
ウクライナの首都キーウのヴィタリー・クリチコ市長(53)は24日、BBCに対し、ドナルド・トランプ米大統領から領土について譲歩する譲歩するよう圧力が高まる中、ウクライナはロシアとの和平合意の一環として、一時的に領土を放棄しなくてはならないかもしれないと話した。
「(和平合意の)シナリオのひとつが、おっしゃるように領土を放棄することです。公平ではないけれども、平和のためには、一時的な平和のためには、解決策になるかもしれない。一時的には」と、市長はBBCアナ・フォスター記者の質問に答えた。
ボクシングの元チャンピオンから政治家に転身した市長はその上で、ウクライナ国民はロシアによる占領を「決して受け入れない」と強調した。
たとえ一時的であっても、ウクライナが領土を放棄しなければならない可能性を、ウクライナできわめて高い地位にある要人が公に発言したことになる。
BBCは、ロシアのミサイルとドローンによるキーウ攻撃で集合住宅などが破壊され、12人が死亡、80人以上が負傷した数時間後、市長に取材した。23日夜から翌未明にかけてのこの攻撃で、ロシアがウクライナの首都に対して最近行った攻撃の中で、最も多数の死傷者が出た。
クリチコ市長はキーウ中心部の市長執務室からBBCラジオ4の番組「トゥデイ」に出演し、自分は「ウクライナの首都について、責任を負っている」と述べ、キーウが国の「心臓部」だと話した。
市長は、和平実現のためにはウォロディミル・ゼレンスキー大統領が「痛みを伴う解決策」を取らざるを得なくなるかもしれないと述べた。
他方、ゼレンスキー大統領と和解の可能性について詳細を話し合ったかとの質問に対し、クリチコ大統領はきっぱりと「いいえ」と答え、「それはゼレンスキー大統領の役割で、私の役割ではない」とも述べた。
クリチコ氏とゼレンスキー氏は、政治的にライバル関係にある。市長はこれまで繰り返し、大統領とそのチームが市長としての自分の権限を弱めようとしていると批判してきた。
2月に米ホワイトハウスでゼレンスキー氏とドナルド・トランプ大統領が記者団を前に激しく口論したことに触れ、市長は主要な政治家同士が重要課題について話し合う際には、その場に「ビデオカメラがない」方がいいと述べた。
トランプ大統領は23日、2014年にモスクワが違法に併合したウクライナ南部のクリミア半島について、ロシアの領有を認めないとゼレンスキー氏が立場を堅持していることについて、その姿勢が和平交渉に悪影響を与えていると非難した。
トランプ氏はクリミアは「何年も前に失われた」もので、現在は「議論の対象にもなっていない」と述べた。
しかしゼレンスキー氏は、トランプ氏の一次政権でマイク・ポンペオ国務長官(当時)が2018年に出した「クリミア宣言」において、アメリカは「ロシアが併合しようとする動きを拒否する」と述べていたことを指摘した。
ウクライナとその欧州同盟国はこのところ、トランプ氏がロシアの主張を容認しているのではないかと、懸念を強めている。
(英語記事 Ukraine may have to give up land for peace - Kyiv Mayor Klitschko)