
デイヴィッド・グリッテン(エルサレム)、ラシュディ・アブアルーフ(カイロ)
パレスチナ・ガザ地区北部のガザ市で7日、レストランや市場が立ち並ぶ混雑した通りがイスラエル軍の空爆を受け、少なくとも33人が殺害され、数十人が負傷した。ガザのイスラム組織ハマスが運営する保健省や医療関係者が明らかにした。
ソーシャルメディアに投稿された生々しい映像には、北部リマル地区にあるレストラン「タイランディ」のテーブルに覆いかぶさり倒れた複数の遺体が映っていた。このレストランは、地域の炊き出し施設としても機能していたという。
また、近くの市場で撮影された映像には、リュックサックを背負った幼い子どもが路上で死亡している様子が映っていた。
イスラエル軍は、こうした報告について「現在確認中」だとしている。
これに先立ち現地の病院は、6日夜以降の攻撃で少なくとも59人が死亡したと発表した。その多くは、避難民のためのシェルターとして使われていた2カ所の学校での犠牲者だという
今回の空爆は、イスラエルがハマスに対する軍事作戦を、強化・拡大する準備を進めていると発表する中で行われた。
炊き出し場所のレストランが標的に
イスラエル軍は7日午後、ガザで最もにぎわう商業地区の一つ、リマルのアル・ワフダ通りを空爆した。約100メートルの距離を隔てた2カ所を、ほぼ同時に爆撃した。
直後に撮影された現場の映像には、負傷者が椅子や車の荷台で搬送される様子が映っていた。
赤ちゃんを抱え、さらに2人の子どもを連れた女性はロイター通信に、この通りにあるレストラン「タイランディ」の中にいたのだと話した。
「みんな死んでしまった」とその女性は話し、「血がまるで湖みたいで、もうひどくて、血があちこちで水たまりみたいになっていた」と続けた。
現地の活動家らが共有した写真には、複数の遺体が写っていたが、これらの画像は現時点で独自に検証されていない。写っていた遺体は、コーヒーを売っていた少年、両親と幼い息子、そして小さな屋台のそばに座っていた市場の商人のものとみられる。
この空爆では、パレスチナ人ジャーナリストのヤヒヤ・ソベイフ氏も死亡したと、同氏の同僚が語っている。ソベイフ氏の妻が第一子を出産した数時間後のことだったという。
別の映像では、近くの「パルミラ」レストランのオーナー、アブ・サレフ・アブド氏が、多くの子どもや高齢者、通行人が犠牲になったと語っている。
アブド氏はイスラエル軍に向けてこう問いかけた。「いったい何を達成したいんだ? 戦闘員も武器も砲撃していない。ただ民間人を爆撃しただけだ」。
レストラン「タイランディ」は昨年、イスラエル軍が近隣のアル・シファ病院で地上作戦を行った際に破壊されたが、最近になってテントや仮設の構造物を使って再建されていた。
このレストランは簡単な食事を提供するだけでなく、人道支援団体が貧困層や避難民に供給する温かい食事を、毎日数百食、調理するために活用していた。
ハマスが主導するガザのメディア当局は、イスラエル軍が過去24時間に4件の別々の事案で、「民間人や避難民の集まりを意図的に標的にした」としたと説明。戦争犯罪を犯したと非難している。
学校にも爆撃
ハマスが運営する民間防衛局によると、6日にガザ中部のブレイジ難民キャンプにある国連運営のアブ・フメイサ学校が2度にわたって爆撃され、33人が死亡した。犠牲者には女性や子どもも含まれていた。
目撃者のアリ・アル・シャクラ氏は7日、「学校には300世帯が避難していた」と述べ、空爆の衝撃は「まるで地震のようだった」と語った。
イスラエル軍は、「ハマスの指揮統制センター内で活動していたテロリストを攻撃した」と発表している。
一方、ガザ市東部のトゥッファ地区にあるアル・カラマ学校が7日朝に攻撃を受けた件については、イスラエル軍はまだコメントしていない。ガザの民間防衛局によると、この攻撃でさらに15人が死亡したという。
イスラエルがハマスに対する地上攻勢を拡大・強化する計画を進める中、国際社会からは非難の声が高まっている。
イスラエル当局は、この計画にはガザ全域の無期限占拠、パレスチナ人の南部への強制移動、民間警備会社による支援物資の配布管理が含まれると発表。
国連及び国連に協力する複数の人道支援機関は、イスラエルのこの計画について、基本的な人道主義の原則に反すると抗議し、協力しない姿勢を示している。
ベンヤミン・ネタニヤフ首相は6日、戦時内閣が「ハマスを壊滅させ、残る人質を救出するための強力な作戦」を決定したと発表。また、ガザの住民210万人について「保護のために移動させる」と述べ、部隊は「出入りするのではなく、留まる」と強調した。
2カ月間の停戦が崩壊し、イスラエルは3月2日にガザへのすべての供給を遮断。同18日には攻勢を再開した。イスラエルこの攻勢を、残る59人の人質解放をハマスに迫るための圧力だとしている。
国連によると、再開されたイスラエルの空爆と地上作戦のため、すでに数百人の死傷者が出ており、約42万3000人が避難を余儀なくされている。また、ガザの約70%が、イスラエルによる退避命令の対象地域、または「立ち入り禁止区域」に指定されているという。
支援団体は、封鎖が解除されなければ大規模な飢餓が差し迫っていると警告している。
国連は、イスラエルには国際法の下でガザの住民に食料と医療物資を確保する義務があると指摘している。一方、イスラエルは国際法を順守していると主張し、停戦期間中に数千台分のトラックがガザに物資を搬入したことから、「支援物資の不足はない」としている。
占領下のヨルダン川西岸地区に拠点を置くパレスチナ自治政府のムハンマド・ムスタファ首相は、BBCの取材に対し、ガザの状況について「本物の大惨事だ」、「この状況は持続できない。これは包囲だ。飢餓だ。水も電気も希望もない」と述べた。
ムスタファ首相は、イスラエルとハマス間の新たな停戦と人質解放の合意を早急に仲介するよう国際社会に呼びかけ、「ガザでは毎日人々が命を落としている。もうこんなことは起きてはならない」と警告した。
イスラエルの当局者は5日、来週に予定されるドナルド・トランプ米大統領の地域訪問が終わるまで、攻勢拡大は実施しないと述べた。そのうえで、この期間はハマスが合意に応じるための「絶好の機会」になると語った。
しかし、ハマス幹部のバッセム・ナイム氏は6日、「イスラエルが『飢餓戦争』を続けている限り、交渉には意味がない」と述べた。
イスラエル軍は、2023年10月7日のハマスによる越境攻撃を受けて、ハマス壊滅作戦を始めた。ハマスによる攻撃では、イスラエルの約1200人が殺害され、251人が人質に取られた。
ハマス運営のガザ保健省によると、イスラエルが作戦を開始して以降、ガザで少なくとも5万2653人が殺された。そのうち2545人は、イスラエルが今年3月18日に攻勢を再開して以降に死亡したという。
(英語記事 Israeli strikes on Gaza restaurant and market kill 33, health ministry says )