2025年5月23日(金)

BBC News

2025年5月1日

ドナルド・トランプ米大統領

ジェイク・ホートン、ルーシー・ギルダー(BBCヴェリファイ)

アメリカのドナルド・トランプ大統領は、就任100日目を迎えた4月29日、ミシガン州で支持者集会を開き、「この国の歴史上のどの政権よりも最も成功した最初の100日」になった、「大勢の人がそう言っている」と述べた。

トランプ氏はこの演説で、不法移民対策や、アメリカに雇用を取り戻して「インフレの悪夢」を終わらせるとする自分の取り組みなどを強調した。

BBCヴェリファイ(検証チーム)は、この演説の主な主張の一部について、事実かどうか検証した。

ガソリン価格が「かなり」下がっている?

トランプ氏は、大統領に就任してから「ガソリン価格はかなり下がっている」と述べた。

アメリカ自動車協会(AAA)のデータによると、4月29日時点の全米の「レギュラー」ガソリンの平均価格は、1ガロン3.16ドルだった。

トランプ氏がホワイトハウスに復帰した1月20日にAAAが記録した、3.125ドルからわずかに上昇している。

しかしトランプ氏は演説で、ガソリン価格が「多くの州で1.98ドルになったところだ」としていた。

トランプ氏はこれまでに何度か、こうした主張をしているが、そこまでの値下がりの証拠は見つかっていない。

AAAによると、4月29日時点でガソリンの平均価格が2.67ドルを下回った州は一つもない。

卵の価格が87%下がった?

トランプ氏は、鳥インフルエンザの流行が続ぎ、アメリカの多くの消費者が懸念している卵の価格にも言及。「就任以来、卵の値段は87%下がっている」とした。

この主張は誤りだ。

トランプ氏が就任した1月当時、グレードAの大型卵の平均販売価格は1ダース約4.95ドルだった。

3月には1ダース約6.23ドルと、過去最高値を記録したことが、入手可能な最新データで示されている。

ホワイトハウスは、値下がりの証拠として卵の卸売価格を挙げている。

農務省によると、卸売価格はトランプ氏の就任以来、値下がり傾向にある。しかし、先週の白卵1ダースの卸売価格は3.15ドルと、1月(6.55ドル)からの値下げ幅は約52%にとどまっている。

不法入国者数が過去最少に?

トランプ氏は、2024年大統領選の重要な争点だった、不法移民問題への取り組みについて、長々と語った。

「2カ月連続で、不法入国者の数が過去最少記録を更新した」

この主張は、アメリカとメキシコの国境で当局が記録した、不法移民との「遭遇」に関する最新の月間データによって裏付けられている。

2月の遭遇件数は8346件、3月は7181件だった。

いずれも、月ごとの記録が開始された2000年以来、最も低い数値だ。

対照的に、ジョー・バイデン政権時代には、遭遇件数が約14万件の月が続いていた。

バイデン氏の任期中、不法入国者は記録的な人数に上り、任期終了が近づくにつれて減少した。

シンクタンク「移民政策研究所」が、2000年以前の月平均を調査したところ、今年の不法入国者数は「史上」最低ではなく、1960年代後半以来の最低水準であることが明らかになった。

政府効率化局は1500億ドル節約した?

トランプ氏は、政府効率化局(DOGE)を率いる側近イーロン・マスク氏の仕事ぶりを称賛し、こう述べた。

「(DOGEは)無駄や不正、乱用に関して1500億ドル以上節約した」

政府の諮問機関であるDOGEのウェブサイト(4月20日更新)には、推定1600億ドルを節約したとある。

しかし、このうち40%弱は、政府との契約や補助金、リースの取り消しなど、個々の節約に分類されるものだ。

BBCヴェリファイが分析したところ、節約の項目リストのうち、何らかの文書など証拠となるものへのリンクが掲載されているのは、約半数だけだった。

DOGEは、全ての領収書を「わかりやすく透明性のある方法」でアップロードするよう努めているとしている。

連邦政府との契約に詳しい専門家も、DOGEが主張する大規模な節約について疑問を呈し、一部は誇張されているとBBCに指摘した。

トランプ政権はどれだけの雇用を創出した?

トランプ氏は、「3カ月間で35万人分の雇用を創出した」と、演説で述べた。

この主張は、公式データで裏付けられている。

労働統計局によると、トランプ氏就任から3月までの2カ月間(最新データ)で、34万5000人分の雇用が創出されたという。

一方で、バイデン政権下だった昨年同時期の雇用創出は46万8000人規模だった。

トランプ氏はこうも述べた。「最近の記憶では、生まれながらのアメリカ市民の雇用増加が、外国人労働者の雇用増加を初めて上回った」。

この主張は事実だ。トランプ氏の就任2カ月で、外国生まれの労働者よりもアメリカ生まれの労働者の雇用は確かに増えた。

ただ、こうした動きは、バイデン政権時代の昨年2月から4月にかけても見られた。

(追加取材:ジェリー・ゲオルギエヴァ、トム・エジントン)

(英語記事 Border crossings, egg prices and jobs - Trump's 100 days speech fact-checked

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c4grdg2lg99o


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