
ドイツの連邦議会で6日、次期首相を選ぶ投票があり、中道右派「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」を率いるフリードリヒ・メルツ氏(69)が2回目の投票で選出された。
ドイツでは今年2月の総選挙でCDU・CSUが勝利し、中道左派「社会民主党(SPD)」と4月に連立合意に達した。これにより、CDU党首のメルツ氏が次期首相となる見通しとなっていた。
しかし、この日午前に連邦議会(定数630)であった1回目の投票では、メルツ氏は選出に必要な過半数に6票届かなかった。
戦後のドイツで、1回目の投票で首相が選ばれなかったのは初めてで、同氏の威信は大きく傷つけられた。
連立を組む中道左派「社会民主党(SPD)」の票も合わせると328票となるため、メルツ氏は当初から、首相選出に十分な票を確保していたはずだった。しかし1回目の投票では、18人が造反したとみられる。
投票は無記名で行われ、誰がメルツ氏を支持しなかったのかは明らかになっていない。
議長によると、1回目の投票では議員630人のうち9人が投票せず、3人が棄権、1人の票が投票用紙ではない紙で投じられたため無効とされた。
投票後、議会は数時間にわたって混乱したが、各党と議長が再投票の実施で合意した。
2回目の投票では、メルツ氏が半数より9票多い325票を得て、首相に選ばれた。
2回目の投票でもメルツ氏が選出されなければ、連立に影響が及ぶ可能性もあった。ドイツのニュースサイトは、大混乱は回避されたと報じた。
メルツ氏は、フランク=ヴァルター・シュタインマイヤー大統領によって首相に任命され、閣僚17人が就任の見通しとなった。
政治評論家らは、メルツ氏がすんなり選出されなかったのは同氏にとって屈辱だと解説。5日に連立協定に署名したSPDの一部の議員が、不満から反対票を投じた可能性があるとした。
だがSPD関係者らは、同党が連立協定を完全に尊重していると強く主張している。
総選挙で得票率20.8%で2位になった極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は、メルツ氏が1回目の投票で選出されなかったことを受け、新たな総選挙を要求した。
CDU・CSUとSPDの連立は、昨年11月に債務に関する支出をめぐる対立で崩壊した、SPDと自由民主党(FDP)、緑の党の3党による連立(各党のシンボルカラーから「信号機連立」と呼ばれた)よりも、はるかに強固だとみられていた。
しかし、連邦議会担当の記者らは、この日の1回目の投票の衝撃的な結果は、連立に潜在的な問題があることを示していると伝えている。
メルツ氏が首相に選ばれたあと、最初に祝辞を送った1人が、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領だった。ゼレンスキー氏は、ドイツが「さらに強く成長し、欧州と大西洋の向こう側との問題でより強いリーダーシップを発揮する」ことを期待するとした。
(英語記事 Germany's Merz becomes chancellor after surviving historic vote failure)