
カナダ総選挙で勝利が確実となった与党・自由党を率いるマーク・カーニー首相は29日、BBCの単独インタビューに応じた。カーニー氏は、カナダはアメリカの敬意に値する国だと主張し、ドナルド・トランプ米大統領とは「自分たちの条件で」のみ、貿易や安全保障の協議に臨むと述べた。
28日投開票の総選挙では、数カ月前まで支持率低下に悩み、最大野党・保守党に敗れることが確実視されていた自由党が、トランプ米政権へのカーニー氏の対抗姿勢が支持されるなどし、驚異的な「逆転勝利」を果たす見通しとなった。カーニー氏は引き続き政権を担うことになる。
カーニー氏はBBCのインタビューで、今後の訪米の可能性について、カナダの主権を尊重した「真剣な話し合いがもたれる」場合に限ってすると述べた。
また、トランプ氏との会談は、「向こうの条件ではなく、自分たちの条件で」行われると強調。「パートナーとしての関係が必要だ。経済と安全保障のパートナーだ」、「これまでとはまったく異なるものになるだろう」と述べた。
カナダとアメリカは、メキシコも加え、経済が深く統合されている。自動車部品など大量の製品が日常的に国境を越えている。
そうした状況で、トランプ氏は2期目の大統領就任後、カナダからのアルミニウム、鉄鋼、その他のさまざまな製品に25%の関税を発動。のちに、貿易に関する「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の対象品は除外した。
これに対しカナダは、米製品に約600億カナダドル(約6兆円)相当の関税をかける報復措置で対抗している。
カナダにとってアメリカは、輸出の約75%を占める大市場だ。一方、アメリカからすればカナダは、輸出の17%の市場でしかない。
ただ、アメリカの最大の原油の供給源はカナダだ。アメリカの対カナダの貿易赤字(2024年は450億ドルの見込み)のほとんどは、エネルギー取引から生じている。
カーニー氏はこの日のインタビューで、カナダはアメリカの「40以上の州にとって最大の取引先」になっていると主張。「私たちがアメリカに、重要なエネルギーを供給していることを忘れないでもらいたい。アメリカの農家に、実質的にすべての肥料を供給していることを忘れないでもらいたい」と述べた。
そして、「私たちは敬意に値する。敬意を払われるべきだし、この先また敬意を受けることになるだろう。そうなれば、協議を開始できる」とした。
「51番目の州」は「あり得ない」
カーニー氏は、トランプ氏が繰り返し、カナダをアメリカの「51番目の州」にすると発言していることについては、そのようなシナリオは「絶対に実現しない」とインタビューで述べた。
「率直に言って、他のどんな国についても、そんなことはあり得ないと思う。(中略)パナマであれ、グリーンランドであれ、あるいは別の国であってもだ」
一方、米ホワイトハウスのアナ・ケリー副報道官は29日、「カナダをアメリカの大切な51番目の州にするというトランプ大統領の計画に、今回の選挙は影響を与えるものではない」と述べた。
トランプ氏が電話で祝福
カナダ首相官邸によると、このインタビューの後、カーニー氏とトランプ氏は電話で話をし、近く会談することで合意したという。電話はトランプ氏がかけたとされる。
首相官邸は、「両首脳は、カナダとアメリカが、独立した主権国家として、互いの向上のために協力することの重要性で合意した」との声明を出した。
トランプ氏はカナダ総選挙の結果について、カーニー氏を祝福したとされる。
6月のG7サミットが試金石と
カーニー氏はまた、6月にカナダで開催される主要7カ国首脳会議(G7サミット)が、世界貿易戦争の行方を決める上で「非常に重要」だと、インタビューで述べた。
また、この会議は、アメリカを含む経済的な先進7カ国が、依然として最も「志を同じくする国」なのかが「試される」ものになるだろう語った。
G7サミットは、トランプ氏が打ち出した高率関税の一部に対する90日間の停止措置が期限切れとなる直前に開催される。
(英語記事 Canada will deal with Trump 'on our terms', Carney tells BBC/Trump congratulates Canada's Carney as they agree to meet in 'near future')