2025年6月15日(日)

BBC News

2025年5月17日

米格付け大手ムーディーズ・レーティングスは16日、米国債の長期信用格付けを最上位の「AAA」から「Aa1」へ1段階引き下げたと発表した。米政府の財政赤字の拡大と返済能力に対する懸念を理由としている。

ムーディーズは16日の発表で、「歴代のアメリカ政権と連邦議会は、毎年の巨額財政赤字と金利負担の増加を反転させる措置に合意できなかった。現在検討されている予算案でも、財政赤字の大幅な削減は見込めない」として、「今後10年間、政府歳入がおおむね横ばいで推移する一方で、社会保障支出が増加し、財政赤字は拡大すると予想される。その一方で、いつまでも続く巨額の財政赤字によって、政府の債務および金利負担はますます増える」と指摘した。

さらに同社は、「アメリカでは過去10年以上にわたり、政府債務と負債利子率が上昇し、同様の格付けの国・政府よりきわめて高い水準に至っている」と、格付け引き下げの理由を説明した。

「アメリカ経済と財政の相当の力は認識しているものの、もはや財政指標の悪化を完全に相殺できるものではないと考える」とも、ムーディーズは述べた。

「AAA」の格付けは、国の債務返済能力が高く、財務状況が非常に良好で、信用が最高レベルにあるという判断を意味する。

逆に、低い信用格付けは、国債が債務不履行(デフォルト)に陥る可能性が高くなったという意味で、一般的に借入コストの上昇につながる。

ムーディーズは2023年に、アメリカの「AAA」格付けが危ういと警告していた。他の格付け大手では、フィッチ・レーティングスは2023年に、かつての「スタンダード・アンド・プアーズ」(現在の「S&Pグローバル・レーティング」)は2011年に、それぞれアメリカの格付けを最上位から引き下げている。ムーディーズは1917年以来、アメリカの格付けを「パーフェクト」としていた。

ムーディーズの格付け引き下げ発表を受けて、ホワイトハウスは同社を批判しつつ、「バイデンが作り出した混乱の修復に集中している」とコメントした。

「ムーディーズにいくらかでも信頼性があるとするなら、過去4年の間に財政破綻が進む中、黙っていなかったはずだ」と、ホワイトハウスのクシュ・デサイ報道官は批判した。

ムーディーズは他方、アメリカが「規模、回復力、勢い、そしてドルが引き続き世界の基軸通貨であり続けることから、並外れた信用力を維持」しているともした。

同社は、連邦政府の債務が昨年の98%から2035年までに国内総生産(GDP)の約134%に増加すると予想した。

GDP は、国内の企業、政府、国民の経済活動すべてを測る指標。

BBCは米財務省にコメントを求めている。

ムーディーズの格下げは、税制に関するトランプ大統領のいわゆる「大きくて美しい法案」が下院予算委員会で否決されたのと同じ日に発表された。税制法案には民主党の委員だけでなく、いっそうの財政赤字削減を求める共和党の保守強硬派も反対した。

米商務省の4月末発表によると、政府支出が減少し、重関税を前に企業が商品をアメリカ国内に輸入しようと急いだことから輸入が急増したため、アメリカ経済は今年最初の3カ月で縮小した。

商務省によると、経済は年率0.3%縮小し、前四半期の2.4%成長から急激に落ち込んだという。

(英語記事 US loses last perfect credit rating amid rising debt

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c0ln1zjx2gyo


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