
ロシアとウクライナによる、和平に向けた今年2回目の直接協議が2日、トルコ・イスタンブールで開かれた。大きな進展は見られず、さらなる捕虜の交換で合意しただけで終了した。
ウクライナの交渉団によると、同国と欧米が求めていた「無条件の停戦」の呼びかけをロシアが再び拒否した。ただ、双方は兵士1万2000人の遺体返還を約束したという。
ロシア側は、広大な前線の「特定地域」での2~3日間の停戦を提案したと述べたが、詳しくは明らかにしなかった。
協議は1時間ほどで終了した。両国は、重傷もしくは病気の捕虜全員と、25歳未満の捕虜の交換で合意した。
ロシアの交渉団を率いるウラジミール・メディンスキー大統領補佐官は協議終了後、ウクライナ兵6000人の遺体を来週、ウクライナに引き渡すとに記者団に説明。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領もその後、ロシア兵6000人の遺体を返還すると述べた。時期は明言しなかった。
ロシアの全面侵攻で始まった戦争の終わらせ方をめぐっては、双方で主張の隔たりが大きい。そのため、今回の協議も開始前から期待感は低かった。
ウクライナの交渉団を率いるルステム・ウメロフ国防相は協議後、「殺りくを今すぐ終わらせる」ために、陸海空で少なくとも30日間の「完全かつ無条件の停戦」を同国が主張していると記者団に話した。
また、ウクライナは「数日前」に停戦案をロシアに渡したが、ロシアは協議の場で初めて自分たちの案を出したのだと述べた。
両国の停戦案は公表されていない。
ロシア国営メディアは協議終了後、同国案の重要点だとする事項について報じた。それによると、ロシアは一部を占領しているウクライナ南東部4州からウクライナ軍が撤退することと、同軍の動員解除という、これまでと同じ要求をしている。
ロシアはさらに、ウクライナのドネツク、ルハンスク、ヘルソン、ザポリッジャの各州と、併合したクリミア地方を、ロシア領として国際社会が承認することを求めている。
その他にも、ウクライナの軍事同盟への加盟禁止、ウクライナ軍の規模の制限、ロシア語の公用語化、ロシアに対する国際制裁の解除――などを停戦の条件に挙げている。
大統領同士の協議は見通し立たず
ウクライナの交渉団はこの日、ロシアに連れ去られたとする数百人の子どもたちのリストをロシア側に手渡した。
そして、今月末までにロシアからの応答を期待していると述べるとともに、ウクライナのゼレンスキー大統領とロシアのウラジミール・プーチン大統領の直接協議に向けた準備の必要性を強調した。
ただ、両首脳による直接協議が実現する兆しは、今のところうかがえない。
ロシアは無条件の停戦を拒否し、「恒久的な平和」を主張。ウクライナに対しては、同国や同国の支援国が実質的な降伏だと評する厳しい要求を、繰り返し突き付けている。
ゼレンスキー氏は2日、リトアニアの首都ヴィリニュスで開かれた首脳会議に出席。「戦争を終わらせることについて、ロシアから意味のあるシグナルは出ていない。私たちが防衛を強化するのは重要だ」と述べた。また、制裁を通じてロシアへの圧力を強めるよう求めた。
ロシアによるウクライナ侵攻の直後の2022年3月にあった両国の協議以来となる直接協議は、5月16日にイスタンブールで1回目が開かれた。双方は戦争終結の方法について意見の相違を埋められず、それぞれが捕虜を1000人ずつ交換することで合意しただけに終わった。
ゼレンスキー氏と欧州支援国の首脳らは、ロシアがウクライナの領土をさらに奪取しようと、意味ある交渉を意図的に遅らせていると繰り返し非難している。
早期終結を求めるアメリカのドナルド・トランプ大統領は、これまではロシアへの制裁強化を先延ばしにしてきた。だが、ロシアが先月、ドローン(無人機)とミサイルによる大規模なウクライナ攻撃を実施したのを受け、トランプ氏は珍しくプーチン氏を「全く狂ってしまった」と非難した。
これに対してクレムリン(ロシア大統領府)は、トランプ氏に「感情の過負荷」がうかがえるとコメントした。
(英語記事 Russia and Ukraine fail again to agree ceasefire but commit to prisoner swap)