サントス前米下院議員
米ニューヨークの連邦地裁は25日、政治献金の私的流用をめぐって通信詐欺と悪質な個人情報窃盗の罪などに問われた共和党の前下院議員ジョージ・サントス被告（36）に対し、禁錮7年3カ月を言い渡した。被告は昨年8月の時点で、有罪を認めていた。
サントス被告はウォール街での勤務経験など華やかな経歴を主張して共和党から出馬し、2022年に初当選したものの、さまざまな経歴詐称や詐欺行為が次々と明らかになり、昨年12月に下院から異例の除名処分を受けた。
裁判官は検察の求刑通りの刑を言い渡した。弁護側は、悪質な個人情報窃盗罪に対する最短の禁錮2年にすべきと主張していた。
被告は25日の法廷で、涙を流しながら自分の行為について謝罪し、「過去を書き換えることはできないけれども、この先の道は自分でコントロールできる」と述べた。
しかし、裁判官は説得していない様子で、「あなたは自分の舌先三寸で当選したものの、その発言のほとんどがうそだった」と批判した。
被告は7月25日に刑務所に収監される。
連邦当局は、サントス被告が私的流用できる資金を得るため選挙資金を洗浄し、在職中に失業手当を違法に請求し、連邦選挙委員会（FEC）に虚偽の申告をしたと指摘していた。
検察によると、被告は詐欺に気づいていなかった支援者のクレジットカードを使い、数カ月にわたり自身の選挙事務所の資金として4万4000ドル以上を請求した。
昨年の公判で被告は窃盗と、受給資格のない失業手当の申請を認めていた。
また、下院倫理委員会と連邦選挙委員会に提出した財務報告書において、虚偽の記載と記載漏れがあったことも認めている。
被告は少なくとも37万4000ドルの賠償金支払いを命じられている。 そのため被告はこれまで、個人向けにパーソナライズされたビデオを有名人が販売できるプラットフォーム「Cameo」で、賠償金の資金を作ろうとしていた。
サントス被告は2022年の中間選挙で、生まれ育ったニューヨーク州のロングアイランドとクイーンズを含む下院選挙区で民主党現職に勝利し、初当選した。しかし、当選直後から複数の経歴詐称や詐欺疑惑が相次ぎ浮上した。
被告の失脚は、2022年に米紙ニューヨーク・タイムズが新人下院議員の経歴について調査記事を掲載したことから始まった。被告は、自分は大卒で、金融大手のシティグループとゴールドマン・サックスで働いていたという経歴を主張していたものの、これが事実と異なると同紙は報道した。
学歴や職歴の詐称に加え、自分はユダヤ系だという発言、2001年9月11日の米同時多発攻撃で母親が死亡したという主張は、いずれも虚偽だと発覚した。瀕死（ひんし）の犬のための募金活動で金を盗んだという疑惑も、明らかになった。
こうした状況で、州と連邦の当局が捜査を開始。2023年に入ると下院倫理委員会が、被告が2022年の選挙運動中に「違法な活動」に従事し、議会でうそをつき、性的不正行為に及んだといういくつかの疑惑について、調査を行うことを決議した。
連邦検察はその数カ月後、まず罪状13件で被告を起訴。罪状13件の内訳は、電信詐欺7件、マネーロンダリング（資金洗浄）3件、公的資金窃盗1件、下院での虚偽証言1件だった。検察はその後、選挙資金提供者の個人情報を盗み、そのクレジットカードを使用したとして、さらに罪状10件で同被告を追起訴した。
その後、下院倫理委員会の報告書が発表され、被告が選挙資金を個人的な利益のために不正使用したことが明らかになった。使途には美容目的のボトックス治療や、私的なクレジットカードの支払い、ポルノを含む有料コンテンツサイト「OnlyFans」の購読料などが含まれていた。
サントス被告は昨年12月、下院から除名処分を受けた。これは過去20年以上なかったことで、アメリカ史上でわずか6人目。
被告はドナルド・トランプ大統領の熱烈な支持者だが、大統領に恩赦を求めるつもりはないと述べている。
「私に恩赦を与える価値があると大統領が思うなら、そうしてもらって構わない。だが、私が恩赦を求めたりすれば、それは自分の説明責任と責任を否定することになる」と被告はニューヨーク・タイムズに話している。
ただし、 ポッドキャスト番組の中で、ゲストのブロガー、ペレス・ヒルトン氏から、もし複数年の禁錮刑を告げられたら恩赦を求めるかと尋ねられると、上記の発言とは矛盾する受け答えをした。
人気タレントに対して被告は、 「当たり前だ、もちろんそうするよ」と答えている。
（英語記事 Ex-congressman George Santos sentenced to seven years in prison）
