2025年6月22日(日)

BBC News

2025年5月23日

米首都ワシントンのユダヤ博物館の前でイスラエル大使館の職員2人が銃撃され死亡した事件で、拘束された容疑者が22日、第1級殺人や外国の当局者の殺害、銃器使用などの罪で訴追された。

事件は21日夜に発生。捜査当局は憎悪犯罪として調べている。

ジニーン・ピロ連邦検事は記者会見で、さらなる訴追が予想されると説明。「これは死刑が適用され得る事件だ」とした一方、検察が死刑を求めるかを決めるのは早過ぎるとした。

連邦捜査局(FBI)の首都ワシントン支局のスティーヴ・ジェンソン氏は、今回の殺人事件を「ユダヤ人コミュニティーに対するテロ行為であり、狙いを定めた暴力」だとした。

警察によると、被害者のヤロン・リシンスキー氏とサラ・リン・ミルグリム氏は21日午後9時8分ごろ、イベントが開かれていたユダヤ博物館から出たところを銃で撃たれて殺された。

容疑者は4人のグループに向けて発砲し、その中にいた両氏を殺害してまもなく、現場で拘束された。

警察は、シカゴから来たイライアス・ロドリゲス容疑者(30)と特定した。容疑者は身柄を拘束される際、「パレスチナを解放せよ」と叫んだという。

当局の説明では、容疑者は発砲する前、博物館の前を行き来するのが目撃されていた。

目撃者がBBCに語ったところでは、容疑者は当初、銃撃事件に衝撃を受けた傍観者と間違われ、博物館内で介抱されていたという。

FBIのジェンソン氏は容疑者について、事件の前日にワシントン入りしたと説明。仕事の会議のためだったとみられるとした。

容疑者に関係したソーシャルメディアのアカウントによると、容疑者は2024年からシカゴで、米オステオパシー情報協会(AOIA)の管理の専門家として働いていた。また、親パレスチナの抗議運動にも深く関わっていたとみられる。

警察によると、容疑者は襲撃について認めているという。また、単独犯とみられるという。

襲撃に使われたのは口径9ミリの拳銃で、2020年3月にイリノイ州で合法的に購入されていた。シカゴがある同州は、アメリカで最も厳しい銃規制法があるとされる。

容疑者の自宅があるアパートの別の部屋に住むジョン・ウェイン・フライ氏によると、容疑者は自宅の窓に外に向けて、2023年にシカゴで殺されたパレスチナ系アメリカ人の子どもの写真を飾っていたという。

この子どもは6歳の少年で、この事件で憎悪犯罪に問われた被告は今月、有罪とされた。当局は、イスラム教とパレスチナ・ガザ地区での紛争に対する憎悪が動機だったとした。

今回の事件の容疑者が、この少年の家族と直接接触していたのかは不明。

殺害されたミルグリム氏は2017年に、故郷カンザスシティーの高校でナチスのかぎ十字の落書きが見つかったあと、地元テレビ局のインタビューに在校生として応じ、「シナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)に行くのも心配なのに、学校での安全も心配しなければならない。こんなことあってはならない」と、公共の場での反ユダヤ主義への恐怖について語っていた。

被害者らが出席していた博物館でのイベントは、イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦争が続くガザ地区で苦しんでいる人々を支援するための連合体を、いかに構築するかがテーマだったとされる。

主催者の一人は、「私たちは橋を架けることを話し合っていた。それが、全員が憎しみによって頭を打ちのめされるなんて、あまりに皮肉なことだ」と述べた。

今回の事件に対しては、各国の指導者らから非難の声が出ている。

イギリスのキア・スターマー首相は、「反ユダヤ主義的攻撃」を「徹底的に」非難すると述べた。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、このテロを「凶悪な反ユダヤ主義の殺人」だとし、世界各地でイスラエルを代表する人々や施設の警備を強化すると付け加えた。

アメリカのドナルド・トランプ大統領も、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に「アメリカに憎悪と過激主義の居場所はない」と投稿し、反ユダヤ主義を非難した。

トランプ氏とネタニヤフ氏はその後、事件について電話で話し合った。発表によると、トランプ氏は悲しみを表明したという。

(英語記事 Suspect charged with murder of two Israeli embassy workers in Washington DC

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c2e3zykk2yxo


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