2025年6月22日(日)

BBC News

2025年6月2日

ウィトコフ米特使(左)とイランのアラグチ外相

米ホワイトハウスは5月31日、イランの核開発に関する提案書を送ったことを認めた。 イランのアッバス・アラグチ外相は同日、イランの首都テヘランを訪れたオマーンのバドル・アルブサイディ外相から「アメリカとの合意の一部」を提示されたとソーシャルメディアに投稿した。

ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は同日、スティーヴ・ウィトコフ大統領中東特使が「詳細かつ受け入れ可能な」提案をイランに送ったと述べ、合意受け入れがイランの「利に最もかなう」ことだと指摘。「イランが核爆弾を入手することは決してあり得ないと、(ドナルド・)トランプ大統領は明確に述べている」と付け加えた。

アラグチ外相は、アメリカの提案について「イラン国民の原則、国益、権利に沿って適切に対応する」とソーシャルメディア「X」に書いた。

提案の詳細はまだ明らかになっていない。

これに先立ち、イランが60%の高濃縮ウランを400キロ以上保有しているという国際原子力機関(IAEA)の報告書の内容が明らかになった。原子力発電や研究など民生用に必要な濃縮度をはるかに超えるもので、兵器級に必要な90%に近い。BBCが閲覧したこの報告書でIAEAは、イランの濃縮ウランの総貯蔵量は、3カ月前から50%近く増えていると推定している。

この濃縮度のウランをさらに濃縮すれば、核弾頭10発が作れる可能性がある。核兵器を持たない国でこの濃度のウランを生産している国は、イランだけということになる。

イラン政府はかねて、自国の原子力開発は平和利用が目的だと主張している。ただしIAEAは、イランが上級査察官の受け入れを拒否し、原子力開発に関する質問にも回答しないことから、現状が平和利用の範囲かどうか確認できないと指摘した。

IAEAによると、イランは過去3カ月の間、1カ月で核兵器1発に相当する高濃縮ウランを製造している。

IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は、「高濃縮ウランの製造が顕著に増加し、蓄積しているのは(中略)深刻に懸念される」と述べた。

この報告書を受けて、イランによる核不拡散義務違反を認めるよう、米英仏独がIAEA理事会に働きかける可能性がある。

一方、イランの国営メディアは同日、IAEA報告書は「根拠のない非難」が含まれる「政治的動機に基づく」ものだと報じた。

イランはこれまで、IAEA理事会が自国に何らかの措置をとろうとするなら、「適切な措置を講じる」と述べている。

アメリカはかねて、イランの核能力を制限しようと取り組んできた。両国間の協議はオマーン政府の仲介のもと、4月から行われている。

両政府は協議において前向きな姿勢を示してきたものの、イランのウラン濃縮活動など主要課題について合意が得られていないという。

トランプ大統領は、イランと米中仏露独英が2015年に署名した核合意「 包括的共同行動計画(JCPOA)」から2018年に離脱。現在は、イランとの新しい核協定を求めている。

JCPOAは、イランの原子力計画が核爆弾開発に利用されているという疑念から2010年にイランに科せられた制裁を解除する代わりに、イランの原子力開発を制限し監視するための仕組みだった。 しかし、トランプ大統領は第1次政権で、JCPOAは恒久的なものではなく、イランの弾道ミサイル計画などに対応していないため「悪い合意」だと主張し、合意から離脱した。

トランプ政権はその後、新しい拡大合意の交渉をイランに強いる「最大限の圧力」作戦の一環として、制裁を再発動。 イランはそれ以来、核兵器の開発を難しくするためのJCPOAの内容を、着実に逸脱してきた。

トランプ大統領は以前、外交交渉で合意が得られない場合はイランの核関連施設を爆撃すると警告していた。

(英語記事 US sends nuclear deal proposal to Iran / Iran significantly growing uranium stockpile, warns UN nuclear agency)

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cr4z55r17yzo


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