
ジェイムズ・ウォーターハウス特派員(ウクライナ北部)、エイミー・ウォーカー記者(ロンドン)
ロシアとウクライナは23日、2022年に始まった全面侵攻以降で、最大規模の身柄交換を行った。双方が、兵士と民間人あわせて390人を引き渡した。
今回の交換では、両国がそれぞれ270人の軍人と120人の民間人を、ベラルーシとの国境付近で引き渡した。これは、1週間前にトルコ・イスタンブールで行われた直接交渉において唯一、合意に至った取り決めに基づくもの。
両国はこの会談で、合計1000人の捕虜を交換することで合意しており、今後も交換が行われる予定だと認めている。
これまでにも小規模な捕虜交換は数十回にわたり実施されてきたが、今回のように多数の民間人が含まれる事例は他にないという。
ロシア国防省は、今回引き渡された兵士および民間人の中には、ここ数カ月の間に、ウクライナ軍によるロシア西部クルスク州の国境地域での攻勢の際に拘束された者も含まれていると明らかにした。
同省によると、対象となった人々は現在ベラルーシ国内におり、今後ロシアに移送され、医療検査および治療を受ける予定だという。
一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ソーシャルメディアで、「我々は我が国の国民を帰還させている」、「全員の姓とあらゆる詳細を逐一確認している」と述べた。
ウクライナの戦争捕虜調整本部によると、今回帰還した270人のウクライナ軍兵士は、キーウ、チェルニヒウ、スーミからドネツク、ハルキウ、ヘルソンに至る、東部および北部の各地で戦っていたという。
また、今回解放された390人のうち3人は女性で、一部の兵士は2022年から拘束されていたという。
アメリカのドナルド・トランプ大統領は、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」でこの交換を祝福し、「これは何か大きなことにつながるかもしれない???」と投稿した。
ウクライナ北部では24日、ロシアに拘束されている息子や夫が今回の交換で帰還すると期待する、兵士の家族たちが集まった。
セヴェロドネツクの戦闘で3年前に息子のイェリザルさんが捕らえられたというナタリアさんは、BBCの取材に対し、息子は必ず戻ってくると信じているが、それがいつになるかは分からないと語った。
今回の身柄交換は、2022年3月以来初めて、ウクライナとロシアの下級代表団が対面で協議したイスタンブールでの会談を経て合意されたもの。会談は2時間にとどまり、停戦に向けた進展は見られなかった。
ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は24日、すでに2回目の協議が予定されており、その際にロシア側が「覚書」をウクライナ側に提示する方針だと明らかにした。
トランプ米大統領は今週初め、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領との2時間にわたる電話会談の後、「ロシアとウクライナは即時に停戦交渉を開始し、戦争を終結させる」と主張した。
これに対しゼレンスキー大統領は、プーチン大統領は「戦争を継続するための時間稼ぎをしている」と非難している。
イタリアのジョルジャ・メローニ首相は、トランプ氏が提案した「ローマ教皇庁(ヴァチカン)による停戦交渉の仲介案」に支持を表明したが、ロシアのラヴロフ外相は「現実的な選択肢ではない」と否定的な見解を示した。
ラヴロフ氏はさらに、ゼレンスキー大統領の正統性に再び疑問を投げかけ、和平合意が署名される前にウクライナで新たな選挙が行われるべきだと主張した。
ロシアが和平合意に署名する用意があるかという質問には、「まず合意が必要だ。合意が成立すれば、その時に判断する」と述べた上で、「プーチン大統領が何度も述べているように、ゼレンスキー大統領には正統性がない」とした。
また、ロシアは合意が整った後に「ウクライナの政権内で誰に正統性があるのかを見極める」と述べ、「現在の最重要課題は、信頼性があり、長期的かつ安定的で公正な平和を実現する合意を準備することだ。我々にとっては、ロシアの安全保障上の脅威を生まないことが不可欠だ」と強調した。
(英語記事 Ukraine and Russia take part in biggest prisoner swap since 2022 invasion)