2025年5月23日(金)

BBC News

2025年5月3日

ハリー王子は警備に関する判決後に、米カリフォルニアでBBCの単独取材に応じた

ナダ・トーフィク記者(ニューヨーク)、ショーン・セッドン王室担当記者

イギリス王室のサセックス公爵ハリー王子が、イギリス滞在中の自分と家族の警備が格下げされた決定を覆そうとしていた裁判について、イギリスの高等裁判所は2日、ハリー王子の申し立てを棄却した。

ハリー王子は2020年に王室の公務から退き、妻のメガン妃と共にアメリカに移住した後、自分たちに提供される警備の水準が下げられたことを不服としていた。弁護側は、ハリー王子が「劣悪な待遇」を受けたと主張したものの、裁判所は、警備に関する決定に違法性はないという判断を支持した。

判決後に行われたBBCの単独取材でハリー王子は、「家族との和解を望んでいる」と語った。また、イギリスでの警備に関する裁判に敗れたことに「打ちひしがれている」と述べた。

ハリー王子は、「この警備問題のせいで国王は私と話をしてくれない」と述べたが、もう争いたくないとしたほか、「父があとどれだけ長く生きられるか分からない」とも話した。

一方、「現時点で妻と子供たちをイギリスに連れて戻ることは考えられない」と述べ、「一部の家族とたくさんのことで意見の食い違いがあった」としたものの、今では「許した」のだと話した。

「家族と和解できれば本当にそれがいいと思っている。これ以上争い続ける意味はない、人生は貴重だ」とハリー王子は述べたうえで、これまでは警備に関する争いが「常に障害となっていた」と話した。

裁判で敗訴したことについては、「失望した」、「昔ながらの体制側のごまかしがあった」と指摘。警備の削減決定には、王室の公務や運営を管理する家政機関の意向が影響したと非難した。

一方、警備に関する争いに介入するよう父親のチャールズ国王に頼んだことがあるかという質問には、「介入を頼んだことはない。専門家に任せるように頼んだ」と答えた。

バッキンガム宮殿は、「これらの問題はすべて、裁判所によって繰り返し、綿密に検討されており、毎回同じ結論に達している」と述べた。

ハリー王子は公務から退いたことで、以前と同水準の警備を受けられなくなった。しかしハリー王子は、イギリスの要人警護を統括する「王族・要人警備執行委員会(RAVEC)」によるその決定を争い、裁判でこれを覆そうとしていた。

ハリー王子は今回、警備の決定過程での扱いが「何より恐れていたことを明るみに出した」と述べた。

また、「打ちひしがれている。敗北そのものよりも、決定の背後にいる人々が、これを良しとしていることに打ちひしがれている。これが彼らにとっての勝利なのか?」、「私に危害を加えようとする人々が、これを大勝利と見なしているのは確かだ」と述べた。

ハリー王子は、自分が自動的に受けるはずの警備が受けられなくなったことで、「その影響は毎日出ている」と述べ、王室から招待されない限り、安全にイギリスに戻ることができない状況だと話した。王室から招かれて帰国する場合は、十分な警備が提供される。

王子はまた、2020年の警備条件の変更が自分だけでなく、妻や後に子供たちにも影響を与えたと述べた。

続けて、「2020年の時点で、(警備水準の引き下げが)私たちを危険にさらすことになるのは誰もが承知していたし、それに伴う危険を私は知っているのだから、警備の問題を理由に私たちがイギリスに戻るはずだと思っていたのだ」と話した。

「しかし、それがうまくいかなかったと気づいたとき、私たちの安全を守りたいと、そうは思わないのか?」

「政府だろうと、王室の家政機関だろうと、父や家族だろうと、確かにたくさんの食い違いはあっても、ともかく私たちの安全を確保したいとは思わないのか?」

イギリスが恋しいかと尋ねられたハリー王子は、「私は自分の国を愛しているし、ずっとそうだ。あの国の一部の人々がしたことにもかかわらず。(中略)そして、子供たちに自分の故郷を見せられないのは本当に悲しいと思う」と答えた。

ハリー王子は、今回の判決によって「裁判を通じて勝つ術はないと証明された」と言い、これ以上、法的に争っていくつもりはないと述べた。

また、「誰かが事前に教えてくれたらよかったのに」と言い、判決は「意外だった」と付け加えた。

そのうえで、「この問題の核心は家族間の争いだ。今日ここにこうして座っていることが本当に、本当に悲しい。5年前におそらく私たちを(王室の)屋根の下に留めようとして、というよりもそれが事実だと分かっているけれども、その際の決定が今の状況を招いた」と語った。

決定プロセスに王室が影響を与えたと主張

控訴裁判所は今回、他の上級王族が受ける自動的かつ全面的な保護の資格を剥奪(はくだつ)する決定を、RAVECがどのように行ったかに関するハリー王子の訴えを退けた。

裁判所は、ハリー王子が自分と家族が直面する脅威のレベルについて「力強く」陳述したと認めたものの、その「不満の感情」が「法的根拠のある主張には転化しなかった」と述べた。

ハリー王子の争点はRAVECに集中していた。ハリー王子は、委員会の規則に基づき、自分のケースはRAVECのリスク管理委員会(RMB)に提出されるべきであり、そこで自分と妻子の警備に対する脅威が評価されるべきだったと主張したが、それは行われなかった。

上級判事らは2日、RAVECが2020年にハリー王子の警備に関する決定を下す際に方針から逸脱したものの、王子が置かれた状況の複雑さを考慮すると、それは「賢明な」判断だったと結論付けている。

ハリー王子は、王室の家政機関の代表者がRAVEC委員会に参加していることを知ったとき、「開いた口がふさがらなくなった」と述べ、この判決が、警備の決定プロセスが法的制約よりも王室の影響を受けていることを証明したと主張した。

また、2020年の決定にも王室の「干渉」があったと主張。その結果、最もリスクの高い王族としての地位が、一夜にして最もリスクの低いものに格下げされたと述べた。

「それがどうして可能なのか、またその当時の動機は何だったのか疑問に思う」と、王子は付け加えた。

ハリー王子はまた、キア・スターマー首相とイヴェット・クーパー内相に対し、この警備問題に介入し、RAVEC委員会の運営方法を見直すよう求めた。

2日に発表した声明で王子は、クーパー内相に「この問題を緊急に調査し、RAVECの判断プロセスを見直すよう要請する」旨の書簡を送るとしている。

(英語記事 Prince Harry tells BBC he wants 'reconciliation' with Royal Family/Prince Harry loses legal challenge over security )

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cvgn9l3y3g4o


新着記事

»もっと見る