
バーンド・デブスマン・ジュニア(米首都ワシントン)、アリ・アバス・アフマディ
アメリカのドナルド・トランプ大統領は1日、マイク・ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を解任し、国連大使に指名すると発表した。
トランプ大統領はソーシャルメディアへの投稿で、ウォルツ氏の業績に感謝し、マルコ・ルビオ国務長官が暫定的に大統領補佐官を兼務するとした。
ウォルツ氏は、米政府高官らがイエメン空爆の機密情報を民間通信アプリ「シグナル」のチャットでやりとりし、さらに誤ってジャーナリストと共有していた問題で批判を受けていた。この政治的な失態は、国連大使への指名承認審査で取り上げられる可能性が高い。
フロリダ州を地盤とする元下院議員のウォルツ氏は、第2次トランプ政権でホワイトハウスを去る最初の高官となった。
トランプ大統領は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、「戦場での制服姿から議会での活動、そして国家安全保障担当補佐官として、ウォルツ氏はアメリカの利益を最優先にして懸命に働いてきた」と書いた。
また、「彼は新しい役職でも同じように働くだろう」とした。
ウォルツ氏はXに、大統領の発表のスクリーンショットと共に、「トランプ大統領と我が偉大な国への奉仕を続けることを深く光栄に思う」と投稿した。
BBCがアメリカで提携するCBSニュースによると、トランプ大統領はこの日の発表の数時間前に、ウォルツ氏を国連大使に指名することを決定したという。
CBSは複数の情報筋の話として、ウォルツ氏が解任された理由は、シグナルの件に加え、ホワイトハウス内で、同氏が国家安全保障会議(NSC)のスタッフを適切に審査しなかったと認識されたこともあると伝えた。
情報筋はまた、トランプ大統領はウォルツ氏を尊重しているため、事態を軟着陸させ、新たな高官としての役職を与えるという措置になったとCBSに話した。
しかし、BBCが取材した匿名を希望する米政府関係者らは、トランプ政権はウォルツ氏が上院での指名承認に苦労する可能性があると考えており、大統領が何もせずにウォルツ氏を政権から排除することもできるだろうとしている。
解任直前も「シグナル」使い続ける
ウォルツ氏は3月、米誌アトランティックのジェフリー・ゴールドバーグ編集長を、問題のグループチャットに参加させたことを認めて以来、注目を浴びている。
このチャットでは、ウォルツ氏やルビオ国務長官、ピート・ヘグセス国防長官を含むメンバーが、イエメンの反政府勢力フーシ派に対する軍事攻撃の機密計画について議論していた。
1日には、ウォルツ氏の部下であるアレックス・ウォン大統領副補佐官の今後についても、不確定な情報が飛び交った。ウォン氏はトランプ政権1期目にも関わった経験豊富な外交政策の専門家で、シグナルのチャットにも参加していた。
ウォン氏は4月30日、BBCの番組「ニューズナイト」の取材でこの情報流出について尋ねられた際、政権はイエメンのフーシ派に対する行動で「大きな成功」を収め、「大統領がそれを主導した」と述べた。
3月には、議員らが公聴会でチャット参加者らを質問した。これにはタルシ・ギャバード国家情報長官やジョン・ラトクリフ中央情報局(CIA)長官も含まれていた。
国連大使のポジションは、トランプ政権の発足から空席のままだ。トランプ大統領は、エリス・ステファニク下院議員(ニューヨーク州)を最初の候補者として指名したが、共和党の下院での僅差の多数派を維持するため、指名を撤回した。
ロイター通信のフォトジャーナリストが4月30日のホワイトハウスでの閣僚会議で撮影した写真によると、ウォルツ氏はシグナルを使い続けていた。
手元に寄って撮られた写真には、ウォルツ氏が確認している携帯電話の中で、「J・D・ヴァンス」という名前で保存された連絡先とのチャットが続いている様子が写っていた。
ヴァンス副大統領からのメッセージの一部には「オフになったと相手方から確認を得た。ここに来る予定だ」と書かれていた。
一方、トランプ大統領がルビオ氏の兼務を発表したことは、国務省の関係者を驚かせたようだ。
ルビオ氏はこれにより、半世紀前のヘンリー・キッシンジャー氏以来、国務長官と国家安全保障担当の大統領補佐官の両方を務める最初の高官となる。
ルビオ氏はこのほか、縮小された国際開発庁(USID)と国立公文書館でも暫定責任者を務めている。
ワシントンの官公庁では、現在中東担当特使を務めるスティーヴ・ウィトコフ氏が、最終的にウォルツ氏の後任になる可能性がささやかれている。
また、トランプ大統領の特使の一人で、より長い外交経験を持つ、リック・グレネル氏の名前も挙がっている。
トランプ氏は大統領1期目に、国家安全保障担当補佐官を3回、交代させた。最初のマイケル・フリン氏の任期は3週間だった。
もう一人のジョン・ボルトン氏は後に、トランプ大統領について好意的ではない著書を発表した。
ボルトン氏は1日にBBCに対し、ウォルツ氏の解任は、トランプ大統領の1期目の「混乱」を思い起こさせるものだと述べた。
(英語記事 Trump ousts Waltz as national security adviser and nominates him for UN post)