
中国政府はこのほど、ドナルド・トランプ米大統領による関税への報復措置として、米企業が納入しようとした航空機を返却した。米航空機大手ボーイングのケリー・オートバーグ社長兼最高経営責任者(CEO)が明らかにした。
オートバーグCEOによると、米中貿易の緊張が高まるなか、すでに航空機2機が返却されており、さらに1機が返却される予定だという。
オートバーグ氏は米CNBCに対し、今年納入予定だった50機についても、中国の顧客が受け取りを拒否する意向を示していると語った。
アメリカは現在、中国からの輸入品に最大145%の関税を課している。中国はこれに対し、米製品に125%の税を課して報復した。
トランプ大統領は22日、ホワイトハウスの大統領執務室で、中国との貿易関係改善に楽観的だと述べ、課した関税の水準は「大幅に下がるがゼロにはならない」と語った。
しかしオートバーグ氏は、中国が「関税環境のために実際に航空機の受け取りを停止している」と述べた。
オートバーグ氏は、中国向けの50機のうちすでに製造された41機について、他国の航空会社からの需要が高いため、再販売する案を模索していると述べた。
まだ製造されていない9機についても、「顧客の意向を理解したうえで、必要に応じて他の顧客に割り当てることができる」と述べた。
また、「当社は受け取らない顧客のために航空機を製造し続けることはない」と付け加えた。
ボーイングはアメリカ最大の輸出企業であり、商業航空機の約70%を国外で販売している。
トランプ氏のチームと「毎日連携」
オートバーグ氏は23日午後に行った投資家向けの電話会議で、「米中間の貿易戦争に関して、閣僚や大統領(トランプ氏)と毎日やりとりしている」と述べた。
また、「合意に至ることを非常に期待している」と付け加えた。
アメリカのスコット・ベッセント財務長官はこの日、国際通貨基金(IMF)の会議で、両国の間で「大きな取引」の機会があると述べた。
両国間の今後の会談についてベッセント長官は、中国が製造業の輸出への依存を減らすことに「真剣」なら、合意の「絶好の機会」になるだろうとした。
オートバーグ氏はまた、投資家らに対し、ボーイングのサプライチェーンの他の部分も関税の影響を受けていると述べた。特に、10%の「相互関税」が実施されている日本とイタリアを例に挙げた。
ボーイングのブライアン・ウェスト最高財務責任者(CFO)はこの電話会議で、「自由貿易政策は我々にとって非常に重要だ」と述べ、ボーイングはサプライヤーと協力して継続性を確保し続けると語った。
ボーイングは昨年、事故や品質不正などの相次ぐ危機に加え、アメリカの従業員3万人によるストライキの影響もあり、生産が低迷していた。
しかし今年の第1四半期は、航空機の製造と納入を増やしたことで、損失が縮小したとしている。
同社は今年、「737MAX」の月間生産機数を38機に増やすことを目指している。