2025年5月23日(金)

BBC News

2025年4月28日

車が突っ込んだストリートフェスティバル会場で作業する警察(27日、ヴァンクーヴァー)

カナダ・ヴァンクーヴァーで26日夜、フィリピン系住民の伝統を祝うストリートフェスティバルの会場に車が突っ込み、27日までに11人の死亡が確認された。同市のフィリピン系コミュニティーには衝撃と悲しみが広がっている。

事件は26日午後8時14分ごろ、ヴァンクーヴァー南部のイースト43番街とフレイザー通りの近くで発生した。

現場では当時、フィリピン系文化を祝う、毎年恒例のラプラプ・デー・フェスティバルが開催されていた。

警察によると、5歳から65歳までの11人が死亡し、数十人が負傷した。

警察はカイジ・アダム・ロー容疑者(30)を拘束した。容疑者はメンタルヘルスの問題を抱えているとされる。

捜査当局の声明によると、容疑者はヴァンクーヴァーの住民。犯行動機は不明だが、テロ行為ではないとみているという。

容疑者は27日、8件の第2級殺人罪で訴追された。捜査当局は声明で、今後「さらなる訴追が予想される」とした。

フェスティバルの主催者は、ヴァンクーヴァーの結束の固いフィリピン系コミュニティーは「悲しみに暮れている」とし、この襲撃事件の影響は今度何年も続くだろうと語った。

「死者が増える可能性」と警察、テロは否定

ヴァンクーヴァー警察のスティーヴ・ライ本部長代理は、27日の記者会見で、ヴァンクーヴァーの歴史上「最も暗い日」だったと述べた。

この襲撃事件では数十人が負傷し、その中には重傷者もいると、ライ氏は述べた。

また、「死者数は今後数日から数週間で増える可能性がある」とし、犠牲者には男性や女性、若者が含まれると付け加えた。

犯行動機については明言を避けたが、「この事件に関連する証拠から、これがテロ行為であったとは我々は考えていないと、自信を持って言える」とした。

さらに、容疑者が「過去に、メンタルヘルスに関連して、警察や医療の専門家とかなりやり取りをしていた」ことが分かっているとも付け加えた。

フィリピン系カナダ人が14万人以上暮らすヴァンクーヴァーでは、1500年代にスペインによるフィリピンの植民地化に抵抗した国民的英雄ラプラプの功績を記念して、毎年ストリートフェスティバルが開催されている。

今年のフェスティバルには数万人が参加していた。

ライ本部長代理によると、警察はフェスティバルに先立ち、脅威評価を行い、フェスティバルの大部分が行われていた学校の裏側の道路を部分的に閉鎖していたという。

フェスティバルをめぐっては、より高い脅威レベルを示すものは何もなかったと、ライ氏は付け加えた。

襲撃があった通りには主に屋台が集まっていた。防護壁は設置されていなかった。

この事件は、市当局と第一対応者にとって「重大な分岐点」になりうるものだと、ライ氏は述べた。

フィリピン系コミュニティーに「大きな困惑と混乱」

現場では、事件発生から一夜明けた27日、人々が花を手向けていた。うずくまってむせび泣く女性もいた。

この地域で50年以上暮らしているという別の女性は、フェスティバルに参加していたとBBCに語った。

会場には若者や家族連れが集まり、「みんなお祝いをして、楽しむためにここに来ていた」のだと、女性は述べた。「これは悲劇だ」。

フィリピン系団体「フィリピ―ノBC」のRJ・アキノ代表は、「26日夜は極めてつらい夜だった。このコミュニティーは、こうした気持ちを長い間抱えていくことになるだろう」と、27日の記者会見で述べた。

「多くの疑問が浮かんでいることは承知している。我々は、全ての答えを持ち合わせているわけではないが、我々は悲しみに暮れている。そのことを皆さんに伝えたい」

アキノ氏は、この襲撃事件は結束の固いフィリピン系コミュニティーに大きな困惑と混乱を引き起こしたとし、多くの住民が愛する人の安否を確認するために互いに電話をかけあっていたと述べた。

「私の携帯電話があんなに鳴ったことは、人生で一度もなかったと思う」と、アキノ氏は述べた。「すごくパニックになっていて、誰かが電話に出てくれた時はほっとした」。

総選挙直前の事件、首相は追悼式に出席

この襲撃事件は、28日にカナダ総選挙を控える中で起きた。マーク・カーニー首相は事件を受け、カルガリーとリッチモンドでの与党・自由党の大規模支持者集会を中止した。

サスカトゥーンとエドモントンでの、地域に焦点を当てたより小規模なイベントは、予定通り行われた。

カーニー氏は国民向けのテレビ演説で、事件に言及し、「胸が張り裂ける思い」で、「打ちのめされている」と語った。

カーニー氏は27日夜、予定を変更してヴァンクーヴァー入りし、教会での追悼式に出席した。

カーニー氏は続いて、事件現場近くに設けられた追悼場所にも足を運んだ。

ブリティッシュコロンビア州のデイヴィッド・エビー首相も同席した。

28日の総選挙でカーニー氏率いる自由党と対決する、野党・保守党のピエール・ポワリエーヴル党首は選挙活動を継続したが、トロント郊外ミシサガの教会に立ち寄り、フィリピン系コミュニティーのメンバーと面会した。

「私はあなた方と連帯するためにここに来たいと思った」のだと、教会に集まった人々に語った。

ブリティッシュコロンビア州新民主党(BCNDP)のデイヴィッド・エビー党首は、「衝撃を受け、胸が張り裂ける思い」だと述べた。

26日のフェスティバルに参加していたという新民主党(NDP)のジャグミート・シン党首は、27日に予定していた選挙運動の予定を変更した。

「このような喜びの場が、これほど暴力的に引き裂かれる」のを目の当たりにし、「胸が張り裂ける思い」だと述べた。

そして、「家族連れが集まり、子供たちが踊っていた。文化や歴史、コミュニティーへの誇りをこの目で見た」と付け加えた。

(英語記事 Community in shock as death toll in Vancouver car ramming attack rises to 11/Suspect charged with eight counts of second degree murder after Vancouver car ramming

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c4g3yx4r7pgo


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