2025年6月22日(日)

BBC News

2025年6月3日

物資配給所の近くで殺された人の葬儀で悲しむ女性たち(3日、ガザ地区南部ラファ)

トム・ベネット、BBCニュース(エルサレム)

パレスチナ・ガザ地区の現地当局によると、南部ラファで3日早朝、援助物資配給センターに集まったパレスチナ人の住民に対しイスラエル軍が発砲し、少なくとも27人が殺害されたという。ラファでは1日にも、物資配給センターでイスラエル軍が発砲し、少なくとも31人が殺害されたと、イスラム組織ハマスが運営するガザ地区の民間防衛隊は主張している。イスラエル国防軍(IDF)は1日にIDFが民間人に発砲した事実はないと主張している。

ハマス運営の民間防衛隊は3日、援助物資配給センターから約1キロ離れたアル・アラム交差点で、IDFの戦車やクアッドコプター(ドローン)、ヘリコプターが民間人に向かって発砲したと主張した。マフムード・バサル報道官が述べた。

これに対してIDFは、配給センターへ行くための「指定されたアクセス・ルートから外れて」IDF兵へ接近しようとした複数の容疑者を兵が特定し、発砲したと発表した。

イスラエルはこれまで、1日の同様の事案について、IDF兵がパレスチナ人を銃撃した事実はないと否定していた。ハマス運営のガザ保健省は、1日の事案で31人が殺害され、200人近くが負傷したと主張している。

ガザ南部ハンユニスにあるナセル病院のアテフ・アル・フート院長は、3日朝に死者24人と負傷者37人が搬送されてきたと話した。いずれも銃創を負っていたという。院長は、イスラエル軍が「ラファ西部で援助物資を待っていた大勢の民間人」に向かってイスラエル軍が発砲したと話した。

現地で働く外国人医療関係者はBBCに対して、現地時間午前3時48分(日本時間午前9時48分)以来、「とんでもない流血沙汰」が展開し、医療施設は死傷者であふれていると話した。

IDFは声明で、「ガザの民間人が人道援助物資の配給地点にたどり着くのを(自軍兵が)妨げている」事実はないと述べた。

IDFはさらに、 「警告射撃は人道援助物資の配給場所から約半キロ離れた場所で、兵士らに脅威を与えるようなやり方で兵士らに向かって進んだ数名の容疑者に向けて行われた」と述べた。

イスラエルは、BBCを含む外国報道機関のガザ立ち入りを許可していない。このため、同地区内で何が起こっているかの確認が困難になっている。

ガザ地区における援助物資の配給は最近、イスラエルとアメリカが支援する「ガザ人道財団(GHF)」が引き継いだ。同財団は援助配給において、国連機関やその他の援助組織の代わりになろうとしている。

3日の事態についてGHFは、「当団体の施設において本日、救援物資の配布は安全に、そして何事もなく実施された。ただし、複数の民間人が指定された安全回廊を離れて、閉鎖された軍事区域に侵入した際に、負傷したのかどうかを、IDFが調査していると、我々も承知している。これは、当団体の安全な配布場所および稼働区域から遠く離れた場所だった」と声明で述べた。

フォルカー・トゥルク国連人権高等弁務官は、「3日連続して援助物資配給拠点の周りで、大勢が殺された」と声明で批判。「パレスチナ人は最悪の選択を迫られている。飢えて死ぬか、さもなければイスラエルによる軍事化された人道援助の仕組みを通じて提供されるわずかばかりの食べ物を手に入れようとして、殺されるリスクを選ぶかだ」と述べた。

国連や複数の人道支援団体など国際社会の大多数は、 GHFが援助を「武器化」し、人道原則に反していると厳しく批判している。

GHFの仕組みでは、民間人はイスラエル軍の支配地域にある配給センターまで出向く必要があり、そこには警備を請け負うアメリカの武装民間業者が配置されている。

パレスチナの人たちは援助物資を受け取るため、拠点まで長距離を歩くしかなく、さらに最大20キロもの箱を持って歩かなくてはならない。

国連が運営していた以前の配給の仕組みでは、ガザ地区内400カ所に設けられた拠点で、各地の住民に直接、物資を届けていた。さらに、人口台帳にもとづき物資を配り、全員に食べ物が行き届くようにしていた。

それに対してGHFの仕組みは、早い者勝ちのように見えており、住民は列の前方に位置を確保しようと夜通し行列するはめになっている。そして、数時間後にセンターが開くと大勢が物資をめがけて先を急ぐ事態になっている。

1日と2日にも配給拠点の周りで

赤十字国際委員会(ICRC)は1日の事態について、ラファの赤十字病院に「死傷者が大勢搬送され」、そのうち21人が「到着時に死亡が確認された」と発表している。

これについてIDFは、初期調査の結果、配給センターの付近やセンター内にいる人々に向かってIDFは発砲していないことが判明したと主張。GHFも、現場で負傷者や死傷者が出たという主張を否定し、それはハマスが広めたものだとしている。

1日の事態に関するIDFとGHFのこうした主張は、現場を目撃した数十人の民間人やNGO関係者、医療関係者の証言と真っ向から異なる。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は1日の事態について2日、「昨日、ガザで援助を求めていたパレスチナ人が殺害され、負傷したとの報告に、私はがく然としている」、「これらの事案に関する即時かつ独立した調査を実施し、加害者に責任を負わせるよう求める」と声明で述べた。

2日にもラファ市タル・アル・スルタン地区にあるGHF施設付近で、パレスチナ人3人が殺害されたと、ハマス運営のガザ保健省と地元メディアが報告している。

ICRCの報道官はAP通信に対し、ラファの野戦病院に負傷者50人が搬送されたと語った。大半は銃創や破片による負傷者で、2人は到着時に死亡が確認されたという。一方でハンユニスにあるナセル病院は、3人の遺体が運び込まれたと明らかにした。

IDFは声明で、施設から約1キロ離れた場所にいた部隊に、「複数の容疑者が近づいてきたため、警告射撃を行った」と説明した。

トゥルク国連人権高等弁務官は2日、BBCに対し、現行の人道支援の方法は「容認できない」もので「非人道的」だと述べていた。

「民間人をまったく見下していると思う。3カ月近くも食料や医薬品を求めて必死だった人たちが、それを手に入れるには走る必要があるとか、最悪の状況で手にする必要があるなどと言われている。生きるために必死の人たちの人間性を、ひどく奪っている」とトゥルク氏は批判した。

ハマスが2023年10月7日にイスラエルに越境攻撃を行い、約1200人を殺害、251人を人質として連れ去ったことを受け、イスラエルは、ガザ地区で軍事作戦を開始した。

ハマスが運営するガザ保健省によると、イスラエルが作戦を開始して以降、ガザで少なくとも5万4470人が殺された。そのうち4201人は、イスラエルが3月18日に攻勢を再開して以降に死亡したという。

(英語記事 At least 27 Palestinians killed by Israeli fire while waiting for aid, Gaza authorities say

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cp92v2vdg5po


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