
ヒューゴ・バシェーガ中東特派員、ジェシカ・ローンズリー記者
イスラエルは27日、隣国レバノンの首都ベイルート南郊に空爆を行った。イランが支援するイスラム教シーア派組織ヒズボラが使用しているとされる建物について住民らに避難を命じた後、攻撃を実施した。
ヒズボラは2023年10月以来、イスラエルと交戦状態にあった。昨年9月下旬にはイスラエルが砲撃を強化し、限定的な地上侵攻を開始したことで戦闘が激化したが、昨年11月に停戦合意に至った。
イスラエルは今回の空爆について、「イスラエル国家とその市民に脅威を与える」ヒズボラの「精密誘導ミサイル」の貯蔵庫を標的にしたと述べた。
レバノンの大統領府はこの攻撃を非難。停戦を仲介したアメリカとフランスに対し、イスラエルに攻撃停止を求めるよう呼びかけた。
イスラエルがベイルート南部の郊外、ヒズボラの拠点ダヒエ地区を攻撃したのはほぼ1カ月ぶり。
今月初めに行われた空爆では、ヒズボラの幹部を含む4人が死亡した。
今回の攻撃は、停戦にさらなる圧力をかけることになる。合意にもかかわらず、イスラエルはほぼ毎日、ヒズボラに関連しているとする標的を攻撃している。イスラエル政府は、ヒズボラからの脅威とみなされるものに対応すると述べている。
匿名を条件にBBCの取材に応じた西側関係者によると、ヒズボラが停戦におおむね従っている一方で、イスラエルは空爆やドローン監視を含め、複数の違反を行っているという。
ロイター通信が配信したライブ映像は、イスラエル軍がハダス地区の住民に避難命令を出してから1時間後に、標的となった建物から巨大な煙が立ち上る様子を映し出していた。
レバノンの民間防衛隊は後に、死傷者は報告されておらず、救助隊が火災を消し止めたと発表した。
この攻撃後、レバノン大統領府はソーシャルメディアに声明を発表。
ジョセフ・アウン大統領が攻撃を非難し、「アメリカとフランスは、敵対行為停止合意の保証人としての責任を果たし、イスラエルに対して即時に攻撃を停止するよう強制しなければならない」と述べた。
また、「安定を損なうイスラエルの行為が続けば、緊張が悪化し、地域の安全と安定に対する実際の脅威をもたらすことになるだろう」と付け加えた。
イスラエル政府は、ヒズボラの「精密誘導ミサイル」の貯蔵庫を標的にしたと発表した。
イスラエル軍は声明で、「このインフラ施設におけるミサイルの貯蔵は、イスラエルとレバノンの間の合意に対する明白な違反であり、イスラエル国家とその市民に脅威を与える」と述べた。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の事務所は、同国として「ヒズボラの強化を許さない」と述べた。
また、「ベイルートのダヒエ地区は、テロ組織ヒズボラの安全な避難所として機能することはない」と付け加えた。
国連レバノン特別調整官のジャニン・ヘニス=プラスハート氏はXに、「この攻撃は、正常化を切望する人々にパニックと暴力再燃の恐怖を引き起こした」と書いた。
そのうえで、「敵対行為停止の理解をさらに損なう可能性のある行動をすべての側に停止するよう求める」と述べた。