
今年2月の総選挙で勝利したドイツの中道右派「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」は9日、現与党で中道左派の社会民主党(SPD)と連立合意に達した。これにより、CDU党首のフリードリヒ・メルツ氏(69)が次期首相となる見通しとなった。
メルツ氏は、この合意がドイツ国民と欧州連合(EU)に「強力で明確なメッセージ」を送り、「行動力のある強力な政府」を提供することを示したと述べた。
ドイツはすでに景気後退(リセッション)に陥っており、ドナルド・トランプ米大統領の貿易関税による経済的混乱に見舞われている。
メルツ氏は、「ドナルド・トランプ氏への主要なメッセージは、ドイツが再び軌道に乗ったということだ」と述べ、防衛義務を果たすとともに、経済競争力を回復させると約束した。
2月の総選挙でCDUが勝利して以来、メルツ氏とその連立パートナーは、ドイツの政治的停滞を終わらせるよう強い圧力を受けている。
CDUは最近行われた世論調査の支持率で、極右の反移民政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に追い抜かれたばかりだ。
連立合意を発表する際、メルツ氏は移民、経済、防衛に重点を置いてドイツを改革し、安定させると宣言した。
また、「ヨーロッパはドイツを頼りにできる」と述べ、「我が国を再び最前線に立たせる強力な計画」を約束した。
次期首相の選出は5月5日の議会で行われる。連立によって過半数議席を確保したメルツ氏が選ばれる見通し。
連立を組む各党はすでに先月、ドイツの厳格な債務規則に対する大幅な改革を推進している。
これにより、新政府は軍事および国の老朽化したインフラに大規模な投資が可能となった。
9日の合意にはほかにも、2月の選挙で有権者の大きな懸念事項の一つとなった、「通常ではない移民を管理し、ほぼ終わらせる」ための一連の措置や、国境管理が盛り込まれている。
AfDは、この計画が十分ではないと不満を述べ、メルツ氏がSPDに屈したと非難した。
ドイツの軍事委員が最近、議会に提出した報告書では、弾薬や兵士の人数から老朽化した兵舎に至るまで、軍全体にわたる深刻な不足が強調された。
連立合意のもう一つの重要な部分は、防衛費の増加と軍の強化だ。
徴兵制は導入されないが、メルツ氏は連立が「スウェーデン型」の志願兵制度を目指していると述べた。
「十分な志願者が集まれば、ドイツ連邦軍の拡充も達成できると期待している」と、メルツ氏述べた。
メルツ氏はまた、ウクライナへの「包括的な支援」を約束した。
メルツ氏自身はこれまで閣僚を務めたことがなく、新政府もほぼ全員が新しい顔ぶれとなる見通し。
しかし、現政府のボリス・ピストリウス国防相(SPD)は、引き続きその職にとどまると見込まれている。
ドイツで右派と左派の大政党が組むいわゆる大連立(GroKo)は、第2次世界大戦以降で5回目となるが、各政党は、これまでの政府とは異なると強調している。
しかし、ドイツが経済不況に陥っている中、ポピュリスト左派の有力政治家、ザラ・ワーゲンクネヒト氏は、CDUとSPDがドイツの経済危機や貿易戦争に対する解決策を提供していないと述べた。
ワーゲンクネヒト氏は、ドイツの不況が3年目、4年目に入ろうとしていると述べ、これを「メルツ不況」と呼んだ。
メルツ氏は、連立合意がそれぞれの政党によって承認され、5月初めには仕事に取り掛かることができると自信を示した。
一方、調査会社イプソスが9日発表した最新の世論調査の支持率では、メルツ氏率いる保守派は24%で2位で、AfDが1ポイント上回って首位だった。AfDのアリス・ヴァイデル共同党首は、この調査結果を前例のないものと称賛し、「政治的変化が訪れる」と約束した。
(英語記事 Germany is back, says Merz, after sealing government deal)