
クリス・メイソンBBC政治編集長
英イングランド各地で1日に行われた地方選や下院補選について、いろいろな数字や騒ぎが飛び交っているものの、知っておくべきことはたった二つの文章に凝縮される。
大躍進した野党「リフォームUK」のナイジェル・ファラージ党首は、花火大会とパーティーを用意していた。
労働党政権を率いるキア・スターマー首相と、最大野党・保守党のケミ・ベイドノック党首はどちらも、4日付の新聞に検視報告のような「振り返り」記事を寄稿した。
ジャーナリストは何かと大げさに誇張しすぎると、政治家はよく言う。しかし、ベイドノック氏が自らの党の選挙結果について使った「流血の大惨事」という表現を超えるのは、かなり難しいはずだ。
ただし、ベイドノック氏は英紙デイリー・テレグラフで、今回の悲惨な結果は織り込み済みだったと主張する。昨年に自分が保守党党首選に臨んだ時点ですでに、こうなることは警告されていたと。
一方スターマー首相は英紙タイムズで、ベイドノック氏ほど生々しい表現は使わなかった。
首相は「わかっている」と繰り返し、厳しい地方選結果に直面した過去の首相たちが繰り返してきた「おなじみの古臭い言い訳」を使うつもりはないと書いた。
「(1日に)投票した人々は、この国が失望させられたと激しく怒っている。そしてわ私もまた同じように、その激しい怒りの鋭い切っ先を感じている」とスターマー氏は書き、「野放しの移民問題、河川に流れ込む汚水」や「機能不全の地域サービス」に言及した。
今回の選挙結果から、現実的な疑問が二つ、ただちに浮かび上がる。
第一に、労働党と保守党は今回の結果にどう対応するのか。リフォームUKが一気に躍進したというだけでなく、野党・自由民主党も支持を伸ばしたし、程度の差こそあれ、緑の党もそうだった。
第二に、リフォームUKは権力の現実にどう自分たちを調整していくのか。端的に言えば、どこまでまともにやれるのかという点だ。
さらには、もっと全般的な政治上の問題がある。
イギリス政界の二大政党制がいずれ崩壊するのではないかという話は、以前から出ていた。
1981年には社会民主党(SDP)が出現したし、2010年から2015年にかけては保守党と自由民主党が連立政権を組んでいた。
2019年の欧州議会選では、保守党と労働党は合わせてわずか23%の票しか集められなかった。
それでも、こうした節目節目の前後になると、二大政党のどちらかが必ず次の総選挙で勝っているのだ。しかも、圧勝していることが多い。
事実、2019年の欧州議会選の数カ月後には、保守党が総選挙で大勝した。
その2年前、2017年のイギリス総選挙では、二大政党の得票率は計82.4%にもなった。
それだけに、今回の選挙結果を話題にする際には、息せき切って早口でまくしたてるより、事態を広く見渡して思慮深く話した方がいい。
とは言うものの、リフォームUKが今回やってのけた大躍進の規模のものすごさは、認めた方がいい。
世論調査でこうなるかもしれないと予想されている状態で選挙本番に突入したリフォームUKは、しっかり票を集めて予想通りの結果を出せると、挑戦に応えて見せたのだ。
それどころか、大いに盛り上がっていた事前予想の高い期待値を、楽々としのいでみせた。だからこそ今回の事態は、この国の現代政治にとって重大な出来事だと言える。
自分たちの快進撃の背景にある原動力は、裏切られたという国民の思いだと、一部のリフォームUK幹部は考えている。人間の感情の中で最も強力な、負の感情だ。
ロンドン・ウェストミンスターを舞台にした政界を、巨大な二頭の獣のように牛耳ってきた二大政党に裏切られたという国民の感情が、今回の結果の原動力なのだと。
では、次はどうなるのか。
現代政治の花火大会は続く。花火が火花を散らしているのは、リフォームUKが祝賀パーティー会場に使った野原だけではない。
そして最後にもうひとつ。もしイングランドの政治がばらばらで騒がしく思えるなら、スコットランドとウェールズと北アイルランドもお忘れなく。
来年にはスコットランドとウェールズで議会選挙がある。
リフォームUKはどちらの選挙についても、かなり期待感を抱いている。
その際にはもちろん、スコットランド国民党(SDP)やプライド・カムリ(ウェールズ党)のほか、複数の政党と競い合うことになる。
私たちの注意と支持を求めるさまざまな声は、さらに範囲を広めて、混沌(こんとん)とした音量を増していくかもしれない。
(英語記事 Chris Mason: Fireworks for Reform as Labour and Tories write election post-mortems)