
中国国営メディアは26日、同国の海警局(沿岸警備隊)が南シナ海の小さな砂州を掌握したと報じた。南シナ海の領有権をめぐっては、中国とフィリピンの対立がエスカレートしている。
中国国営の中国中央電視台(CCTV)は、南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島のサンディー礁(鉄線礁)で、黒ずくめの4人が中国国旗を広げている画像を公開した。
CCTVによると、中国は今月初めに「海洋管理を実施」し、サンディー礁における「主権的管轄権を行使」したという。
中国とフィリピンは、南シナ海の陸地とその周りの海について領有権を主張している。
フィリピンは27日、同海域の三つの砂州に当局者が上陸したと発表。中国側の画像をまねて、フィリピン国旗を掲げる画像を公開した。これらの砂州の中に、サンディー礁が含まれるのかは分かっていない。
フィリピンの「西フィリピン海(南シナ海)タスクフォース」(NTF-WPS)は声明で、複数ある砂州のうちの一つから914メートル離れた場所で、中国海警局の船1隻と、中国の海上民兵の船7隻の「不法なプレゼンス」を確認したと説明した。
「この作戦は、西フィリピン海におけるフィリピンの主権、主権的権利、管轄権を守るための、フィリピン政府のゆるぎない献身とコミットメントを反映している」
中国とフィリピンの対立はエスカレートしており、船舶の衝突や小競り合いが頻発している。
サンディー礁はフィリピン軍の前哨基地があるパグアサ島(英語名ティトゥ島)の近くにある。フィリピン政府は、この海域での中国の動きを追跡するために、パグアサ島を使っていると報じられている。
面積約200平方メートルのサンディー礁を、中国が恒久的に占領していることを示すものはなく、報道によると、中国の海警局職員らは去ったとされる。
アメリカのホワイトハウスは、中国がサンディー礁を掌握しているとの報道は「事実であれば深く懸念される」事態だとした。
米国家安全保障会議のジェイムズ・ヒューイット報道官は、「こうした行動は地域の安定を脅かし、国際法に違反する」ものだと警告し、ホワイトハウスは「自国のパートナーと緊密に協議している」と付け加えたと、英紙フィナンシャル・タイムズは報じた。
フィリピンとアメリカの合同訓練に反発
米軍とフィリピン軍が「バリカタン演習」と呼ばれる、戦争を想定した毎年恒例の合同訓練を実施している最中に、中国は今回の動きを見せた。中国はこの訓練を挑発行為だと批判している。
合同訓練は今後数日間続き、約1万7000人の隊員が参加する。27日にはフィリピン北部の沖合で、米海兵隊防空統合システムのミサイルが発射された。同システムの実弾訓練は今回で2度目で、フィリピンに配備されたのは初めて。今回の訓練では、アメリカの無人地対艦ミサイル発射車両NMESISも使用される予定。
フィリピン軍は、米軍との訓練は国防のためのリハーサルだが、特定の国を相手にしたものではないと主張している。
「このような訓練は、我々にとってかけがえのないものだ」と、第3海兵沿岸連隊のジョン・ルへイン大佐は述べた。
今回の訓練は、アメリカが長年、この地域に提供してきた軍事支援を、ドナルド・トランプ米大統領が覆すかもしれないという、一部の同盟国の懸念を和らげている。
先月にフィリピンの首都マニラを訪問したピート・ヘグセス米国防長官は、ワシントンはフィリピンとの同盟関係を「強化」し、中国に対する「抑止力を再構築」することを決意していると述べていた。
南シナ海では何世紀にもわたり、領有権をめぐる争いが続いてきたが、近年は緊張が高まっている。
中国は「九段線」として知られる広大な海域の領有権を主張している。この「九段線」は、中国最南端の海南省から南と東に数百キロにわたって設定されている。中国政府は島に構造物を建設したり海軍がパトロールを実施したりして、その広大な領有権を既成事実化しようとしている。
この海域の領有権は、ヴェトナム、フィリピン、台湾、マレーシア、ブルネイも、それぞれ主張している。