2025年5月23日(金)

BBC News

2025年4月24日

パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長は、ガザ地区のイスラム組織ハマスが「イスラエルにガザ地区で犯罪を犯す口実を与えている」と非難した

パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長は23日、ガザ地区のイスラム組織ハマスに対し、イスラエルとの戦争を終わらせるために、今なお拘束している人質を解放し、武装解除し、ガザの支配権を自治政府に引き渡すよう要求した。また、ハマスを「犬の子」と呼んで非難した。

アッバス議長は、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区で行われた会議で、ハマスがイスラエルにガザへの攻撃を続ける「口実」を与えたと指摘。「人質を解放して終わりにしろ」と述べた。

この発言は、戦争が始まってからの1年半でアッバス議長がハマスに向けた非難の中で、最も強いものとなった。

一方、ハマスの幹部は、アッバス議長の「自国民の重要な一派に対する(中略)侮辱的な言葉遣い」を非難した。

ハマスは先週、イスラエルから出されていた新たな停戦提案を拒否した。この提案は、6週間の停戦と引き換えに、ハマスに残りの人質59人のうち10人の解放と武装解除を求めるものだった。

ハマスは、戦争の終結とイスラエルの完全撤退と引き換えに、すべての人質を引き渡すとあらためて表明したが、武器を放棄することは拒否した。

こうした状況を受け、アッバス議長は23日、ラマラで開催されたパレスチナ中央評議会の会議で、ハマスに対して激しい非難を浴びせた。

「ハマスは犯罪的な占領者(イスラエル)にガザ地区で犯罪を犯す口実を与えている。その最も顕著な例が人質の拘束だ」

「犬の子たちは、拘束している者を解放して終わりにしろ。向こう(イスラエル)の口実を封じ、我々を救え」

議長はまた、ハマスに対し、ガザにおける責任と、保有する武器をパレスチナ自治政府に「引き渡し」、政治政党に変わるべきだと述べた。

AFP通信は、ハマスの政治部門のバッサム・ナイーム氏がアッバス議長について、「自国民の重要かつ不可欠な部分を侮辱的な言葉で表現した」と批判したと伝えた。

「アッバス議長は繰り返し、怪しげに、占領の犯罪とその継続的な攻撃の責任を我々の民に押し付けている」と、ナイーム氏は付け加えた。

ハマスとパレスチナ自治政府は数十年にわたり激しく対立している。そのため、ヨルダン川西岸地区とガザ地区の両方で統一されたパレスチナ指導部は、これまで出現していない。

アッバス議長率いるパレスチナ自治政府は、2007年にハマスがガザを掌握して以来、ファタハ運動が支配するヨルダン川西岸地区の一部のみを統治している。

自治政府の指導部は、戦後のガザの運営を引き継ぐ準備ができていると繰り返し主張しているが、パレスチナ人からは、自治政府が十分に発言せず、効果的な行動を取っていないと批判されている。

アッバス議長は選挙なしで長年権力を維持しており、自治政府については良く言って無能、悪く言えば腐敗しているとの批判もある。ハマスは、自治政府が実質的にイスラエルと協力していると非難している。

イスラエルは以前に合意した停戦の第1段階が終了した3月2日以降、ガザ地区への人道援助と商業物資の搬入をすべて停止。同8日から攻撃を再開した。この圧力により、ハマスが残りの人質を解放することになるとした。

ハマスが運営するガザの保健省によると、イスラエルがガザで攻撃を再開して以来、少なくとも1928人が殺害されている。

ハマス運営の民間防衛隊によると、北部ガザ市のトゥッファ地区にある学校が22日夜、イスラエルの空爆を受け、10人が死亡した。この学校は避難民のためのシェルターとして使われていた。

夫や子供、孫と共にこの学校に住んでいた女性は、攻撃が発生したときに寝ていたと語った。

BBCアラビア語の番組でこの女性は、「四方八方から火に囲まれて目が覚めた。娘たちは手や足にやけどを負った。私たちと一緒にいた女性は病院に運ばれたが、容体はまだわからない」と語り、次のように続けた。

「数人の若者が生きたまま焼かれた」

「この戦争はもう2年近く続いている。私たちに与えられたものはただの死と苦しみだけだ」

民間防衛隊によると、同じ地域でさらに2軒の家が攻撃され、救助隊が4人の遺体を収容した。

イスラエル軍は23日、この学校の周辺で「ハマスとパレスチナ・イスラム聖戦の指揮統制センター内で活動するテロリスト集団」を攻撃したと発表した。

イスラエル軍は、ハマスが民間人を人間の盾として利用していると非難しているが、ハマスはこれを繰り返し否定している。

一方、ハマスの軍事部門は23日、イスラエル系ハンガリー人の人質オムリ・ミラン氏(48)が地下トンネルにいる様子を映した動画を公開した。

ミラン氏の家族は「ホロコースト記念日の前夜に『2度と繰り返さない』と言うとき、イスラエル市民がハマスのトンネルから助けを求めて叫んでいる。これはイスラエル国家の道徳的な失敗だ」との声明を発表した。

国連と英仏独、封鎖による援助停止を非難

国連は23日、52日間にわたるイスラエルの封鎖によって、ガザの住民210万人が「人間の生存に必要な基本的な必需品」を奪われていると警告した。ガザでは、栄養失調の増加と病院での薬の深刻な不足が報告されている。

イギリスとフランス、ドイツの外相もこの日、イスラエルに対し封鎖を終了するよう要求。現在の状況は「耐え難い」ものだと述べた。

共同声明で外相らは、「すべての民間人のニーズを満たすため、イスラエルに対し、ガザへの人道援助の迅速かつ妨げのない流れを直ちに再開するよう強く求める」と述べた。

また、イスラエルのイスラエル・カッツ国防相の「人道援助を政治化する最近の発言」と、「戦後もガザにとどまるというイスラエルの計画」を「容認できない」とし、イスラエルには国際法のもと、援助の流入を許可する義務があると付け加えた。

イスラエル外務省は、人道援助が政治化されているとの主張を否定した。

また、イスラエルは国際法を完全に順守して行動しており、直近の2カ月間の停戦中に2万5000台の援助トラックがガザに入ったため、「援助の不足はない」と強調した。

声明で外務省は、「イスラエルはハマスと戦っている。ハマスは人道援助を盗み、それを使って戦争機械を再建し、民間人の背後に隠れている」と述べた。

「ハマスがこの戦争を始め、戦争の継続とパレスチナ人およびイスラエル人の苦しみの責任を負っている。人質が解放され、ハマスが武器を放棄すれば、戦争は明日にでも終わる」

イスラエル軍は、2023年10月7日に発生した前例のない越境攻撃に対する報復として、ハマスを壊滅させるための作戦を開始した。ハマスの攻撃では約1200人が殺され、251人が人質に取られた。

ガザの保健省によると、イスラエルの攻撃でこれまでに5万1300人以上が殺害されている。

(英語記事 Abbas calls Hamas 'sons of dogs' and demands release of Gaza hostages

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/ckge803nzmxo


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