2025年6月22日(日)

BBC News

2025年6月2日

カロル・ナブロツキ氏

アダム・イーストン・ワルシャワ特派員

ポーランドで1日に投開票が行われた大統領選で、右派の歴史学者カロル・ナヴロツキ氏が選出された。選挙管理委員会(PKW)が2日、全票の集計結果として発表した。

ナヴロツキ氏は得票率50.89%を獲得し、ワルシャワ市長でリベラル派のラファウ・チャスコフスキ氏(49.11%)を僅差で上回った。

この結果は、現地時間1日午後9時に発表された最初の出口調査結果を覆すものとなった。当初の発表では、チャスコフスキ氏が50.3%、ナヴロツキ氏が49.7%とされていた。

チャスコフスキ氏は出口調査の結果を受けて勝利を宣言し、「勝利した。ただし『紙一重』という言葉は、今後ポーランド語と政治に永遠に刻まれるだろう」と支持者に語話していた。妻のマウゴジャタ氏は冗談交じりに「心臓発作を起こしそうだった」と述べていた。

一方、ナヴロツキ氏は当初の出口調査結果の後、「今夜、希望を失ってはならない。我々は今夜のうちに勝利する。差はごくわずかだ。明日の朝には『カロル・ナヴロツキ大統領』として目覚めると信じている」と話していた。

ナヴロツキ氏は、ドナルド・トゥスク首相が進める親欧州連合(EU)路線の政策に対し、大統領として拒否権を行使すると予想される。

今回の選挙結果は、1年半前に政権を失った保守派政党「法と正義(PiS)」の支持層を再び活気づける可能性がある。ナヴロツキ氏の勝利は、2027年の議会選挙でトゥスク政権を打倒できるとの期待をPiSに与えている。

ナヴロツキ氏は、キリスト教カトリック教会の教え基づく伝統的な家族観を重視し、EU内におけるポーランドの主権を強く支持している。

また、ウクライナへの支援継続には賛成しているが、ロシアの侵攻が続く中で、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)およびEU加盟には慎重な姿勢を示している。

ポーランド大統領の職務は主に儀礼的なもので、外交や国防に対する影響力は限定的なものの、法案に対する拒否権を持つ。親EU派のトゥスク政権は、大統領の拒否権を議会で覆すのに必要な議席数を確保していない。

現職で保守のアンジェイ・ドゥダ大統領は、トゥスク首相が掲げた主要な公約の実現を阻んできた。これには、司法への政治介入の排除や、厳格な人工妊娠中絶法の緩和などが含まれる。

今回の大統領選は、ドゥダ氏の任期満了に伴い行われた。ドゥダ氏はすでに2期を務めており、出馬は認められていなかったが、ナヴロツキ氏の勝利を祝福した。

「困難で、時に痛みを伴う戦いだったが、ポーランドのため、祖国のあり方をめぐる極めて勇敢な戦いだった。選挙戦の最後の瞬間まで戦い抜いたその勇気に感謝する」と、ドゥダ氏は述べた。

トランプ米大統領と写真も

大統領選の両候補はいずれも、隣国ウクライナへの支援継続を支持しているが、EUに対する姿勢では大きく異なっている。

過去に同国の欧州問題担当相を務めたチャスコフスキ氏は、トゥスク首相と同様、ポーランドが欧州の主流に乗り、ドイツやフランスとの強固な関係を通じてEU内で影響力を発揮することを目指していた。

一方のナヴロツキ氏は、主権を重視する強いポーランドを掲げ、EUにさらに権限を移譲することに反対している。また、EUの気候変動政策や移民政策にも批判的な立場を取っている。

ナヴロツキ氏は、野党「法と正義(PiS)」が「非公式候補」として擁立するまで、、国内ではほとんど無名の存在だった。

熱心なアマチュア・ボクサーで、サッカー選手でもあるナヴロツキ氏は、自身がトレーニングする様子をソーシャルメディアに頻繁に投稿している。PiSは同氏を庶民の味方として、国家の利益を守る強い候補として打ち出した。

また、ナヴロツキ氏はアメリカのドナルド・トランプ大統領を支持しており、選挙活動中に米ワシントンを訪問。ホワイトハウスの大統領執務室で、トランプ氏と短時間面会し、親指を立てたツーショット写真を撮影していた。

(英語記事 Conservative historian wins Polish presidential vote

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c5y6rjnqe9go


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