
アメリカのドナルド・トランプ政権の「相互関税」を受け、中国財務省は9日、アメリカからの輸入品に対する関税を84%に引き上げる報復措置を発表した。どのような考えが背景にあるのか。激しさを増す関税のかけ合いに、中国国内ではどんな反応が出ているのか。
トランプ政権は9日、中国からの輸入品に対する関税を104%に引き上げた。
これに対抗して中国は同日、アメリカからの輸入品に対する関税を34%から84%に引き上げると発表。10日に発動するとした。
その後トランプ氏は、中国の「敬意が欠けている」として、対中国の関税を125%へさらに引き上げると表明。「直ちに発動する」とした。
米中で関税引き上げの応酬となるなか、中国側はどのようなことを考えているのか。
中国外務省の林剣報道官は9日、米政府の最新の関税引き上げが発表される前の記者会見で、「覇権主義的でいじめのような行いには断固として反対し、決して容認しない」と強調した。
国営英字紙チャイナ・デイリーは論説記事で、「グローバルな結束によって、貿易での横暴に打ち勝つことができる」と強調。中国は日本、韓国、その他のアジア経済国と協力しているとした。
また、別の記事では欧州連合(EU)に対し、「自由貿易と多国間主義を守る」ための協力を呼びかけた。
国内の輸出業者がアメリカの新たな関税に苦しむなか、他の国々に対し、結束して「トランプ関税」に対抗するよう求めた格好だ。
「貿易戦争」に中国企業は
中国では国内消費が依然低迷しており、輸出が成長の主な原動力となっている。
トランプ政権の関税は広範囲に及び、ほとんどの国が影響を受けるため、中国企業はサプライチェーンをどう調整するかの対応に追われている。
電子商取引業者向けに外国との物流を扱う中国企業の経営者は、「すでにカミソリのように薄い利益率」が新たな関税でさらに小さくなると、匿名を条件にコメント。「関税の引き上げは、私たちのような運送業者だけでなく、工場や企業、小売業者のコストも高くする。みんな、稼ぎが減ることになる」と述べた。
コンサルタント会社ユーラシア・グループのダン・ワン氏は、関税が35%を超えれば、中国企業のアメリカや東南アジアへの輸出による利益はすべて消えてしまうと説明。「新型コロナウイルスの世界的な流行以降、輸出が経済成長の20~50%に寄与している。そのため、成長は大幅に低下するだろう」と付け加えた。
中国国営新華社通信のシニア・エディターを務める中国人ブロガー、リウ・ホン氏によると、中国政府はハリウッド映画の輸入を禁止し、合成オピオイド(麻薬性鎮痛剤)の一種、フェンタニルのアメリカ流入問題をめぐる協力を停止することを検討していると報じられている。
しかし、マクドナルドやウェンディーズといった米ファストフード・チェーンに使い捨て容器を販売する「フーリン」のような企業にとっては、そうした対応はほとんど慰めにもならない。フーリンは、関税の上乗せは自社のビジネスに「大きな影響」を与えるだろうとしている。2023年と、2024年上半期の同社の収益の3分の2近くは、アメリカ側との取引によるものだったという。
天津市を拠点とする運送会社は、関税の負担を分担するため、アメリカ側の一部のクライアントと交渉するつもりだという。「ケースバイケースだが、全体としては影響はかなり大きい」。
中国とカンボジア間の海上輸送を中心に事業を展開する運送会社のマネージャーは、すでに輸送量が減少していると述べた。
トランプ氏が関税措置を発表して以来、カンボジアでのいくつかの建設プロジェクトが停止していると、この男性は述べた。
「関税が10%や20%なら、企業はサプライチェーンを最適化し、マージンを削減し、負担を分担することで、コストを吸収できるかもしれない。貿易はまだ、続けられるかもしれない。(しかし、100%を超える関税は)もはや、トレードオフで解決できるものではない」
「これは完全に『デカップリング』(経済分断)だ。貿易はおおむね停滞するだろう」
(英語記事 China retaliates against Trump's 'trade tyranny' with 84% tariffs)