
アメリカのドナルド・トランプ大統領は25日、欧州連合(EU)との関税交渉に関する期限を7月9日まで延長することに同意した。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長がこの日、トランプ大統領と「良い電話会談を行った」と述べたことを受けたもの。
トランプ氏は先月、大半のEU製品に対して20%の関税を課すと発表したが、その後、交渉の時間を確保するために7月8日までの期間限定で10%に引き下げていた。
しかし23日には、交渉の進展が遅いことに不満を示し、関税を50%に引き上げる可能性を示唆していた。
トランプ氏は記者団に対し、フォン・デア・ライエン委員長から「迅速に会談を行い、合意に至れるかどうかを探りたい」と伝えられたと語った。また、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、「期限を延長するのは私の特権だ」と投稿した。
フォン・デア・ライエン氏はこれに先立ち、アメリカとの貿易協定締結に向けて「迅速に」動く用意があると述べた一方で、「良い合意」を得るためには7月9日までの時間が必要だと強調していた。
トランプ大統領は23日午後、ホワイトハウスで記者団に対し、EUとの協議に先立ち、6月1日までにEUからアメリカに輸出されるすべての製品に対して関税を50%に引き上げる意向を示した。交渉の進展が遅いことへのいら立ちが背景にあるとされる。
欧州委員会のマロシュ・シェフチョヴィッチ通商担当委員もこの日、アメリカとの公正な合意を目指すEUの姿勢に変わりはないと強調した。
シェフチョヴィッチ委員は、ジェイミーソン・グリア米通商代表部(USTR)代表およびハワード・ラトニック米商務長官との電話会談後、「EUは全力で取り組んでおり、双方にとって有益な合意を目指している」と述べた。
さらに、「EUとアメリカの貿易関係は他に類を見ないもので、脅しではなく相互の尊重に基づくべきだ。われわれには自らの利益を守る用意がある」と語った。
トランプ氏はこれまでも、EUとの貿易関係が「不公平」だと繰り返し批判してきた。EUはアメリカにとって最大級の貿易相手の一つであるにもかかわらず、同氏はこの関係に不満を示している。
アメリカ政府の統計によると、EUの昨年の対米輸出額は6000億ドル(約85兆円)超だったの対し、アメリカからの輸入額は3700億ドルにとどまった。
トランプ氏は特に、自動車と農産品の貿易に関して懸念を示している。現在、一部の関税が交渉のために一時停止されているものの、EU産の鉄鋼とアルミニウムに対する25%の関税は依然として継続されている。
こうした動きに対し、欧州各国の首脳は事態のエスカレーションを警戒している。フランスとドイツは外交的解決を求めており、関税は双方の経済に悪影響を及ぼすと強調している。
EUはアメリカに対する対抗措置を一時的に停止しているが、報復関税の構えは崩していない。
EUは当初、アメリカからの輸入品180億ユーロ(約2兆9000億円)相当に対して25%の関税を課す方針を示していたが、これを保留している。
さらに、アメリカからの輸入品950億ユーロ相当を対象とした追加措置についても、協議を進めている。
(英語記事 Trump extends deadline for EU trade deal until 9 July)