
ポール・カービー欧州デジタル編集長
ロシア西部サンクトペテルブルク在住の美容師が15日、ロシア軍に関する偽ニュースを広めた罪で有罪とされ、禁錮5年2カ月の刑を言い渡された。
アンナ・アレクサンドロワ氏(47)は、ソーシャルメディアに8件の反戦メッセージを投稿したとして起訴された。同氏は罪状を否認し、隣人との土地をめぐる争いが事件につながったと主張した。
アレクサンドロワ氏の隣人はBBCに対し、同氏がウクライナでの戦争の写真を娘に送ったため、検察に訴え出たと語った。
ロシアでは2022年2月のウクライナへの全面侵攻から数週間後、軍隊を貶めることや軍に関する偽情報を意図的に広めることが犯罪となった。また、ロシア大統領府(クレムリン)は反対意見への弾圧を強化。数百人の反対派や批判者を収容し、独立系メディアを沈黙させている。
なかには同僚や知人に告発されて刑務所に送られるケースもある。これは、ソヴィエト連邦時代にパヴリク・モロゾフという少年が父親を告発し、称賛されたエピソードを彷彿(ほうふつ)とさせる行動だ。
2人の子供を持つアレクサンドロワ氏は2023年11月、ロシアのソーシャルメディア「フコンタクテ」で、匿名の二つのアカウントから8件の投稿を共有したとして、初めて逮捕された。
昨年9月、BBCのスティーブ・ローゼンバーグ・ロシア編集長が裁判所を訪れた際、アレクサンドロワ氏の弁護士は、この事件が土地をめぐる一般的な争いから始まったと語った。
「一方が警察に訴えたが、何も進展しなかった。それが、『軍に関するフェイクニュース』の容疑が現れた途端に変わった」と弁護士のアナスタシア・ピリペンコ氏は述べた。
サンクトペテルブルク南部のコルピキュリャ村では当時、開発業者による森林伐採が議論を呼んでいた。アレクサンドロワ氏は当初、隣人と同じく伐採に反対する立場だったという。
しかし、同氏とこの隣人の関係は最終的に激しい争いに発展し、悪化した。
アレクサンドロワ氏は、戦争に関する画像を隣人に送ったことを否定したが、裁判所は同氏に実刑判決を言い渡した。また、今後3年間のオンライン投稿を禁じた。
ジャーナリスト4人にも5年半の実刑判決
15日には別の事件で、モスクワで4人のジャーナリストが「過激派組織」に従事した罪で、それぞれ禁錮5年半の刑が言い渡された。
アントニナ・ファヴォルスカヤ氏、コスタンティン・ガボフ氏、セルゲイ・カレリン氏、アルチョム・クリガー氏は、ジャーナリストとしての職務を果たしていただけだと主張したが、裁判所は、野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が設立した反汚職団体がこの4人の制作物を使用したと認定した。
ナワリヌイ氏は昨年2月16日、収容されていたロシア北極圏の刑務所で急死した。ファヴォルスカヤ氏が前日の15日に、法廷へのビデオリンクを撮影した映像が、ナワリヌイ氏の生前最後の映像となった。
ファヴォルスカヤ氏は独立系メディア「ソタビジョン」で働いていた。2024年3月、ナワリヌイ氏が埋葬された霊園での撮影中に逮捕された。
判決めぐり憲法裁に訴え
ロシアの「フェイクニュース」法をめぐってはこの日、2022年7月に同法で初めて完全な刑期を言い渡されたモスクワ市議会議員の弁護士が、この判決についてロシアの憲法裁判所に訴えを起こした。
アレクセイ・ゴリノフ氏は、市議会でロシアの侵攻を批判した様子が撮影された後、まず7年の刑を言い渡された。ゴリノフ氏は、ウクライナで子供たちが死んでいるときに、子供の絵画コンテストを開催するという考えに反対していた。
昨年には、刑務所の病院で戦争を批判したとして、刑期がさらに3年延長された。
弁護士のカテリーナ・テルツヒナ氏とオルガ・ポドプレロヴァ氏は声明で、2022年につくられた「フェイクニュース」法は、偽情報と戦うことを目的としているが、憲法上の正当な目的を果たしていないと述べた。
「この法律は公共の秩序を守るという名目の下で、反戦の見解、当局への批判、公式の見解に反する情報の拡散を含む、真実の情報を罰するために使用されている」と、弁護士らは主張した。
(英語記事 Russian hairdresser jailed over neighbour claim of spreading fake news)