
韓国検察は24日、文在寅(ムン・ジェイン)元大統領が、大統領在任中の2018年から2020年の間に、娘の元夫の航空会社への採用に関連して賄賂を受け取ったとして、文氏を収賄罪で在宅起訴したと発表した。
発表によると、文氏の娘の元夫のソ氏(名字のみ発表)は、航空業界での経験がほとんどなかったものの、タイのイースター航空の役員に採用された。その見返りとして、同社の最高経営責任者(CEO)で韓国の元国会議員の李相稷(イ・サンジク)氏が、韓国政府が出資する公団の理事長に就任したとされる。
文氏は2017年から2022年まで韓国大統領を務めた。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記と会談し、平和条約の締結を目指したことで知られる。
韓国では大統領やその経験者が、刑事裁判で有罪となって収監されたり、暗殺されたり、自ら命を絶ったりするなど、スキャンダルによって政治キャリアが損なわれてきた歴史がある。そのリストに、文氏も加わることになる。
今月4日には、韓国の憲法裁判所が、文氏の後任の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する国会の弾劾訴追を裁判官の全員一致で妥当と判断し、尹氏を罷免する決定を言い渡した。尹氏は直ちに失職し、60日以内に大統領選挙が実施されることとなった。
尹氏は、非常戒厳の宣布が内乱罪に当たるとして、今年1月に起訴された。この裁判は現在も続いている。
検察によると、李相稷氏も収賄と背任の罪で訴追された。
李氏は2022年に、業務上横領などの罪で懲役6年の判決を言い渡された。
格安航空会社イースター航空の創業者である李氏は、2018年に韓国の中小ベンチャー企業振興公団(KOSME)の理事長に任命された。同年には、文氏の娘の元夫のソ氏が、イースター航空のタイ法人「タイ・イースター航空」の役員に就任している。
ソ氏は2018年から2020年にかけて、約2億1700万ウォン(約2170万円)の給与と住宅支援金を受け取っていた。検察はこれが、文氏への賄賂にあたるとした。
ロイター通信によると、検察はソ氏について、「航空業界における、関連した経験や資格がないにもかかわらず」、航空会社の役員に任命されたとしている。
また、ソ氏は「頻繁に、長期にわたって職を離れ(中略)その地位にふさわしいやり方で職務を遂行しなかった」と、検察は主張しているという。
この収賄疑惑をめぐる捜査の過程では、昨年9月、文氏の娘、文多恵(ムン・ダヘ)氏の自宅が家宅捜索を受けた。
文氏の起訴は、文政権幹部に対する一連の訴追手続きの中で行われた。今月初めには、文政権時代の国家安保室長と国防相が、活動家への情報漏えいの疑いで起訴された。
韓国の検察は、政治的に偏向しているとしばしば非難されている。新政権が発足すると、対立する立場の政治家が捜査を受けることがよくある。
現政権は、大統領代行を務める韓悳洙(ハン・ドクス)首相(国民の力)が率いている。
文氏の所属政党「共に民主党」は、文氏の起訴は「元大統領に屈辱を与えることを目的とした、政治的動機に基づく動き」だと非難している。
(英語記事 Former S Korea president Moon Jae-in indicted for bribery)