能エネルギーの成長ペースを上回り続けている。
これは、クリーン電力の割合が40.9%まで上昇した一方で、温室効果ガスの排出量はまだ減少に転じていないことを示している。
報告書によると、2024年の世界の電力需要は4%増加した。
厳しい暑さでエアコンの使用が増えたことが一因だった。これにより、化石燃料による発電が1.4%増え、世界の二酸化炭素の排出量は過去最大の146億トンに増加した。化石燃料による発電では、主に石炭(34%)とガス(22%)を使っていた。
急成長するアジアの経済国(特にインドと中国)は過去5年間、急増する電力需要に応えるため、化石燃料の使用を拡大し続けている。
(英語記事 Clean energy's share of world's electricity reaches 40%, report says)