
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は10日、少なくとも155人の中国人がロシア側に立ってウクライナで戦っていると述べた。
ゼレンスキー氏は8日、中国人戦闘員2人を拘束したと発表。ウクライナが中国に対し、ロシアに人員を供給していると公に非難したのはこれが初めてだった。
ゼレンスキー氏は10日の記者会見で、政府が収集した情報に基づき、「さらに多くの」中国人が紛争に関与していると主張した。
一方、中国政府の報道官は、「関係者に対し、中国の役割を正しく冷静に理解し、無責任な発言をしないように助言する」と述べた。
ロシアはゼレンスキー氏の発言に対してコメントしていない。
ロシアのインターファクス通信によると、ゼレンスキー氏は10日の会見で、「(中国の)姓とパスポートデータを持つ155人の中国人が、ウクライナ領内でウクライナ人と戦っている」と述べた。
また、ロシアがソーシャルメディアを通じて中国人を募集しており、「中国政府はこれを知っている」と付け加えた。
ゼレンスキー氏によると、問題の中国人新兵らはモスクワで訓練を受けた後、ウクライナの戦場に送られ、移民関連の書類と報酬を受け取っているという。
ゼレンスキー氏は併せて、拘束した中国人兵士2人に対する尋問場面と思われる動画をソーシャルメディアで公開した。
動画では、兵士らが中国語で自分の経歴や捕らえられた経緯を説明している。
そのうちの一人は「初めての任務で、初めての戦闘だった。それ以前は銃を撃ったことさえなかった」と述べ、ロシア兵と共に捕らえられたと付け加えた。
もう一人は、混乱の中で離散するまで、中国人兵士2人を含むグループにいたと述べた。また、「みんな散り散りになり、生きているかどうか分からない」と話した。
この兵士も、最終的にロシア兵と共に降伏したと述べた。
中国外務省の林剣報道官は、「中国はウクライナ危機の創造者でも当事者でもない。我々は危機の平和的解決の断固たる支持者で、積極的な推進者だ」と述べた。
また、中国兵がロシア側で戦っているのは個人的な立場であることを示唆する、以前のコメントを繰り返した。
林報道官は、中国は「常に国民に対して武力紛争地域から離れるよう要求しており、いかなる形でも武力紛争に関与しないよう求めている。特に、いかなる側の軍事作戦にも参加しないよう言っている」と述べた。
中国政府はこれまで、多くの中国人がロシア側に立って戦っているという主張について、「事実に基づく根拠がない」と否定している。
かねて中国の中立的立場を疑問視
ゼレンスキー氏はXへの投稿で、「ウクライナは、中国国民が侵略戦争の中でウクライナ領内での戦闘に関与することは、戦争拡大への意図的な一歩だとみている。また、ロシアに戦闘を長引かせる必要があることを示している」と述べた。
その上でゼレンスキー氏は、アメリカと世界各国に対応を求めている。
米政府は、中国人がロシア側で戦っているという報告を「憂慮すべきもの」と述べた。
ウクライナはかねて、中国の中立的立場を疑問視してきた。ゼレンスキー氏は以前、中国政府が「ロシアの武器の一部を供給している」と主張し、中国に「一貫した」立場を維持するよう求めた。
アメリカは、中国がロシアの弾薬や装甲車両、ミサイルの製造を支援していると非難している。中国が半導体やドローン(無人機)といった軍民両用技術のロシアへの輸出を許可していることにも、注目が集まっている。
中国とロシアは政治的および経済的に緊密な関係にあるが、中国はこの戦争に関しては中立的な立場を示そうとしており、ロシアに軍事装備を供給していることを繰り返し否定している。
中国は、殺傷武器は売却しておらず、「法律と規制に従い、軍民両用品の輸出を慎重に扱っている」として、ロシアとの貿易を擁護している。
ロシアは2022年にウクライナへの全面侵攻を開始。ロシア軍は現在、ウクライナ領土のうち主に東部の約20%を支配している。
ウクライナは1月、ロシアのクルスク州で負傷した北朝鮮兵2人を捕らえたと発表した。
(英語記事 Zelensky claims 155 Chinese fighting for Russia in Ukraine)