
カナダの総選挙が28日、投開票される。情勢は、アメリカのドナルド・トランプ大統領によって一変している。
カナダでは年明けに、与党・自由党の支持率低迷などを受け、同党を9年間率いてきたジャスティン・トルドー前首相が退陣を表明。その時点では、次の総選挙での野党・保守党の圧勝が確実視されていた。
しかし、トランプ氏が米大統領に就任し、カナダに対して25%という高率関税を課すと発表すると、状況は一変。カナダをアメリカの「51番目の州」にすると言い放ったことも影響し、これらを厳しく批判するマーク・カーニー首相(60)が率いる与党・自由党が、息を吹き返した。
選挙直前の世論調査では、自由党がわずかにリードしている。ただ、ここ1週間で差は詰まっており、保守党のピエール・ポワリエーヴル党首は、勝利できると述べている。
選挙戦の最終盤の26日夜には、ヴァンクーヴァーでイベントに自動車が突っ込み11人が死亡する事件が発生。各党の党首が対応に追われる中で、36日間に及んだ選挙運動が終わった。
選挙戦は、大統領2期目が始まって100日となったトランプ氏への対応が主要テーマとなった。そのため今回の選挙は、カーニー氏の「トランプ対策」を国民がどう評価するかという、国民投票の色合いが濃いとみられている。
選挙期間中、カーニー氏はトランプ氏について、「私たちの国を壊そうとしている。目的は、アメリカがこの国を所有できるようにするためだ」と主張。カナダは存亡の危機を迎えており、対策が必要だと訴えた。
そのうえで、自分はこの危機を乗り切るのに最適な人物だと強調。大不況期のカナダと、ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)期のイギリスで中央銀行の総裁を務めた経験をアピールしてきた。
カーニー氏はまた、カナダが何十年間もアメリカとの間で享受してきた古い関係は「終わった」と宣言。27日のサスカトゥーンでの選挙集会でも、カナダはイギリスや欧州連合(EU)のような「信頼できる貿易パートナー」との関係を強化すべきだと主張した。
一方、保守党のポワリエーヴル氏は、世論調査でリードされているオンタリオ州で最後の選挙運動をした。同州は人口が多く、下院343議席のうち122議席が割り振られており、選挙全体の結果を左右する可能性がある。
選挙戦でポワリエーヴル氏は、トルドー前政権での「失われた10年」を批判。住宅費や物価の高騰、犯罪などへの不満の広がりに触れ、カナダ国民には変化が必要だと訴えた。
今回の選挙は保守党と自由党の一騎打ちの様相となっており、小政党は支持拡大に苦しんでいる。
主要2政党の他には、新民主党(NDP)、ブロック・ケベコワ(ケベック連合)、緑の党、カナダ人民党などがある。
いずれの政党も、過半数を取って政権を樹立するには、172議席以上を獲得しなければならない。改選前議席は自由党が152議席で最も多い。
投票は、カナダ東部時間28日午前8時半(日本時間午後9時半)にニューファンドランド州とラブラドール州で始まり、全国六つのタイムゾーンで時間差で進められる。投票が最後に締め切られるのはブリティッシュコロンビア州で、現地時間午後7時(日本時間29日午前11時)。
期日前投票は、過去最多の700万人以上が済ませている。
(英語記事 Canada votes in pivotal election transformed by Trump)