
中米のエルサルバドルのナジブ・アルマンド・ブケレ・オルテス大統領は14日、米ホワイトハウスでドナルド・トランプ大統領と会談した。ブケレ大統領は、エルサルバドルにアメリカ政府が「手違い」で強制送還し、巨大刑務所に収容されたメリーランド州の男性について、帰国させる予定はないと発言した。
アメリカの連邦最高裁判所は10日、トランプ政権に対し、メリーランド州に家族と共に住み、2019年に裁判所から送還保護を受けているキルマー・アブレゴ=ガルシア氏(29)の帰国を「容易にするよう」命じた。
米政府は、アブレゴ=ガルシア氏が3月15日に「行政上の手違い」により送還されたと認めた一方で、同氏がギャング団「MS-13」のメンバーだと主張している。同氏の弁護士は、これを否定している。
トランプ政権は、アブレゴ=ガルシア氏を帰国させることができないとも主張している。パム・ボンディ司法長官は、「帰国させるかどうかはエルサルバドル次第だ」と述べている。
トランプ大統領とブケレ大統領の関係は、トランプ氏が1月にホワイトハウスに復帰して以来、良好なものとなっている。ブケレ氏がアメリカから移送される人々の受け入れに同意し、トランプ氏の大規模な国外追放の公約を支援しているためだ。
ブケレ氏の訪問に先立ち、トランプ氏は、犯罪に厳しい強硬派指導者としての地位を築いているブケレ氏を称賛した。
会談でも、アメリカがギャングのメンバーとする人々をエルサルバドルに移送できるようにする新たなパートナーシップを強調し、ブケレ氏が「非常に悪い人々、(中略)我々の国に入るべきではなかった人々」を収監する素晴らしい仕事をしていると述べた。
米連邦最高裁は当局に対し、アブレゴ=ガルシア氏を帰国させるための措置について毎日報告するよう命じている。
一方、当局側の弁護士らは13日、アブレゴ=ガルシア氏の帰国を容易にするように命じた最高裁判決を受け、この問題は外交政策の問題であり、裁判所の管轄外であるとの見解を示した。
トランプ氏は先週、最高裁が「誰かを戻せ」と言ったら、それを実行すると記者団に語っていた。
アブレゴ=ガルシア氏は、トランプ政権がエルサルバドルの悪名高い巨大刑務所、テロ監禁センター(CECOT)に移送した238人のベネズエラ人と23人のサルバドル人の一人。
トランプ氏のチームはこれまでに、ギャングのメンバーとされる200人以上の移民をエルサルバドルに送った。その多くは、1798年制定の「敵性外国人法」を利用して国外追放した。
アメリカ政府はこうした人々が、「MS-13」や「トレン・デ・アラグア」といったギャングの一員だと見なしている。トランプ氏はそれらの団体を「外国テロ組織」に指定している。
国外追放に法的な異議が出るなか、マルコ・ルビオ米国務長官は13日、さらに10人の「犯罪者」を移送したと発表した。CECOTに送られたかどうかは明言しなかった。
トランプ政権は以前、移送された人々が施設に到着する画像を公開している。3月には、クリスティー・ノーム米国土安全保障長官が施設を訪問した。
CECOTでの人権侵害の疑いについて懸念があるかと問われたトランプ氏は、記者団に「あるとは思わない」と述べている。
(英語記事 El Salvador's leader will not return man deported from the US in error)