2025年5月23日(金)

BBC News

2025年5月5日

イスラエルの旗を立てた戦車

イスラエル軍は、パレスチナ・ガザ地区での作戦を「強化・拡大」するため、数万人規模の予備役の招集を開始した。

イスラエル国防軍(IDF)は、ガザで拘束されている人質の帰還と、イスラム組織・ハマスの打倒を目的として、「圧力を強めている」と発表した。

しかし、停戦が崩壊した後に再開された軍事攻勢については、人質解放の保証につながっていないとして、批判の声が上がっている。また、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の戦争目的を疑問視する人もいる。

軍の計画では、新たな地域で作戦を展開し、地上および地下の「すべてのインフラを破壊する」としている。

イスラエルのメディアは、同国の戦時内閣がガザでの軍事拡大を承認したと報じている。

一方で、作戦の本格的な開始は、来週予定されているドナルド・トランプ米大統領の中東訪問後になる見通しだとも伝えている。

新たな停戦合意およびイスラム組織ハマスに拘束されている人質の解放に向けた交渉は、このところ進展がない。人質は残り59人のうち24人が生存しているとみられている。

イスラエルとハマスは今年1月に停戦に合意したが、3月1日の第1段階終了後に合意は崩壊。イスラエルが3月18日に軍事作戦を再開して以降、イスラエル人の人質は1人も解放されていない。

それ以来、イスラエル軍はガザの広範な地域を掌握し、数十万人のガザ住民が、再び避難を余儀なくされている。

イスラエルは、ハマスに圧力をかけることを目的としていると説明しており、その戦略の一環として、2カ月以上にわたってガザへの人道支援物資の搬入を阻止している

援助機関は食料、水、医薬品の深刻な不足を報告しており、イスラエルの「飢餓を用いた政策」は戦争犯罪に該当する可能性があると非難している。イスラエルはこの主張を否定している。

作戦の拡大は、疲弊した予備役兵へのさらなる負担となる見通しだ。この戦争が始まって以降、5~6回招集されている兵士もいる。また、人質の家族からは、生存者を救う唯一の道だとして、政府に対してハマスと合意するよう求める声が再び上がっている。

今回の発表は、ネタニヤフ首相のガザにおける真の意図に対する新たな疑問も呼び起こしている。

人質の家族や政治的なライバルらは、首相が合意に向けた交渉を妨害し、政治的な目的で戦争を長引かせているとの批判を繰り返している。ネタニヤフ氏はこれを否定している。

また、戦争が始まってから約19カ月が経過した現在も、ネタニヤフ氏は「戦後」の具体的な計画を提示していない。

地元メディアによると、イスラエル軍は2日、ガザでの段階的な攻勢計画をネタニヤフ首相に提示した。

一方ここ数週間で、ネタニヤフ政権に対して戦闘を停止し、人質の帰還に向けた合意の実現に集中するよう求める書簡に、数千人の予備役兵が署名している。

3日夜には、イスラエル各地で抗議活動があり、戦争の終結を訴える声が上がった。

最大都市テルアヴィヴでは、拘束されたままの人質の母親が、この戦争は「無意味な戦争」だと訴えた。

イスラエル軍は4日、ガザでイスラエル兵が2人死亡したと発表した。

4日朝には、イエメンの反政府組織フーシ派が発射したミサイルが、イスラエルのベン・グリオン空港の主要ターミナル付近に着弾した。ネタニヤフ首相はこれを受け、報復措置を取ると発表した。

イランの支援を受けるフーシ派はその後、イスラエルによるガザでの新たな軍事計画に対抗し、イスラエルの空港を繰り返し攻撃することで「空からの封鎖」を実施すると表明した。

ガザでは、ハマスが運営する保健省が、現地時間4日午前11時5分(日本時間午後5時5分)時点で、過去24時間に40人が死亡し、125人が負傷したと発表した。

イスラエル軍は、2023年10月7日のハマスによる越境攻撃を受けて、ハマス壊滅作戦を始めた。ハマスによる攻撃では、イスラエルの約1200人が殺害され、251人が人質に取られた。

ガザ保健省によると、イスラエルが作戦を開始して以降、ガザで5万2535人が殺された。そのうち2436人は、イスラエルが3月18日に攻勢を再開して以降に死亡したという。

(英語記事 Israeli army starts calling up reservists for planned expansion to Gaza offensive

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cx279gwwr0po


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