
国際通貨基金(IMF)は22日、今年のアメリカの経済成長見通しを下方修正した。貿易関税による不確実性を受けたもので、下げ幅は先進国の中で最大だった。
アメリカの今年の成長率予測は1.8%と、今年1月の前回予想(2.7%)から大きく下がった。
IMFは、高率関税の急拡大と不確実性が、世界的な成長の「著しい減速」を引き起こすとみている。
また、今年の世界経済の成長率を2.8%と予測し、前回の3.3%から引き下げた。2026年には3.0%の成長が見込まれている。
IMFのピエール=オリヴィエ・グランシャ経済顧問兼調査局長は、世界経済は「過去4年間の深刻なショックによる大きな傷が、依然として残っている」状態で、それが「現在、再び厳しい試練にさらされている」と述べた。
ドナルド・トランプ氏はアメリカ大統領就任後、輸入品に課される関税について矢継ぎ早に政策を発表してきた。
現在、アメリカは中国製品に最大145%の関税を課しており、中国も報復措置として、アメリカ製品に最大125%の関税をかけている。
また、アメリカは他国からの輸入品に対して「相互関税」を導入。10%の基本税率を導入した。数十カ国に対してはさらに大きな税率を発表しているが、90日間の猶予期間を設けている。
トランプ大統領は、関税がアメリカ製品の購入を促進し、税収を増加させ、国内への大規模な投資をもたらすと主張している。
しかしIMFは、現代のサプライチェーンが非常に密接に結びついているため、関税が世界貿易に与える潜在的な悪影響を強調している。
グランシャ氏は、貿易政策の不確実性が成長予測の引き下げの「主要な要因」だと説明。「不確実性が増す中で、多くの企業は当初の反応としてまず投資を控え、購入を削減することになる」と述べた。
アメリカの成長予想引き下げについては、政策の不確実性、貿易摩擦、予想を下回る消費支出の減速によるものだと述べた。また、関税が2026年の成長にも影響を与えるとみている。
IMFによると、アメリカが今年、景気後退(リセッション)入りする確率は40%と、昨年10月の25%から上昇している。
国際金融協会(IIF)も22日、今年後半にアメリカで「浅い景気後退」が予想され、2025年第3四半期と第4四半期にマイナス成長が見込まれると発表している。
中国については、IMFは今年の成長を4%と予想。前回の4.6%から引き下げた。
ユーロ圏も1%から0.8%に引き下げられた。ただし、2026年には、ドイツの政府支出増加により1.2%の成長が見込まれている。
イギリスの成長率も1.1%に下げられたが、ドイツやフランス、イタリアを上回った。
しかし、インフレ率ではイギリスが先進国のなかで最も高く、今年は3.1%に達する見込み。これは主にエネルギーや水道料金の高騰によるものだという。
日本は1.1%から0.6%に引き下げられた。
スペインは、2025年の成長見通しが2.3%から2.5%に引き上げられた唯一の先進国となった。これは洪水後の復興活動が一因となっている。
カナダは、関税の不確実性と「地政学的緊張」を反映し、2%から1.4%に引き下げられた。
カナダと同様にアメリカとの貿易摩擦が生じているメキシコは、最大の下方修正の対象となり、今年は1.4%から0.3%に縮小すると見込まれている。
今回の予測は、4月4日時点の状況に基づくIMFの「基準予測」と呼ばれるもの。4日は、トランプ氏が広範な関税を発表した2日後にあたる。
経済成長に影響を与える多くの要因を考慮すると、予測が完璧ということはなく、IMFも最新の予想が特に困難だったと認めている。
グランシャ氏は、基準予測がIMFが想定する主要シナリオではあるものの、「将来の貿易政策に関する予測不可能性と、関税が異なる国々に与える多様な影響を反映して、多くの可能な道筋が存在する」と述べた。
IMFはまた、アメリカが多くの関税を一時的に停止し、中国に対しては大幅に引き上げた後の状況も検討した。
グランシャ氏によると、関税が一時停止された後も、見通しは基準予測から「実質的に」変わらなかった。これは、アメリカと中国の全体的な実効関税率は依然として高く、政策に対する不確実性が続いているからだという。
(英語記事 Global growth forecast slashed by IMF over tariff impact)