
アメリカのドナルド・トランプ大統領は24日、ロシアが23日夜から翌日未明にかけてウクライナの首都キーウに大規模な攻撃を実施し、多数の死傷者を出したことについて、「不満」だとし、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は攻撃を「やめるべきだ」と述べた。
キーウではロシアによる夜間攻撃で、少なくとも12人が死亡、数十人が負傷した。
キーウが昨年7月以来の大規模攻撃に見舞われたことを受け、トランプ氏は、自分はウクライナでの戦争を終わらせるためにウクライナとロシアの双方に「大きな圧力をかけている」と述べた。
トランプ氏は昨年の米大統領選で、自分ならウクライナとロシアの和平合意を素早く実現できると主張していた。今回の空爆は、その実現をまたしても妨げるものとなった。
トランプ氏、プーチン氏をめずらしく批判
トランプ氏はこの日、プーチン氏をめずらしく批判した。「(空爆は)必要ではないし、とてもタイミングが悪い。ウラジーミル、やめろ!」と、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。
和平交渉の一環として、ロシアによるウクライナ領占領を受け入れるよう、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領への圧力が高まる中、ロシアはキーウを攻撃した。
トランプ氏は24日、ホワイトハウスを訪れたノルウェーのヨーナス=ガール・ストーレ首相と共に記者団に応じ、自分は「誰にも忠誠を誓っていない」、ただ「人命救助に忠誠を誓っている」のだと述べた。
また、プーチン氏に対していら立っていることを認めつつ、「取引が成立するかどうか」1週間待つつもりだと述べた。一方で、空爆が止まらなければ「何かが起きる」ことになるとした。
ウクライナ、停戦には「さらに圧力」必要と
南アフリカを訪問中だったゼレンスキー氏はキーウ空爆を受け、停戦確のためにアメリカはロシアに対してもっと強硬に出られると思うと述べた。
「ロシアにさらに圧力をかければ、双方の立場をもっと接近させられるはずだ」と、ゼレンスキー氏は記者団に語った。
何かしら譲歩するつもりはあるかとの質問には、ウクライナにロシアと交渉する用意があるという事実そのものが、ウクライナによる「大きな妥協」だと答え、「停戦が最初のステップでなければならない」と述べた。
「ロシアに停戦の用意があると言うなら、ウクライナへの大規模攻撃をやめなくてはならない。我慢の限界にきているのはウクライナ人の方だ。攻撃を受けているのは他でもない我々なのだから」と、ゼレンスキー氏は付け加えた。
首都空爆のため、ゼレンスキー氏は南アフリカでの予定を一部キャンセルして帰国した。
領土譲歩は
ロシアのキーウ空爆に先立ち、トランプ氏とゼレンスキー氏の関係はすでに、危ういものになっていた。トランプ氏は和平交渉の一環として、ウクライナが領土で譲歩する必要があるという考えを示していた。
トランプ氏は23日の時点で、戦争終結の合意は「非常に近い」とした一方で、アメリカが示した条件をゼレンスキー氏が拒んでいると批判。それは戦争を「長引かせるだけだ」と、「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。
2014年にロシアが不法に併合したクリミア半島の領有権を放棄する案を、ウクライナはこれまで一貫して拒否している。
J・D・ヴァンス米副大統領は23日、「領土線を(中略)現在とほぼ同じ位置で凍結する」という和平合意案を提示。ウクライナとロシアが「ともに現在保有している領土の一部を放棄しなければならない」ことを意味するものだと説明した。
トランプ氏は23日、ホワイトハウスでの記者団とのやりとりで、クリミアに対するロシアの主権を認めることを検討しているのかと聞かれると、戦争が終わってほしいだけだと返した。
ロシアによるクリミアの不法占領を認めることは、ゼレンスキー氏にとって、政治的に受け入れがたいことだ。さらに、国境を武力で変更してはならないという第2次世界大戦後の国際法規範に反することにもなる。
マルコ・ルビオ米国務長官は24日、ホワイトハウスの大統領執務室でトランプ氏とノルウェーのストーレ首相と同席した際、「我々は(ロシアとウクライナに)最終的な線を示している」と述べた。
「我々としては、双方が応じる必要がある。しかし、昨夜のミサイル攻撃を見て、なぜこの戦争を終わらせる必要があるのか、全員があらためて思い起こすべきだ」とも、ルビオ氏は話した。
南アフリカとの関係改善
こうした中でゼレンスキー氏は24日、訪問先の南アフリカでシリル・ラマポーザ大統領と会談。ロシアのウクライナ侵攻をめぐり悪化していた両国関係が、劇的に改善したことをうかがわせた。
かつて、2014年のロシアによるクリミア併合を南アフリカが批判しなかったことを、ウクライナは問題視してきた。さらに、2022年のウクライナ全面侵攻開始についても南アフリカはロシア寄りの態度をとっていると、ウクライナ側は批判していた。
ラマポーザ大統領は24日、ゼレンスキー大統領との共同記者会見で、ウクライナで続く紛争を深く憂慮していると述べた。そして、紛争の全ての当事者と話をするという、南アフリカの方針を繰り返した。
また、紛争を終わらせる必要性について、プーチン氏とトランプ氏の双方と話をしたとも付け加えた。
ただ、ウクライナがロシアに領土を明け渡すべきかどうかについては言及しなかった。
昨年11月の米大統領選でトランプ氏が再選を果たすまでは、アメリカはウクライナの最も近しい同盟国の一つだった。しかし、ウクライナは現在、特にロシアと強いつながりを持つ国が多いアフリカで、国際的なパートナー国を増やすことに注力している。
南アフリカもまた、米政府との緊張関係に苦慮している。トランプ政権は南アフリカの駐米大使を国外追放し、同国への資金援助を停止するなどしている。
非同盟的な立場を取る南アフリカは、こうした立場がロシアとの和平交渉の実現に協力するうえでの好条件になっているとしている。
(英語記事 Trump says he is 'not happy' with deadly Russian strikes on Kyiv)