
ニック・ソープ・ブダペスト特派員、トム・ベネット記者
ハンガリー議会は14日、性的少数者(LGBTQ+)や二重国籍者の権利を制限する改憲案を可決した。
これにより、LGBTQ+の公の場での集会を禁止できるようになる。政府は今回の改定について、子どもの身体的・道徳的発達を保護するのが目的だとしている。
議会前には数百人が集まり、この動きに抗議した。人権擁護を訴える人々は、「ハンガリーが自由を認めない統治へと移行する上で鍵となる瞬間」だとしている。
改憲案は与党のフィデス・ハンガリー市民連盟が支持し、賛成140、反対21で可決された。同党を率いるオルバン・ヴィクトル首相は先月、自分を批判する人々に対する「復活祭の大掃除」が近いと発言していた。
この改憲によって政府は、自国の安全保障や主権を脅かしているとみなす二重国籍者について、市民権を一時的に停止することもできる。
フィデス・ハンガリー市民連盟はこの動きを、「偽のNGO、買収された政治家、自称独立メディア」に資金を提供する人々を標的にしたものだと示唆している。そのため、オルバン氏がたびたび批判するハンガリー系アメリカ人の慈善家ジョージ・ソロス氏を狙うつもりだと推測されている。
ハンガリーでは先月、LGBTQ+の誇りを掲げる「プライド」デモを、子どもに悪影響があるとして禁止する法案を、議会が可決している。
オルバン氏は当時、この立法を称賛。「『ウォーク』(woke、社会問題への認識が高いこと)のイデオロギーが子どもの安全を脅かすことは認めない」と述べていた。
こうした動きに対し、野党・モーメントゥム運動のダヴィド・ベド議員は、「プライドだけではない。反政権側が組織するあらゆる集会を対象にしている」とBBCの取材で主張。
「これは政権側の1年にわたる活動における最初の一歩でしかない。今後も民主主義や法治主義に反するような法律が議会で制定されるだろう」と付け加えた。
一方、政府のゾルタン・コヴァクス報道官は、今回の改憲について、「特にプライド・パレードのようなイベントで子どもたちの幸福を脅かすイデオロギー的な影響に対する憲法上の安全装置」だと政府は考えていると、ソーシャルメディア「X」に書いた。
国内ではは、キリスト教保守派の路線に沿って国のアイデンティティを再構築しようとする動きだと受け止める人たちもいる。
ハンガリーでは、オルバン氏の与党が2010年から政権を担っている。来年、議会選挙が予定されており、世論調査では中道右派の新党・ティサ(尊重と自由)が全国的にリードしている。
ティサは、欧州連合(EU)との建設的な関係を望んでいる。かつてフィデス・ハンガリー市民連盟の所属議員だったペテル・マジャル氏が昨年2月、国政運営がお粗末だとして同党を離れ、ティサを立党すると、急速に人気を集めた。
政府は、マジャル氏にプライド支持を表明させ、保守的な支持者を同氏から引き離そうとしている。これまでのところ同氏は、政府の期待する動きを見せていない。
(英語記事 Hungary's parliament votes to limit rights of dual nationals and LGBTQ+ people)