2025年6月22日(日)

BBC News

2025年6月4日

アメリカのドナルド・トランプ大統領は3日、鉄鋼とアルミニウムの輸入関税を従来の25%から50%に倍増する大統領令に署名した。

自動車から缶詰食品に至るまで幅広い製品に使用される金属の輸入税の引き上げは、3月に続いて2度目となる。

新しい関税は4日に発効する予定で、トランプ大統領は、「アメリカの鉄鋼産業の将来を守るため」だと説明している。

一方で、この保護措置がアメリカ国外の鉄鋼メーカーに深刻な打撃を与え、貿易相手国からの報復を招く可能性があるとの批判や、アメリカ国内の金属取り扱い業者にとっても大きな負担になるという指摘も出ている。

関税引き上げが発表される数時間前まで、影響を受ける多くの企業は、この計画が本当に実行されるなどあり得ないとして、一時的な措置か、あるいは何らかの交渉戦術に過ぎないと期待していた。

トランプ大統領が措置を進める一方で、イギリスには例外措置が適用され、鉄鋼・アルミニウムへの関税は従来通り25%に据え置かれた。トランプ大統領は、この決定がアメリカとの継続的な貿易協議を反映したものだと述べた。

米メリーランド州に拠点を置くインディペンデント・カン・カンパニーの、リック・ヒューザー最高経営責任者(CEO)は、「トランプ氏の場合、これは戦術なのか、それとも長期的な計画なのか、常に疑問が残る」と語った。同社はヨーロッパから鉄鋼を輸入し、装飾されたクッキー缶やポップコーン容器などを製造している。

ヒューザー氏は、設備投資を保留しているとした上で、突然の政策変更と価格上昇により、顧客がプラスチックや紙製の箱など代替品に切り替える可能性を懸念していると述べた。

「混乱が非常に大きい」と同氏は語った。

世界第2位の鉄鋼輸入国

アメリカ政府によると、アメリカは欧州連合(EU)に次いで世界第2位の鉄鋼輸入国で、主にカナダ、ブラジル、メキシコ、韓国から輸入している。

トランプ大統領は第1次政権で、国家安全保障にとって重要とされる産業を保護する権限を大統領に与える法律を根拠として、鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課した。

しかし、アメリカが同盟国と貿易協定を結び、企業の要請に応じて一部輸入品に免除措置を適用した結果、多くの輸入品が最終的に関税の対象外となった。

トランプ大統領は保護策の弱体化に不満を示し、3月にこれらの免除措置を撤廃した。

5月30日にUSスチールの工場で行われた集会でトランプ大統領は、「アメリカ企業が国内の供給業者から購入せざるを得ないほど高い関税を課したい」と述べた。

50%の関税について、トランプ大統領は「誰もそれを回避できない。つまり、誰もあなたたちの産業を奪うことはできないということだ。25%ならその壁を越えられるが、50%ではもう越えられない」と語った。

イギリスや欧州の反応は

アメリカ鉄鋼協会によると、5月時点でアメリカの鉄鋼輸入量および粗鋼生産の水準は、トランプ大統領による関税引き上げ前の昨年と比べて大きな変化は見られなかった。

しかし、4月の鉄鋼輸入量は前月比17%減少した。アメリカに金属を販売している企業は、トランプ大統領による今回の発表が、さらに大幅な輸入減少につながると予測している。

トランプ大統領が3月に発表した関税措置を受け、カナダおよび欧州連合(EU)は、アメリカ製品に対する報復関税の準備を進めていた。

欧州委員会のオロフ・ギル報道官(経済安全保障・通商担当)は3日、BBCの取材に対し、アメリカとEUが合意に向けて集中的に協議を重ねていると明らかにした。

ギル報道官は、「我々は良い合意を目指して懸命に交渉している」と述べた上で、「アメリカが今回の新たな関税の脅しを、これまでと同様に撤回してくれることを強く望んでいるが、それはまだ不透明だ」と語った。

イギリスでは、トランプ大統領の発表を受け、進行中のアメリカとの貿易協定を早期に確定させるよう政府に求める圧力が高まっている。この協定には、3月に導入された関税からの保護措置が含まれると期待されていた。

ジョナサン・レノルズ英通商相は5月28日、パリでアメリカ通商代表部のジェイミソン・グリア代表と会談している。

通商相の事務所はその際、協議を通じてイギリスの鉄鋼が今回の追加関税から保護されたことを「喜んでいる」と述べた。

レノルズ氏は、「我々は今後も、合意を実行に移すためにアメリカと協力していく。この合意により、アメリカによる鉄鋼への25%関税は撤廃される予定だ」と語った。

イギリスの鉄鋼業界団体「UKスチール」のギャレス・ステイス事務局長はBBCに対し、3月に導入された25%の関税により、加盟企業への発注がすでにキャンセルまたは延期されていると話した。

ステイス氏は、50%の関税が導入されれば、全体の約7%に相当するアメリカ向け輸出に「壊滅的」な影響を及ぼすと警告した。

「50%の関税が導入されれば、即座に市場が閉ざされる」、「ほとんど、あるいはすべての注文が今後キャンセルされるだろう」と、ステイス氏は話した。

複数のエコノミストは、今回の追加関税により物価が上昇し、アメリカ経済にも悪影響が及ぶと指摘している。

2020年に行われた分析によると、トランプ大統領の第1期政権下で導入された関税により、鉄鋼業界では約1000人の雇用が創出された一方で、製造業や建設業など他の分野では7万5000人の雇用が失われたと推計されている。

税制政策を専門とするシンクタンク「タックス・ファウンデーション」のエリカ・ヨーク副会長(連邦税政策担当)は、今回の措置によってさらに深刻な雇用喪失が生じる可能性があると述べた。

ヨーク氏は、「鉄鋼やアルミニウムのような中間財に対する関税は、特に有害だという強力な証拠がある。こうした関税は、アメリカ国内の生産コストを引き上げるためだ」と指摘し、「この種の関税を倍増させるのは極めて愚かな判断だ」と批判した。

(英語記事 US steel and aluminium tariffs doubled to 50%

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c2kq3y5257jo


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