ビデオ会議に参加するロシアのウラジーミル・プーチン大統領（左）と、画面に映るロシア軍のワレリー・ゲラシモフ参謀総長
ロシア軍は26日、同国西部のクルスク州の完全な支配を取り戻したと発表した。ウクライナはこれを否定している。
ロシア軍のワレリー・ゲラシモフ参謀総長は、ウクライナ軍が掌握していた最後の村が奪還されたと述べた。ウクライナ軍は8カ月前に、クルスク州を急襲し、一部を掌握していた。
ゲラシモフ将軍はまた、ロシアの反攻作戦において北朝鮮軍が「英雄的行動」をとったと称賛した。ロシアが北朝鮮の関与を公に認めたのはこれが初めて。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナのクルスクでの作戦は完全に失敗と評した。
ウクライナは、自国軍がロシア国境地域で作戦を続けていると述べ、ロシア政府の主張を「プロパガンダのトリック」だと述べている。
ウクライナ軍はここ数カ月間、クルスク州で後退を続けている。ロシアは領土奪還の一環として、兵士7万人を投入しているほか、激しいドローン（無人機）攻撃を行っている。
米戦争研究所（ISW）は4月25日の最新報告で、「ロシア軍は最近、クルスク州の国際国境付近で前進し、地域内のウクライナ軍を、数少ない拠点から押し出そうと行動している」と指摘。
また、「4月25日には、ロシア北西部のベルゴロド州でも戦闘が続いている」と報告した。
ウクライナは「完全に失敗」とプーチン氏
26日に行われたプーチン大統領とのビデオ会議で、ゲラシモフ参謀総長は「きょう、クルスク州で最後の集落のゴルナル村がウクライナ軍から解放された」と述べた。
ゲラシモフ将軍は、クルスク州で7万6000人以上のウクライナ兵が死亡または負傷したと主張している。この数字は、独立した検証を受けていない。
将軍はまた、北朝鮮軍がウクライナ軍の部隊を打ち破るために「重要な支援」を提供したと称賛した。
プーチン大統領は将軍に、「（ウクライナ政権の）冒険は完全に失敗した」と述べ、これを機にロシア軍は他の戦線でもいっそう前進するようになると主張した。
ロシア軍は現在、クルスクに隣接するウクライナ北東部スーミ州で、いくつかの集落を支配していると発表している。
一方、ウクライナ軍の参謀本部はメッセージアプリ「テレグラム」への投稿で、「難しい」戦況だとしつつも、クルスク州での陣地を依然として維持しているほか、すぐ南に位置するベルゴロド州での侵攻を続けていると主張している。
ウクライナは昨年8月にクルスク州に侵攻。ロシアの国境に緩衝地帯を作り、ロシア軍がウクライナ東部の前線に配備されるのを防ぐことを目的としていた。
ロシアとウクライナの戦争をめぐっては先週、アメリカのスティーヴ・ウィトコフ特使がプーチン氏と会談。これを受けてドナルド・トランプ米大統領は25日、両国が「合意にとても近い」と話した。
しかし26日には、ロシアが23日から24日にかけてウクライナの首都キーウを攻撃したことを指摘し、プーチン氏の戦争終結への意欲に疑問を呈した。この攻撃では少なくとも12人が死亡し、90人が負傷した。
トランプ氏はこのコメントを発表する前、ヴァチカン市国で行われたキリスト教カトリック教会の教皇フランシスコの葬儀に参列。葬儀の前にはヴァチカンで、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談した。
両大統領が対面するのは、2月28日にホワイトハウスの大統領執務室で、記者団を前に口論して以来だった。
ホワイトハウスは26日の会談について「非常に生産的」なものと評した。ゼレンスキー大統領は、「もし共同で成果を出せれば、これは歴史的なものになり得る、非常に象徴的な会談だった」と語った。
ゼレンスキー氏は25日にBBCに対し、どんな合意が成立する前にも、「完全かつ無条件の停戦」を求めていると述べた。
ウクライナについては、戦闘終結のためのロシアとの合意の一環として、領土の譲歩を受け入れるよう、トランプ大統領が圧力をかけていると報じられている。これには、2014年にロシアが不法に併合したクリミア半島の放棄が含まれる可能性がある。
ゼレンスキー大統領は、こうした領土放棄の譲歩は決してしないと繰り返している。
ロシアは2022年にウクライナへの全面侵攻を開始し、国際社会が認めるウクライナ領の約20％を現時点で支配している。ウクライナはロシアといずれ和平交渉をする際にはで、クルスク州で奪った領土を交渉材料にできると期待していた。
（英語記事 Russia claims it has regained full control of Kursk from Ukraine）
