2025年5月23日(金)

BBC News

2025年5月6日

米カリフォルニア州アルカトラズ島

アメリカのドナルド・トランプ大統領は、サンフランシスコのゴールデン・ゲート・ブリッジに近いアルカトラズ島にある悪名高い元刑務所の再開と拡張を指示したと、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で4日、明らかにした。

トランプ氏は、「あまりにも長い間、アメリカは凶悪で、暴力的で、犯罪を繰り返す者たちに悩まされてきた」と投稿。

「今日、刑務所当局および司法省、FBI(連邦捜査局)、国土安全保障省に、アルカトラズの再開と大幅な拡大・再建を指示した」とした。

また、この刑務所が「アメリカで最も冷酷で暴力的な犯罪者を収容する」ことになると説明。アメリカで最も厳しい刑務所として知られた施設の再開は、「法と秩序と正義の象徴」になるとした。

トランプ氏は、ギャングのメンバーとされる人々の扱いについて、裁判所と対立している。

トランプ政権は3月、ヴェネズエラのギャングの一員だとする200人以上を、エルサルバドルの刑務所に送った。連邦裁は今月、政権が「敵性外国人法」に基づいてこの措置を取ったのは違法との判断を示した

トランプ氏はまた、「国内の犯罪者」を外国の刑務所に送ることも提案している。

アルカトラズ島を選挙区にもつナンシー・ペロシ元下院議長ら民主党の有力者らは、アルカトラズ島の刑務所の再開案を「真剣なものではない」などとしている。

「ザ・ロック」の呼び名でも知られる、警備レベルが最高度だったアルカトラズ島の刑務所は、1963年に閉鎖された。現在は人気観光地となっている。

もともとは海軍の防衛施設で、20世紀初頭に軍刑務所として再建された。1930年代に司法省が管理を引き継ぎ、連邦刑務所として利用した。アル・カポネ、ミッキー・コーエン、ジョージ・「マシンガン」・ケリーなどの大物ギャングも収容された。

1962年の映画「終身犯」(原題「バードマン・オブ・アルカトラズ」)でも有名になった。同作でバート・ランカスター氏が演じた殺人犯ロバート・ストラウドは、この刑務所で終身刑に服している間に鳥に興味を持ち、鳥類学者のエキスパートになった。

「アルカトラズからの脱出」(1979年)、「ザ・ロック」(1996年)などの映画の舞台にもなった。

連邦刑務所(BOP)のウェブサイトによると、アルカトラズ島の刑務所は、運営費がかかりすぎるため閉鎖された。島という立地によって、運営費は他の連邦刑務所の3倍近くに上ったという。

トランプ氏の「再開指示」がニュースになるとすぐ、司法省のチャド・ギルマーティン報道官は、「法と秩序の象徴として機能するよう、アルカトラズの再建と再開に向けて(BOPが)取り組んでいる」との声明を出した。

しかし、刑務所の専門家や歴史家らは、この計画の実現性に大きな疑念を示している。

2018年5月~2019年8月にBOP長官代理を務めたヒュー・ハーウィッツ氏は、建物は「文字通りぼろぼろ」で、「修復するという考えは現実的ではない。破壊して一から再建しなくてはならない」とBBCに話した。

カリフォルニア大学デーヴィス校法学部のガブリエル・ジャック・チン教授は、既存の連邦刑務所には「空きがたくさんある」とし、「新たな連邦刑務所が必要なのかは明確ではない」とBBCに説明。

アルカトラズの「厳しい刑務所という評判」を使って、トランプ氏は自らの政権が犯罪に厳しいというメッセージを送ろうとしているとみられると、同教授は付け加えた。

(英語記事 Trump orders reopening of notorious Alcatraz prisonIs Trump's plan to reopen notorious Alcatraz prison realistic?

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cp8v079rlj5o


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