2025年5月23日(金)

BBC News

2025年5月8日

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長

アメリカの中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)は7日、政策金利を年4.25~4.50%の幅で維持すると決定した。政策金利の据え置きは3回連続となる。ドナルド・トランプ大統領は利下げをたびたび要求している。

FRBのジェローム・パウエル議長は、トランプ政権の関税政策が「あまりに多くの不確実性」を生んでおり、金利についてどう対応するべきか判断がつかない状況だと警告した。

また、トランプ大統領の関税政策が継続された場合、「インフレ率の上昇、経済成長の鈍化、失業率の上昇を引き起こす可能性が高い」と述べた。

FRBは通常、経済が低迷していると判断すれば金利を引き下げ、物価が急激に上昇し始めた場合には金利を引き上げる。

しかし、ホワイトハウスから独立して金融政策を決定するFRBは、関税のため景気減速と物価上昇の両方のリスクが増しており、次の一手を難しくしていると指摘した。

「我々が何をすべきか、まったくはっきりしない」、「不確実性が非常に大きい」ととパウエル議長は述べた。

FRBは今回、トランプ氏が世界各国からの輸入品に対する関税引き上げを4月に発表して以降で初めて、金利に関する判断を下した。

アメリカは現在、世界各国に一律10%の「相互関税」を課している。この税率は、猶予期間が終わる7月以降に引き上げる予定だ。また、中国からの輸入品には少なくとも145%の関税が課されることになっている。

こうした状況を受けて、アメリカ国内の物流企業や港湾では貿易量の急減が報告されている。アナリストらは年初から、景気後退(リセッション)のリスクが大幅に高まっていると警告している。

昨年の大統領選で金利引き下げを公約していたトランプ大統領は、かねてFRBに対して「予防的」な利下げを求め、FRB議長の解任をほのめかす発言もしている。議長に対しては「ひどい負け犬」、「対応が遅すぎる男」と批判している。

欧州中央銀行(ECB)は先月、貿易摩擦による経済への懸念を理由に利下げを実施しており、英イングランド銀行(英中銀)も今週中に同様の措置を取ると広く見られている。

米中貿易戦争の行方は

アメリカと中国の当局者は今週にも会談する予定だが、協議の範囲は明らかになっていない。トランプ氏は7日、貿易交渉を後押しするために関税率を事前に引き下げるという考えを否定した。

パウエル議長は今回、この協議が経済の見通しを「大きく変える可能性がある」と述べた。

パウエル議長は、「通常ならば、状況が明らかになり、適切な方向性が見えてくるものだ」としつつ、「現時点では、それが何なのか、判断するのは非常に難しい」と述べた。一方で、「その間も、経済は順調に推移している」と付け加えた。

アメリカ経済は今年1~3月期、2022年以降で初めてマイナス成長に転じた。しかし当局は、この数字は関税発動前に企業が駆け込みで物資を輸入した影響によるもので、経済活動全体の減速を示すものではないと説明している。

アメリカの先月の雇用は予想外に堅調で、失業率は4.2%と歴史的な低水準付近を維持した。アメリカの株式市場も、先月の急落からおおむね回復している。

パウエル議長はこうした状況から、今は「事態の展開を見定めるために、様子を見るのが適切だと考えている」と述べた。

「じっくり待つのが適切だと考えている。もちろん、事態が動いた際に、素早く動くのが適切になったら素早く動ける。けれども、現時点では状況の推移を見守るのが適切だと考えている」と、議長は話した。

(英語記事 Fed holds rates because of tariff 'uncertainty'

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cvg7ggxewy8o


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