
ジョアン・ダ・シルヴァ、BBC経済担当記者
アメリカのドナルド・トランプ大統領は22日、連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長を繰り返し批判したものの、「解任するつもりはない」と述べた。パウエル氏をめぐってはトランプ氏が解任を検討しているとの情報が流れ、金融市場に影響が及んでいた。
トランプ氏はこの日、大統領執務室で記者団を前にして、パウエル氏の「解任」について言及した。解任するつもりはないとしたうえで、利下げに関して「もう少し積極的」になってほしいと述べた。
トランプ氏は先週来、パウエル氏に対する批判を強めており、「ひどい負け犬」とも呼んでいた。この発言は、株、債券、米ドルの大幅下落を引き起こした。ただ、金融市場はその後、回復傾向にある。
一方、国家経済会議のケヴィン・ハセット委員長は18日、トランプ氏がパウエル氏を解任するのが可能かどうか検討していると述べていた。
トランプ氏にFRB議長を解任する権限があるのかは不明。歴代の大統領で、FRB議長を解任しようとした人はいない。
パウエル氏は、トランプ大統領1期目の2017年に、中央銀行に当たるFRBのトップ(任期4年)に、トランプ氏によって指名された。さらに2021年末、ジョー・バイデン大統領(当時)から2期目の指名を受けた。
FRBは昨年末に金利を1ポイント引き下げて以来、利下げをしていない。トランプ氏はこれを強く批判している。
中国との貿易戦争は楽観と
トランプ氏は記者団に対し、中国との貿易関係の改善について、楽観しているとも述べた。
トランプ氏は、中国との交渉には「とても親しみやすい」姿勢で臨むと表明。取引が成立すれば関税は下がるとしたが、「ゼロ」にはならないと述べた。
報道によると、これに先立ってスコット・ベッセント財務長官は、中国との貿易戦争の現状は持続不能で、対立緩和を期待していると述べた。
トランプ政権関係者の一連の発言は、投資家らから歓迎されたもよう。トランプ氏の22日の発言の後、日経平均が前日比1.89%増で23日の取引を終えたのをはじめ、アジア各地の主要株式指数は上昇した。アメリカでは22日、S&P500種が2.51%、ナスダック総合指数も2.71%、それぞれ上昇した。
投資家らは、関税がすでにインフレを押し上げているとみられる状況で、パウエル氏に金利引き下げの圧力がかかることで、物価上昇につながるのではないかと懸念していた。
世界最大の経済大国間の貿易摩擦や、アメリカによる世界各国への関税措置は、世界経済に関する不安を引き起こし、金融市場ではここ数週間、混乱状態が続いている。
こうしたなか、国際通貨基金(IMF)は22日、今年のアメリカの経済成長見通しを下方修正した。貿易関税による不確実性を受けたもので、下げ幅は先進国の中で最大だった。
関税の急激な引き上げと不確実性は、世界的な成長の「大幅な減速」につながるとIMFは予測している。