2025年6月22日(日)

BBC News

2025年5月26日

首都ハルツームの学校で発見された不発弾の箱を見せるスーダンの男性

オッティリー・ミッチェル記者、セシリア・マコーレイ記者

アメリカ国務省は25日、スーダン政府が昨年、準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」との内戦で化学兵器を使用したと断定し、同国に対する新しく制裁を科すと明らかにした。

タミー・ブルース報道官は声明で、6月6日以降、アメリカからスーダンへの輸出を制限するほか、同国の金融取引に対する借入限度を設けると発表した。

これに対し、スーダン政府の報道官は、「証拠の提示もない根拠のない主張」だと反論している。

スーダン軍およびRSFの双方は、これまでにも戦争犯罪の疑いが指摘されてきたが、いずれも関与を否定している。

スーダンでは2年前、国軍とRSFの間で激しい権力争いが始まり、これまでに15万人以上が死亡したとされている。最近では、スーダン軍が首都ハルツームを奪還したものの、各地で戦闘が続いている。

アメリカ政府は、どの種類の化学兵器が使用されたかについて詳細を明らかにしていない。しかし米紙ニューヨーク・タイムズは今年1月、スーダン政府が2度にわたり塩素ガスを使用したと報じた。塩素ガスは激しい痛みや深刻な健康被害を引き起こし、死に至る可能性もある。

同紙によると、使用が確認されたのは特定されていない遠隔地であり、現在のところ、化学兵器使用の証拠となる映像などの視覚的資料は公表されていない。

アメリカ政府は「スーダン政府に対し、すべての化学兵器の使用を直ちに停止し、化学兵器禁止条約(CWC)に基づく義務を順守するよう求める」と強調している。CWCは締約国に対して、保有する化学兵器の廃棄を義務付けている。

スーダン政府はこれに強く反発している。ハリド・アリ・アルエイシル文化情報相は、アメリカの対応を「政治的な脅迫だ」と非難。アメリカの「信頼性」をさらに損ない、「スーダンにおける影響力」を完全に失わせるものだと述べた。

さらに、「これは国際世論をあざむき(中略)スーダン国民への犯罪に関わる非正統な勢力に政治的な保護を与えるために作られた、虚偽の物語だ」と主張した。

文化情報相は、アメリカが過去にもスーダンに関して「虚偽の主張」を行ってきたとも非難し、1998年にアメリカがスーダンのアル・シファ製薬工場を爆撃した事件を例に挙げた。

アメリカは当時、この工場が化学兵器の製造拠点として使用されており、武装勢力アルカイダの指導者、オサマ・ビン・ラディン容疑者のネットワークと関係があると主張していたが、スーダン政府はこれを強く否定していた。

しかし爆撃後、アメリカは工場の所有者への資産凍結措置を解除しており、当時は空爆を正当化する十分な証拠がなかったことを事実上、認めたものと受け止められた。

スーダン外務省はBBCに提供した声明で、アメリカの対応に「深い驚き」を表明し、適切な外交ルートを経由せずに問題が提起されたと非難した。

また、化学兵器使用の疑惑を「根拠のないもの」と否定。制裁措置を非難した上で、スーダンはCWCに基づく義務を「完全に順守している」と述べた。

スーダン外務省はさらに、アメリカが「虚偽の主張を用いて他国の主権、安全保障、領土保全を脅かしてきた過去がある」と非難したが、具体的な証拠は示さなかった。

アメリカの非営利団体「軍備管理協会」によると、スーダンを含むほぼすべての国がCWCに加盟している。一方で、エジプト、北朝鮮、南スーダンの3カ国は未加盟であり、イスラエルは署名はしているものの批准しておらず、法的な義務を負っていないとされる。

ブルース米報道官は、「アメリカは、化学兵器の拡散に関与した者に対して責任を追及するという立場を堅持している」と述べた。

スーダンとUAEの関係

アメリカがスーダンに制裁を科すのは今回が初めてではない。今年1月には、紛争に関与する両勢力の指導者に対して制裁が発動されている。

アメリカ政府は、スーダン軍のアブドゥル・ファタハ・ブルハン将軍について、「スーダンの不安定化を招き、民主的移行の目標を損なっている」と非難した。これに対し、スーダン外務省は「奇妙で憂慮すべき対応だ」と反発している。

一方、RSFを率いるモハメド・ハムダン・ダガロ司令官(別名「ヘメティ」)については、アントニー・ブリンケン前米国務長官が「国内での集団虐殺(ジェノサイド)に関与した」と断定した。RSF側はこの指摘を否定している。

スーダンでは過去2年間にわたり、両勢力が権力をめぐって争いを続けており、これまでに約1200万人が避難を余儀なくされ、2500万人が食料支援を必要としている。これは、ロンドンの人口の2倍以上に相当する。

AFP通信によると、これまでに科された制裁措置の影響から、追加制裁はスーダンにほとんど効果を持たないとみられている。

今回のアメリカの対応は、アラブ首長国連邦(UAE)の紛争関与疑惑をめぐる緊張の中で行われた。スーダンとUAEは今月初めまで外交関係を維持していたものの、スーダン政府が、UAEがRSFに武器を供与していると主張したことから関係が悪化した。UAEはこの疑惑を否定している。

一方、米連邦議会では、ドナルド・トランプ大統領が先週、UAEを訪れ歓待されたことに関連し、野党・民主党議員らがUAEへの武器売却を阻止しようとする動きを強めている。その一因として、UAEのスーダン紛争への関与が挙げられている。

ロイター通信によると、スーダンの外交筋は「今回の制裁は、米議会でのUAE批判から目をそらすためのものだ」と述べたという。

スーダンは国際司法裁判所(ICJ)に対し、UAEがジェノサイド行為に加担したとして提訴しているものの、ICJは5日、UAEに対するこの訴えはICJの管轄外だとして退けた。

追加取材:アン・ソイ記者、ピーター・ムワイ記者(BBCヴェリファイ)

英語記事(US says Sudan used chemical weapons in war as it issues new sanctions

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/czr8pk06gllo


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