2025年4月22日(火)

BBC News

2025年4月9日

マレーシア・クアラルンプール市内のシンガポール大使館前で、「死刑を廃止せよ」などと書かれたプラカードを手に死刑制度に抗議する人々

人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルは8日、2024年に世界で記録された死刑の執行件数が2015年以来の高水準となったとする報告書を公表した。

アムネスティ・インターナショナルによると、昨年の世界の死刑執行件数は計1518件。内訳は、イラン、イラク、サウジアラビアの3カ国で計1380件、アメリカで25件などだった。

一方で、死刑を執行した国は合わせて15カ国と、2年連続で過去最少を記録した。

同団体のアグネス・カラマード事務局長は、死刑制度について「潮目が変わりつつある」とし、「世界が絞首台の影から解放されるのは時間の問題だ」と付け加えた。

今回公表された人数は、少なくとも1643人が死刑に処された2015年以来の高水準だが、実際にはこれより多い可能性が高い。

アムネスティ・インターナショナルによると、この人数には中国や北朝鮮、ヴェトナムで処刑された人は含まれていない。中国では毎年数千人の死刑が執行されていると考えられている。

中国とヴェトナムでは、死刑に関するデータは国家機密として扱われており、アムネスティ・インターナショナルがこれらの国の統計にアクセスすることはできない。

また、パレスチナ・ガザ地区やシリアについては、当局の規制や進行中の危機的状況などが障害となり、情報がわずかしか入手できないか、まったく得られなかった。

中東3カ国での増加が影響、麻薬犯罪への適用も

アムネスティの報告書「死刑判決と死刑執行」2024年版は、確認されている死刑執行の総数が増加した原因は、イラン、イラク、サウジアラビアにあると指摘している。

イラクでは昨年、少なくとも63件の死刑が執行された。これは、2023年(少なくとも16件)の約4倍だ。サウジアラビアでは172件(2023年)から少なくとも345件と、倍増した。

イランでの昨年の死刑執行は少なくとも972件と、2023年(少なくとも853件)から増加した。

報告書は、死刑の執行件数が急増した二つの主な要因として、「死刑をデモ参加者に対する武器として利用する国」と「麻薬関連の犯罪」を挙げている。

アムネスティ・インターナショナルの調査では、2024年の死刑執行の4割以上が、麻薬関連の犯罪に絡んだものだったと判明した。こうした犯罪への死刑の適用は人権法に反すると、同団体は指摘している。

一方で、ジンバブエでは2024年、通常の犯罪に対する死刑を廃止する法案が成立した。

同年9月には日本で、1966年6月に静岡県で一家4人が殺害された事件で強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さんに、再審公判で無罪が言い渡された

アメリカでは今年3月、手続きに重大な欠陥があったにもかかわらず死刑を宣告された黒人男性に恩赦が認められた。

国連総会では昨年、加盟国の3分の2以上が、死刑廃止を視野に執行の停止を求める決議案に賛成票を投じた。

(英語記事 Global executions at highest level since 2015, report says

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c77nnrlp1rgo


新着記事

»もっと見る