
デンマーク領グリーンランドにあるアメリカ軍基地のトップが、J・D・ヴァンス米副大統領によるデンマーク批判の発言から距離を置く内容の電子メールを同僚などに送ったとして、解任された。
アメリカ宇宙軍の宇宙作戦司令部は10日、スザンナ・マイヤーズ大佐を、「その指導力に対する信頼の喪失」を理由に、ピトゥフィク宇宙基地の指揮官職から解任したと発表した。
ヴァンス副大統領は3月28日にグリーンランドを訪問した際、デンマークがグリーンランド住民のために「良い仕事をしていない」と発言。デンマークが安全保障に十分な投資をしていないと批判した。
その後、マイヤーズ大佐は3月31日、電子メールで同基地のスタッフに対し、「自分が現在の政治状況を理解しているとは思わないが、28日にヴァンス副大統領が話題にしたアメリカ政府の懸念は、ピトゥフィク宇宙基地の意見を反映していない」と述べたとされる。
この電子メールは、軍事ニュースサイト「Military.com」が公開した。Military.comによると、自分たちが伝えたメールの内容は正確だと、米宇宙軍が認めたという。
米国防総省のショーン・パーネル報道官は、これが解任理由だと認めるかのように、ソーシャルメディアへの投稿にMilitary.comの記事をリンクし、「指揮系統を損なう行為や、(ドナルド・)トランプ大統領の方針を覆そうとする行為は、国防総省では容認されない」と書いた。
米宇宙軍は10日に発表した声明でマイヤーズ大佐の解任を発表し、後任にはショーン・リー大佐が就任すると述べた。
声明には、「指揮官は、特に職務遂行において非党派性を維持することに関して、最高基準の行動規範を順守することが求められる」と付け加えられている。
マイヤーズ大佐は昨年7月に、北極圏にあるピトゥフィク基地の指揮を引き継いだ。リー大佐は以前、アラスカ州のクリア宇宙軍基地で飛行隊の指揮官を務めていた。
ヴァンス副大統領はデンマーク訪問中に、安全保障上の理由からグリーンランドを併合したいというトランプ大統領の意向を再び強調した。
グリーンランドとデンマークは団結して反発
アメリカ代表団の訪問以来、グリーンランドとデンマークは団結して、アメリカによる併合に反対している。
デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は4月に入ってからグリーンランドを公式訪問し、グリーンランドのイェンス=フレデリック・ニールセン新自治政府首相と、前任者のムテ・エーエデ氏と並んで立った。
フレデリクセン首相は記者団に対し、「他国を併合することはできない」とトランプ大統領に直接伝えたと述べた。
フレデリクセン氏はまた、デンマークが北極圏での軍事的存在を強化していると述べ、地域防衛におけるアメリカとのより緊密な協力を提案した。
アメリカは長い間、戦略的に重要な地域としてグリーンランドに対し、安全保障面から関心を持ち続けてきた。第2次世界大戦中にナチス・ドイツがデンマークを占領した後、アメリカはグリーンランドに軍事基地を設置した。
デンマーク王立防衛大学のマルク・ヤコブセン准教授は以前、BBCの取材に対し、「もしロシアがアメリカに向けてミサイルを発射した場合、核兵器の最短ルートは北極とグリーンランドを経由することになる」と指摘した。
「そのため、ピトゥフィク宇宙基地はアメリカ防衛において、非常に重要な役割を果たしている」
グリーンランドは世界最大の島で、約300年にわたりデンマークの統治下にある。
世論調査によると、住民の大部分はデンマークからの独立を支持しているが、アメリカの一部になることは望んでいない。
グリーンランドは2009年以降、独立の是非を問う住民投票を実施する権利を持っているが、近年では一部の政党が、その実施を強く求めるようになっている。
(英語記事 US fires Greenland military base chief for 'undermining' Vance)