
インドとパキスタンが領有権を争うカシミール地方のインド支配地域で、観光客のグループが武装集団に銃撃されたことを受け、インドは23日、パキスタンとの国境の検問所を閉鎖するなどの措置を発表した。22日にあったこの銃撃による死者は、26人に上っている。
インドが発表した措置には、国境閉鎖のほか、画期的と評価されてきた水資源利用条約の停止、外交官の追放、ビザ(査証)を保持するパキスタン人の一部に対する48時間以内の出国命令――などがある。
インド政府は、今回の銃撃に激しく反発。現場となった地域についてはかねて、パキスタン政府が武装集団を支援していると主張しており、今回の銃撃についても、パキスタン政府に間接的な責任があるとしている。パキスタン側はこれを強く否定している。
インド治安当局は、「カシミール・レジスタンス」と呼ばれるグループが、今回の銃撃の背後にいるとみている。BBCはこれについて独自に検証できていない。
インドのナレンドラ・モディ首相は、「この凶悪な行為の背後にいる者たちは裁かれる」、「テロと闘う私たちの決意は揺るがず、いっそう強固になる」とXに投稿した。
一方、パキスタン当局は、銃撃との関わりを否定している。同国の外相は24日、最高軍事・治安機関である国家安全保障会議で、インドへの対応策が協議されると述べた。
パキスタン外務省は、「観光客の命が失われたことを憂慮している」との声明を出し、哀悼の意を表明した。
今回の事案は、ともに核保有国のインドとパキスタンの長年の緊張を、改めて強める危険性がある。
インドのラージナート・シン国防相は、インドの対応が銃撃犯に対するものにとどまらない可能性を示唆。「舞台裏でこのような行為を共謀した者たち」にも対処する考えを示した。
1947年にインドとパキスタンが分離してイギリスから独立して以降、カシミール地方は分割支配されてきた。どちらも互いにカシミール全域の領有権を主張しており、2度の戦争と限定的な紛争を繰り返してきた。インドとパキスタンは共に核保有国。
宗教は関係しているのか
今回の銃撃の目撃者らからは、非イスラム教徒が狙われたとの見方が出ている一方、無差別攻撃だったとの声も上がっている。
犠牲者のほとんどはヒンドゥー教徒の男性だった。ただ、地元のイスラム教徒の男性1人も含まれていた。現場一帯はイスラム教徒の住民が多い。
インド政府は、今回の襲撃が宗教を理由にしたものだったかについて、公式見解を示していない。
犠牲者には、新婚旅行中だったインド海軍の士官、一家の稼ぎ手である観光ガイド、妻子と休暇を過ごしていた実業家などがいた。
「インドのスイス」とも呼ばれる人気観光地パハルガムが銃撃現場になったことを懸念する声も上がっている
カシミール商工会議所のメンバーでホテルオーナーのアキブ・チャヤ氏は、「こうした出来事が地上の天国と呼ばれる場所で起きたという事実を、私たちは乗り越えられない」と、BBCの番組「ニューズアワー」で話した。
「観光客はここ30~40年、カシミールに来ているが、一度も被害にあったことはなかった」
(英語記事 India closes main border crossing with Pakistan after Kashmir attack/Rage and despair after brazen attack kills 26 in Kashmir)