2025年5月23日(金)

BBC News

2025年5月5日

圧勝した与党・人民行動党を率いるローレンス・ウォン首相

シンガポールの総選挙が3日に投開票され、与党・人民行動党(PAP)が大勝した。生活費の上昇と経済の安定が大きな争点だった。

ローレンス・ウォン首相率いる中道右派のPAPは、得票率65.6%で、全97議席のうちの圧倒的多数を獲得した。現地紙ストレーツ・タイムズは、PAPが87議席を獲得したと伝えた。ウォン氏にとっては、昨年党首になってから初の総選挙だった。

最大野党で中道左派の労働者党(WP)は、議席を増やすことはできなかったが、10議席を維持した。

ウォン氏は4日にテレビ演説をし、有権者に謝意を表明。この結果によって、シンガポールは「現在の激動の世界に立ち向かううえで、良い立場を得る」と述べた。

また、「みなさんの政府に対する信頼、安定、自信を明確に示すものだ。この結果から、シンガポール国民も力を得て、未来を展望できる」とした。

今回の選挙は、インフレ、賃金の低迷、雇用の見通しに対する不安が国民に広がる中で実施された。

経済の乱気流が世界的にも懸念される状況で、多くの人がPAPを安全な選択と考えたとみられる。

シンガポール国立大学(NUS)のイアン・チョン准教授(政治学)は、「シンガポールは経済規模と国際情勢から、特に弱い立場に置かれていると感じている。(中略)そのうえ私たちは、リスク回避の投票をすることで有名だ」と述べた。

PAPは1959年からシンガポールで政権を担い続けており、世界で最も長く一国を支配している政党の一つ。シンガポールがPAPの統治下で繁栄するのを見てきた高齢世代から、特に支持されている。

同国の選挙は、不正がみられない一方で、区割りやメディアに対する厳しい統制によってPAPが不公平に優位を保っているとの批判もある。

シンガポールの開放的でグローバル化した経済は好調を保っているが、ここ数年はインフレ率が急上昇している。

政府はこれを、ウクライナやパレスチナ・ガザ地区での戦争、サプライチェーンの混乱などの外的要因によるものだとしている。しかし、政府に批判的な人たちは、物品・サービス税の引き上げがインフレを悪化させたと主張している。

米中の貿易戦争が進行し、アメリカによる10%の関税の発動が迫るなか、当局や専門家らは、経済へのショックや、実質的な景気後退(リセッション)の可能性を警告している。

PAPはこうした状況を背景に、安定というメッセージを掲げて選挙活動を行った。

同党ではここ数年、閣僚が絡んだものも含め、いくつかのスキャンダルが相次いだが、今回の選挙ではほとんど話題にならなかった。経済への懸念が差し迫っていることから、それらの問題は有権者らの関心から遠ざかったのだろうと、アナリストらはみている。

ウォン氏は、政権を握って最初の選挙で与党の得票率をアップさせた最初のPAP首相となった。これまでの首相は、アナリストらが「新首相効果」と呼ぶ、新しいリーダーに対する有権者の不安によって、得票率を低下させていた。

PAPの好結果は、野党側で10政党が対立し、分断がみられたことも一因となった。野党はほとんどが低調に終わった。

WPは生活費の引き下げとセーフティーネットの強化を掲げて選挙戦を展開した。議席は増やせなかったが、議席を維持した選挙区では得票率を伸ばし、その他の選挙区でもPAPと接戦を繰り広げ、最も力のある野党としての立場を固めた。

(英語記事 Fears of global instability drive Singapore voters into ruling party's arms

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c2de934wxk4o


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