2025年5月16日(金)

BBC News

2025年4月22日

米ニューヨーク証券取引所(NYSE)のトレーダー

アメリカの株式市場は21日、米主要500社の株価指数のS&P500種が前週末の終値より約2.4%下落するなど、急落した。ドナルド・トランプ米大統領が、利下げに慎重な米連邦準備制度理事会(FRB)議長に対する批判を強めたことで、市場の動揺を招いた。影響は外国為替市場などにも及んだ。

トランプ大統領はソーシャルメディアで、アメリカの中央銀行にあたるFRBのジェローム・パウエル議長について、経済情勢への対応が常に「遅すぎる」とし、景気浮揚のために「先手を打って」金利を引き下げるよう要求した。

「ひどい負け犬である『対応が遅すぎる男』が今すぐに金利を下げない限り、経済は減速する」と、トランプ氏は書いた。

今月にトランプ氏が発動した各国への「相互関税」は株価の急落を誘い、景気後退への懸念を高めている。こうした中でのパウエル議長の米経済への対応を、トランプ氏は批判した。

トランプ氏は、大統領1期目にFRB議長に指名したパウエル氏との衝突を激化させており、市場の混乱に拍車をかけている。

21日はS&P500種が下がったほか、ダウ工業株30種平均も前週末比2.5%安となった。ハイテク株比率が高いナスダックも2.5%以上値を下げた。

ドルや米国債にも影響

ドルや米国債は通常、市場の混乱時でも比較的安全な資産とされているが、最近の市場の乱高下の影響は回避できていない。

ユーロを含む、主要国の通貨に対する価値を指数化した「ドル指数」は21日、2022年以来の最低水準にまで落ち込んだ。

投資家がより高い利回りを求めたため、米国債の金利は22日、上昇を続けた。

アジア太平洋地域では22日午後、ほとんどの主要株価指数で低調な動きがみられた。

日本の日経平均株価(225種)と、オーストラリアの代表的な株価指数ASX200は、いずれも前営業日比で0.1%前後の下落。香港のハンセン指数は約0.2%上昇した。

投資家がいわゆる「安全資産」を求める中、金の価格は過去最高値を更新した。

金のスポット価格は21日、史上初めて1オンス3500ドルを突破した。

パウエル議長の解任を「検討」

トランプ氏のパウエル議長批判は、大統領1期目にまでさかのぼる。トランプ氏は当時、議長の解任も検討したと報じられた。昨年の大統領選で再選を果たして以来、借入コストを引き下げるようパウエル氏に要求している。

パウエル議長は、トランプ氏が導入した「相互関税」が物価を押し上げ、経済を減速させる可能性が高いと警告。これを受け、トランプ氏は議長への批判を強めた。

17日には、「パウエルをすぐにでも解任すべきだ」とソーシャルメディアに投稿した。

FRBの中銀としての独立性を考慮すれば、こうした動きは物議を醸すものといえる。また、法的にも疑問が残る。

パウエル氏は昨年、大統領には自分を解任する法的権限はないと、記者団に述べていた。

しかし、トランプ氏の経済顧問の1人は、米株式市場の取引が終了した18日に、当局者がパウエル氏の解任を検討していることを認めた。

「アメリカがくしゃみをすると世界が風邪をひく」

トランプ氏のパウエル氏に対する新たな批判は、国際通貨基金(IMF)と世界銀行の春季会合に向けて、主要な経済政策担当者がワシントンに終結する中で飛び出した。

カリフォルニア大学デイヴィス校の経済学教授で、かつてIMFで働いていたクリストファー・マイスナー氏は、BBCのラジオ番組「トゥデイ」で、1970年代以前はFRBに対して「大きな」政治的圧力が断続的にかかっていたと語った。

「しかし、過去30~40年の経験から、中央銀行の独立性が金融の安定と低インフレの鍵であることを、我々は学んだ。今回の動きは、大きな後退であり、警戒する必要がある」

IMFは近日中に各国の最新の成長予測を発表する予定。これには「顕著な下方修正」が含まれると、IMFは先週示唆している。

マイスナー氏は、「かつては『アメリカがくしゃみをすると世界が風邪をひく』と言われていた。それが今後も続くのか注目だ」と述べた。

「今後数カ月間で米経済はかなり減速すると、誰もが予想している。(中略)それが世界にとっていいことだとは言えない」

(英語記事 US stocks and dollar plunge as Trump attacks Fed chair Powell

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c5ygxz0lv4lo


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