
イスラエル政府は4日夜の治安閣議で、パレスチナ・ガザ地区のイスラム組織ハマスに対する軍事攻撃の拡大計画を承認した。イスラエル当局者は5日、計画にはガザの「占拠」や、その領土の保持が含まれると説明した。
ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ハマスの壊滅と人質救出のための「強行作戦」を閣議決定したと発表した。また、ガザにいる全210万人は「保護のため移動させる」とした。
軍がどの程度の領土を占拠するかは明言しなかったが、「軍が入って出てくることはない」と強調した。
イスラエル当局者が5日朝にメディアに説明したところでは、閣僚ではイスラエル軍参謀総長のエヤル・ザミール中将が、「ガザでハマスを打倒し、人質を返す」計画を提案。全会一致で承認されたという。
当局者は、「この計画には、ガザ地区の占拠とその領土の保持、ガザ住民の南部への移動と保護、ハマスが人道支援物資を配給できないようにすること、ハマスに対する強力な攻撃、などが含まれる」と述べた。
イスラエルのメディアは、計画の第1段階には、ガザ地区のさらなる占拠と、ガザ境界に沿ってイスラエルが指定する「緩衝地帯」の拡大があると報じた。新たな停戦と人質解放に関する交渉において、イスラエルを有利な立場に置くのが目的だという。
イスラエルの安全保障当局の高官は、この計画を実施するのは、今月13~16日に予定されているドナルド・トランプ米大統領の中東訪問の後だと述べた。トランプ氏は、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタールを歴訪する予定。
ロイター通信によると、イスラエル閣僚で極右のベザレル・スモトリッチ財務相は5日、エルサレムで開かれた会議で、同国が「最終的にはガザ地区を占領する」と述べた。
ハマスの幹部は、イスラエルの「圧力と脅迫」を拒否すると述べた。
ガザ北部の住民らはBBCに、南部への再度の強制移住に強く反対するとし、廃墟の中で死ぬ方がましだと話した。
物資搬入もおおむね承認
4日の閣議では、支援物資を民間企業を通じて届ける計画もおおむね承認された。イスラエルは2カ月にわたって物資搬入を阻止しており、国連は深刻な食料不足を引き起こしていると指摘している。
国連などの支援機関は、この計画を基本的な人道主義の原則に反したものだとし、協力しない意向を示した。
国連によると、ガザ住民は飢餓と栄養失調のリスクに再び直面している。倉庫は空で、パン店は閉まり、地域で食事を提供している組織もあと数日で物資が尽きる状況だという。
また、ガザが封鎖状態に置かれていることで、医薬品、ワクチン、医療機器などの重要物資も手に入れられなくなっているという。
アメリカのトランプ大統領は、イスラエルの攻撃拡大計画について質問されると、パレスチナ人への食料支援を約束すると繰り返した。
イギリスは、「ガザにおけるイスラエルの軍事作戦の拡大を支持しない」と表明。欧州連合(EU)は、「パレスチナ住民のさらなる犠牲と苦しみ」への懸念を示し、自制を求めている。
イスラエルは1967年の中東戦争で、ヨルダン川西岸とガザの両地区を占領。2005年に、ガザから軍部隊とイスラエル人入植者を撤退させた。だが国連は、ガザの境界や上空、海岸線をイスラエルが支配し続けているとして、ガザをイスラエルの占領地とみなしている。
(英語記事 Israel security cabinet approves plan to 'capture' Gaza, official says)