
アメリカのドナルド・トランプ大統領は4日、3期目を検討しているとの報道を否定した。アメリカ合衆国憲法は「いかなる者も2度以上選出されることはない」と定めており、専門家の意見も一致している。
米NBC番組「ミート・ザ・プレス」はこの日、トランプ大統領とクリステン・ウェルカー司会者とのインタビューを放送。その中でトランプ氏は、「私は8年間の大統領、2期の大統領になる。それはとても大事なことだと、常に思ってきた」と語った。
78歳のトランプ氏はこれまでにも、3期目や4期目の大統領任期を望んでいると発言しており、「これは冗談ではない」と述べていた。
しかしその後、自分の一連の発言は「フェイクニュースのメディア」をからかうためだったと説明している。
一方で、トランプ氏が所有するトランプ・オーガナイゼーションは「トランプ2028」と書かれた帽子を販売しており、2期目終了後の続投を狙っているのではないかという憶測を呼んでいる。
フロリダ州の自宅で2日に収録されたインタビューの中でトランプ氏は、自分の続投を求める「要望」が大勢から寄せられていると述べた。
「すごくたくさんの人が、私にやってほしいと言っている」
「自分の知る限りでは、それ(3期目)は許されていないと思う。憲法上それが認められていないのか、それとも別の理由なのかは分からない」
また、「2028年の帽子を売っている人はたくさんいる」とも語った。
2期目の就任から100日を迎えたばかりのトランプ氏は、「だが、これ(3期目)は自分がやろうとしていることではない」と述べ、自分の後任になり得る共和党関係者として、J・D・ヴァンス副大統領やマルコ・ルビオ国務長官などの名前を挙げた。
合衆国憲法修正第22条には、「いかなる者も、2回を超えて大統領の職に選出されない」と記されている。
改憲には、連邦議会の上下両院で3分の2以上の議員の賛成と、州政府の4分の3以上の承認が必要だ。
しかしトランプ氏の支持らは、この条項には、裁判で争われたことのない抜け穴があると主張している。
NBCのウェルカー司会者がトランプ氏に、一部で取りざたされているこうした抜け穴について、実際に誰かに持ちかけられたことがあるかと尋ねると、トランプ氏は直接の回答を避け、「熱心な支持者が大勢いるなかで、多くの人が色々なことを言っている」と述べた。
関税は「移行期間」とトランプ氏
インタビューの中で、トランプ大統領は自分の経済政策に対する批判も退け、「いいか、そう、すべて大丈夫だ」と述べた。
「これは移行期間だと私は言ってきた。素晴らしいことになると思っている」
トランプ政権の関税政策は国際経済に混乱をもたらし、先には、アメリカ経済が2022年以来初めて縮小に転じた。
アメリカ経済が今後も縮小する可能性があるかと質問されると、トランプ氏は「何が起きてもおかしくない。ただ、我々はこの国の歴史上、最も偉大な経済を築くことになると思っている」と答えた。
さらに、関税が恒久的なものになる可能性についても言及し、「関税がいずれ撤廃されると思う人が、アメリカ国内に工場を建てたりするだろうか」と述べた。
また、貿易戦争が続く中で、アメリカ国内の店頭で販売される商品の減少に国民は備える必要があるのかという質問には、否定的な見解を示した。
「いや、そうは言っていない。ただ、人形を30も持つ必要はない。三つでいい」、「250本の鉛筆を持つ必要はない。5本で十分だ」と、トランプ氏は述べた。
移民めぐる緊急事態宣言は継続
インタビューでは、、合衆国憲法修正第5条が保障する適正手続きをめぐるやりとりもあった。修正第5条は、犯罪容疑をかけられた人に黙秘権などさまざまな権利を保障する。
トランプ氏が推進する移民の国外追放計画をめぐっては、罪に問われていない人々が、司法の場での弁明の機会を与えられないまま国外退去させられているとの指摘があり、同条項が保障する手続きを無視しているとの批判が出ている。
ウェルカー司会者は、「大統領としてアメリカ合衆国憲法を守る必要があるのではないか」と問いかけ、大統領就任時の宣誓にある「憲法を保持し、保護し、防衛する」という義務を軽視しているのではないかと示唆した。
これに対しトランプ氏は、「分からない。ただ、私には優秀な弁護士がついているし、当然ながら最高裁の判断に従うことになる」と答えた。
アメリカ連邦最高裁は先月、誤って中米エルサルバドルの刑務所に強制送還された移民の帰還を「促進する」ようホワイトハウスに命じた。これに対しトランプ政権は、エルサルバドルに移民の返還を強制する権限はないと主張している。
また、就任初日に国境の不法移民の状況を国家緊急事態と宣言する命令を出したことや、現在の国境が「安全」かどうかについても質問を受けた。
トランプ氏は、「この国の国境は今、かつてないほど安全だ」と述べたが、それに対しウェルカー司会者は、違法越境が数十年ぶりの低水準にまで減少しているという移民統計を踏まえ、なぜ宣言が継続されているのかと問いかけた。
トランプ氏は、緊急事態は国境ではなく「司法制度の中で起きている」と主張した。
「今の大きな緊急事態は、こちらはが何千人も国外退去させたいのに、その全員を一人一人、裁判にかけようとする判事たちがいることだ」と大統領は述べ、「これは移民全体に関する緊急事態だ」と主張。不法移民に関する命令を近いうちに解除する予定はないと付け加えた。
カナダとグリーンランドは
トランプ大統領はこのほか、グリーンランドの併合に軍事力を行使する可能性については「排除できない」と述べた一方で、カナダをアメリカの51番目の州にするために軍事攻撃を行う考えはないと示唆した。
「カナダについてはそうならないと思う」、「カナダは我々が守ってくれると思っている。そして実際、我々はそうしている」とトランプ氏は続けた。
「だが実際のところ、カナダは自分たちの分担を十分に果たしていない。それはアメリカとアメリカの納税者にとって不公平だ」と述べた。
カナダでは4月28日に行われた総選挙で、マーク・カーニー首相(60)率いる与党・自由党が勝利し、同首相が引き続き政権を担うことになった。
カーニー首相は6日にも、ホワイトハウスでトランプ氏と会談する予定。