
アメリカのドナルド・トランプ大統領は23日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、同国での戦争の和平交渉を阻害していると批判した。ゼレンスキー氏が、ロシアのクリミア支配を認めないと述べたのを受けたものとみられる。
トランプ氏は、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、戦争終結の合意は「非常に近い」と主張。一方で、アメリカが示した条件をゼレンスキー氏が拒んでいるとし、戦争を「長引かせるだけだ」とした。
これに先立ち、アメリカのJ・D・ヴァンス副大統領は、「領土線を(中略)現在とほぼ同じ位置で凍結する」という和平合意案を提示。ウクライナとロシアが「ともに現在保有している領土の一部を放棄しなければならない」ことを意味するものだと説明した。具体的な譲歩の内容は明らかにしなかった。
ゼレンスキー氏はこれまで一貫して、2014年にロシアが不法に併合したクリミア半島の領有権を放棄する案を拒否している。22日にも、「このことについて話すことは何もない。我々の憲法に反している」と記者団に述べた。
ローマ教皇の葬儀で会談の可能性も
トランプ氏は23日、ホワイトハウスでの記者団とのやりとりで、クリミアに対するロシアの主権を認めることを検討しているのかと聞かれると、戦争が終わってほしいだけだと返した。そして、「ひいきはない。ひいきしたくない。合意を成立させたい」と述べた。
トランプ氏はまた、ウクライナよりもロシアのほうが取引しやすいと発言。「ロシアは準備ができていると思う」、「ゼレンスキー氏と取引する方が簡単だと思っていたが、今のところはそちらのほうが難しい」と述べた。
そのうえで、26日にあるキリスト教カトリック教会の教皇フランシスコの葬儀で、ゼレンスキー氏と会談する可能性があると示唆した。
トランプ氏は昨年の大統領選挙で、ウクライナとロシアの戦争を1日で終わらせることができると繰り返し述べていた。だが、就任から100日近くたっても停戦は実現していない。
ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は、「大統領はいら立っている」、「大統領はがまんの限界に近づいている」と記者団に話した。
ヴァンス氏は23日、ロシアとウクライナが合意に歩み寄らなければ、アメリカは仲介役から「手を引く」と警告した。先週もマルコ・ルビオ米国務長官が、同様の発言をしている。
ロンドンでは23日、ウクライナでの停戦の実現に向け、イギリス、フランス、ドイツ、ウクライナ、アメリカの外相級の会合が予定されていた。しかし、アメリカのルビオ氏とスティーヴ・ウィトコフ中東担当特使が欠席を決めたため、高官級に格下げして開かれた。
イギリスの外交関係者らは、ルビオ氏とウィトコフ氏の欠席の理由は定かではないと述べている。
こうしたなか、ウクライナでは23日、ロシアによる攻撃が強まった。ウクライナ当局は、ロシアのミサイルとドローン(無人機)による攻撃がいくつかの州であったとした。
首都キーウでもドローンの残骸によって火災が発生したと、ヴィタリー・クリチコ市長が明らかにした。3歳女児が病院に運ばれたほか、住宅のがれきの下敷きになった人も何人かいたという。
中南部マルハネツィでは、通勤者らが乗ったバスがドローンで攻撃され、9人が死亡、数十人が負傷した。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、先週のイースター(復活祭)の週末での一時停戦を呼びかけた。しかし、イギリスのジョン・ヒーリー国防相は22日の議会で、ロシアが攻撃の手を緩めた証拠をイギリス軍は発見していないと報告した。
(英語記事 Trump criticises Zelensky as Ukraine refuses Russian control of Crimea)