
中国の習近平国家主席は14日、ヴェトナムを訪れ、最高指導者のトー・ラム共産党書記長と会談した。中国国営の新華社通信によると、習氏は「一方的ないじめに共に反対」し、世界自由貿易体制を維持するよう呼びかけた。
習氏は東南アジアを歴訪中で、マレーシアとカンボジアも訪れる。以前から計画されていた外交だが、米中間の貿易戦争の激化を受け、重要性が高まっている。
米ドナルド・トランプ政権は、今月立て続けに打ち出した関税政策で、中国の輸入品のほとんどに最大145%の関税をかけた。それを受けて中国は、アメリカからの輸入品に125%の関税をかけて対抗している。
ヴェトナムはアメリカから最大46%の関税をかけられることになっていたが、トランプ政権は先週、各国に対する関税引き上げの上乗せ分の90日間の停止を発表した。
新華社通信によると、習氏はラム氏との会談で、「私たちは戦略的決意を強化し、(中略)世界自由貿体制と産業、サプライチェーンの安定を守らなければならない」と呼びかけた。
トランプ氏は14日、大統領執務室での記者団とのやりとりで、この会談に言及。中国とベトナムを「非難する」わけではないとしながらも、両国はアメリカに危害を加えることを考えていると主張した。
そして、「すてきな会談だ。どうやってアメリカ合衆国をねじ伏せるかを検討するような会談だ」と述べた。
アメリカの元通商交渉官のスティーヴン・オルソン氏は、習氏の発言を「非常に抜け目のない戦術的な動き」と批評。「トランプ氏が貿易制度を破壊しようと決意を固めるなか、習氏は中国をルールに基づく貿易の擁護者として位置づけ、その一方でアメリカを、無謀なならず者国家に見せようとしている」と述べた。
「トランプ関税」をめぐっては、米当局が11日、スマートフォン、コンピューター、その他の電子機器の一部を、中国からの輸入品に対する125%の関税の対象外とする通知を出したとされた。
しかし、トランプ氏はその後、それらの輸入品は課税を除外されないと、ソーシャルメディアで表明。通知に関する報道は虚偽だとした。そして、「別の関税『バケツ』に移しているだけだ」とした。
習氏にとって「絶好の機会」
習氏の今回のヴェトナム訪問について、オーストラリアのシンクタンク「ロウイー国際政策研究所」の東南アジアプログラム・ディレクター、スザンナ・パットン氏は、ヴェトナムが「中国と結託してアメリカに対抗しているとの印象をうまく管理することに」神経を使うだろうと分析。「アメリカは、脇に置くにはあまりに重要なパートナーだからだ」と述べた。
そして、「東南アジア経済にとっては、多くの点で、中国は経済的パートナーであると同時に、経済的競争相手でもある」と付け加えた。
習氏は15日にマレーシアに移動し、国王やアンワル・イブラヒム首相と会談する。マレーシアでは、モバイルデータサービス会社のUモバイルが、中国企業の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)のインフラ技術を使い、同国で2番目となる第5世代移動通信システム(5G)を展開すると発表している。
前出のパットン氏は、習氏が訪問先で、アメリカについては「信頼の置けない、保護主義的なパートナー」という印象を、中国については「対照的に、頼りになるパートナー」という印象を、植え付けようとする可能性が高いと説明。
「中国にとって今は、そうした見方を広める絶好の機会だ。今回のヴェトナム、カンボジア、マレーシア訪問は、そうみられるだろう」と述べた。
(英語記事 China's Xi urges Vietnam to oppose 'bullying' as Trump mulls more tariffs)